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嵯峨公人
嵯峨公人、男、魔術師。
この頃の俺は、いわゆる成長期にあった。魔術を知り、その深みを目の当たりにするに従って、自分が刃物を創る一つの仕組みである、とすら錯覚することもあったように思う。
大きな切欠があったとするのなら、やっぱりネイムレスと出逢ったことだ。
正直に言えば、連中のことはよくわかってない。魔法師と言われても、実際に何かを俺は見たわけじゃないし、東京事変に至るまで、ネイムレスや狼牙、雪芽もそうだし、青葉も動いていたようだが、なんというか、ご苦労様と、その程度のものだ。
だから、ハジマリの五人の一人なんて言われても、実感はねえよ。
ちなみに言っておくが、青葉を拾ったことに対しての下心は一切なかった。まあ、青葉との間に子供を作ったけど、そんなのは後になってからのことだ。当時は本当に、捨て猫を拾ったような気分でしかなかった。
まあ結局、東京事変後に、俺は――双海に問われたこともあって、魔術協会に所属するが、夏に雪が降った頃、離反した。
俺にとってのネイムレス?
そうだな。
なんていうか――青臭いけど、友達だよ。