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甘い罠

こんなに憂鬱な登校は初めてだ…。こんな僕でも学校が嫌いじゃないのは一人でぼーっとしていられるからだ。なのに、こんな風にもう運命が決まってるかのように向かえば、泥に足を突っ込むかのよう不運が待っているのをわかりながら…。そう思うと足が重い。なんて憂鬱なんだ。今日は激しめの音楽を聴いてそんな気分もなくしてしまおう。


「あ!いた」

む…何かいる…。スルーしよう。

「おはよう!これ昨日言ってたCDです!聴いてくださいね!ここにいたらまた一緒に登校できるんじゃないかと思って!」

何故この人は返事をしないでヘッドホンをしている人間に対してこんなにもしつこく話しかけてくるんだろうか。

「あ、それですぐ聴いて欲しいから、CDウォークマン持ってきたんです!今の時代CDウォークマンなんて使わないかな。」

ぬぉ…。僕は自分で言うのもなんだが実際音楽は大好きだ。ジャンル関係なくなんでも。そして彼女の聞かせようとしてるCDは僕が前から気になっているバンドじゃないか!!今すぐ聞きたい。だがしかしこれは友好関係に繋がってしまう。敵だ、こいつは敵なんだ。おとりを使っておびき寄せようとしている。だめだ、ここはこのままスルーするんだ。


「はい、聞きます?」

なんでもうCDセットしているんだ!!物凄く聞きたい、死ぬほど聞きたい。ここで興味を示してしまえば相手の思うツボだ!しかし、しかし、しかし…どうする。

「あんまり興味なかった…かな?違うCDにしたほうが良かったかな」

いや、待てしまうなしまうなしまうな、いやねそれは聞きたいんですよ。興味めちゃくちゃあるんですよ、他のCD持ってこられても興味ないんですよ。あー…くそ…。

「それ、聞く」

「え?」

「そのCD聞かせて下さい」

「良かった!気に入ってるバンドだから聞いてもらえるの嬉しいな」

とうとう発言してしまった、なんて弱い、なんて欲望に弱いんだ僕は。とりあえず聞いてみよう

ああ…噂通り超絶にかっこいいじゃないか、これを毎日登校下校と聞けたらなんて幸せなんだろう。そしてこの曲と歌詞の世界観に酔いながら一人で散歩なんて出来たら素晴らしい。

「これ、貸してください」

「気に入ってくれたんですね!良かった!」

ああ、なんて欲に弱いんだろうか。弱者だ、僕は弱者だ。しかしこれを聞けるのは幸せだ。き、今日だけだ。今日だけはこいつとこのまま登校してやろう。CDの為だ。いや、でも返す時にまた話さなければならない。いや、そんなのは机の中に何も言わずに戻しておけばいいだけの話だ。こんな罠にまんまと…。致し方ない。仕方なかったんだ。許してくれ、僕の人生よ。


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