帰り討ち
結局彼女と帰ることになるが、どうにか一人になろうと、早歩きしてみるが…。彼女も早歩きになる。困った…。どうにかして彼女を引き離したいがなかなか手ごわい。
「なんで誰とも話さないんですか?」
「話したくないから」
「一度も?ずっと?」
「ずっと」
「もったいないなぁ、優しいのに」
君に何がわかるというのだろうか…優しくもないし今だって君と話しているのに飽き飽きしてる。本当は好きな音楽を聴きながら一人でフラフラ散歩しながら帰りたい。今日はいつもより遠回りの道で帰ろうと思っていたんだ。お気に入りのプレイリストを聴きながら、プレイリストが最後まで流れ終わるまで散歩して帰りたかったのに、君がいるせいでなるべく出来ないじゃないか。一番早く帰れる道で帰って早く君とおさらばしたいんだ。
「そういえばいつもヘッドホンしてるけど、何聞いてるんですか?」
「色々」
「色々かー、私ね、結構ロックとか好きなんですよ」
「へぇ」
「夏はフェスとかもいくんですよ!」
「そうですか」
「なんか返事単調ですね」
彼女は苦笑いだった。困った表情をしているが、それならはやく僕から離れたらいい。なぜこうもしつこうのだろうか。
「あ!じゃあ明日オススメのCD持ってくから貸しますよ!」
待て待て、明日も話しましょうねって事じゃないかそれは。それはごめんだ、勘弁してくれ。もうこのままではいられない。そろそろ攻撃をしなければいけないな。いつまでも貴様のペースだと思ったら大間違いだ!
「いや、いいです、僕一人でいるのが好きなんで、誰かと話してるの疲れるんです」
「そうなんですね…」
これは効いただろう、女性相手にこの言葉は冷たいかもしれないが我が人生を狂わせないよう、許せ!
「私そろそろここらへんで…」
これは一撃が効いたんだろうな、そうだろうそうだろう、これは逆転勝ちというところか、僕の勝ちだ。
「ここ私の家なんで」
なんだよ!家の前かよ!気まずいからとかじゃないのかよ!いや、まぁでもさっきの言葉は効いたはずだ。さて帰ろう。
「明日CD持っていきますね!好きな音楽共有して話すのって楽しいですよ!それじゃあ!」
そして彼女は家に入っていった。
ちょっと待て待て。いい投げか。一撃を繰り出したと思ったのに、何故そんな青春映画みたいな事を。そういうのが一番嫌なのだ!がしかしそのまま逃げられるとは…。どうしようもない、このままだと明日もきっと話しかけてくる。言い投げという卑怯な手を使うとは…。
とにかく…やっと一人になれた…。