およそ小説とは思えない自己顕示欲の塊。
彼は生まれてから不自由な事を知らない。
人並み外れた才能、整った容姿、無限ともいえる富、彼はおよそ凡人が欲しがる全ての物を持っていた。
だが彼は気付いている、挫折も、後悔もせず、間違いを起こさず、正義を為して、名誉な事を幾らしても周囲は当たり前のような反応を示して、当たり前のように忘れていく、自分が行っているのは赤ん坊が立って歩くのと同じ価値しか無いことに。
そそれならば逆に悪いことをしてみようと考えた、だがそれも時間がたてばあんな事があったと忘れられてしまう、それならば悪を行い続ければいい、人を殺し、金品を奪う、人とは思えぬ事をしようとそう思い付いた、そこからか彼は準備した何年も何年もかけて準備をした、時々何故こんな事をしているのだろうと考えるだが深くは考えずに準備をする。
………………それが今から何十年も前の話、今でも彼は準備をし続ける、いつか時が来たらと来るはずの無い時を待ち続けながら準備をする、彼がそれに気付くのは死んだ後の事である。