姫琴雪芽
姫琴雪芽、女、魔法師。
はっきり言って、私はよくわかってない。
狼牙に言わせれば、わかろうとしていないんだってことらしいけど、今にして思えば楽しい時間だったなあと、そんくらい。
父さんに拾われてから、私がただ記録するだけの法式を使えるってことを自覚した。したけど、なんのために? どうして? あるいは、どうやって? なんて疑問は、この頃に抱いた覚えはない。そのうちわかるだろうと思っていたんだけど、それが訪れるのは随分と先で、あー狼牙って苦労してたんだなあと、その時は思った。主に私に対して苦労してたはず。弟は大変だね。
ゴーストに関して? どーだろ。まあ変人かな、くらいの認識。いなくなった時は寂しかったけど。文字通り、私は幽霊みたいなものだと思ってたし。
だからずっと、父さんの店で手伝いをしてて――しばらくして、外見があんまり変わってないことに気付いて、魔法師ってそういうものかと思ったのは、今でも覚えてる。
世界の記録、その補助記録。
役目だなんて言われて、そんなもんかと飲み込んでしまうのが私だ。なんで、どうして、そう思わないのはきっと、好きでも嫌いでもないからだ。