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「ツナサンドの匂いがする…」

「ツナサンドの匂いがする…」

 午後一に受ける授業が行われる講義室で昼食のサンドイッチを広げた瞬間。いくつか離れた列に突っ伏して寝ていた(と思われる)人が、むくりと身体を起こして、こちらを振り向きざまに呟いた。

 確かにサンドイッチにはツナサンドもある。しかしツナサンド以外にも、私の大好物の玉子サンドもあるし、ミックスサンドもある。そういう詰め合わせを買ったのだから。

 少し不審に思って相手を見ていると、しばらく視線を宙に彷徨わせた後、こちらを見てにっこり笑った。名前どころか顔も知らない相手だった。同じ学科の人は人数が少ないから、顔も名前も覚えてる。午後一の講義は自由単位だから、受講する人があまり多くないから、顔くらいは覚えてる。


「ツナサンド、おいしいよねぇ」

 にっこり笑ったまま話しかけられて、少し驚いてしまった。

「あ、はい。そうですね」

 それだけ答えるので精一杯。会話が全く広がらないので、相手には前を向いて欲しいくらいだ。

 けれど彼女は私のそんな気持ちに気がつくはずもなく、まだ私を見ている。


「私は玉子サンドが一番好きです」

 無言の空間に耐えられなくなった私の口から飛び出した言葉はそんなもので。

「そうなんだ! 玉子もおいしいよね。私はツナも好きだけど、一番はカツサンドかな」

 にこにこ顔を崩すことなく、私の言葉に反応してくれた。ついでに、それまで座ってた椅子から立ち上がって、なぜか私の目の前の席に後ろ向きで着席。


「わ、私もカツサンドは二番目に好きですよ」

 なんだかわからないが、期待の込められた目で見つめられる。かかか顔が、近いよ!


「ねぇねぇ、私たち、友達にならない? なんだかあなたとは気が合いそうなの」



 ツナサンドがきっかけで、友達が一人できました。

 ちなみに彼女は、別の学部の人で、午前中は使われていないこの部屋で寝ていただけらしい。

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