ようこそ、我がギルドへ
さて、走り出して一時間がたったのだが一向に着く気配がない…
「おい、まさかとは思うが迷子じゃないよな?」
希はびくっと体を震わせ、ロボットのように首をこっちに向けた。
「ち、ちがうわよ!ま、迷ってなんかない!さぁ、私にさっさとついてきて!」
はぁー。果たしてこいつについて行っていいものだろうか…
しかし、それしか方法がないと俺は悟り、"仕方なく"希について行くことにした。
さすがに疲れたので俺は
「おーい。ここらで休憩しないか?ずっと移動してばっかだし、なんか疲れてきたしさ」
「そ、そうね。休憩にしましょう。全くなんでこんなことになったのよ…」
「ん?なんか言ったか?後半のところ聞き取れなかったんだが」
「なんでもない、なんでもない。さぁ、結界を一応張ったから休みましょう」
希はやけにあわてた様子で近くの石に座った。
一方俺は、なんとなく寝ころびたい気分だったので、草原の上でゴロンと寝ころぶと、何やらこっちに向かってくる飛行物体が見えた。
「なんだあれは?」
起き上って例の飛行物体を見てみると、どうやら人が空を飛んでいるということが分かった。すると、突然
「ヴァイシュ様!こちらです、ヴァイシュ様~」
「おーおー、こんなところにいたのかー」
希は必死になって手を振ってアピールをし、ヴァイシュと呼ばれた少女もそれにこたえるように手を振った。
「あれ?さっき、ヴァイシュっていう名前を聞いたような…」
俺が首をかしげると、希がかんかんになって
「さっき言ったでしょ!私たちのギルド『エルドラド』のマスターヴァイシュ様よ!」
ポク・ポク・ポク・ポク・ポク・チーン
俺のなかでの瞑想タイムが終わった。
「ああー、それだ!」
俺は指をパチンと鳴らして答えた。
「お前の頭は空っぽか!」
バシン!俺は思いっきり希に頭をはたかれ、痛みのあまりのたうじまわった。そんな様子を見たヴァイシュは笑いながら
「ハハハ、お前らは仲がいいな~」
「「いいわけないだろ!」」
ヴァイシュは俺と希の言葉が被ったのを聞いてさらに笑ってしまった。俺と希は恥ずかしくなってお互い顔を赤らめながらそっぽ向いてしまった。これも面白かったのか、ヴァイシュはお腹を抱えて笑っていた。
「いい加減にしろ!」
「いい加減にしてください!」
さすがに悪いと思ったのかヴァイシュは地上に降りて
「悪かった悪かった。ところで君たちはこんなところで迷子かい?いくら待っても帰ってこないから心配して迎えにきてしまったよ」
「ま、迷子になんてなっては…」
希は図星をさされたみたいで何も反論できなくうつむいてしまった。
「まぁ、それはギルドに帰ってから聞くよ。さぁ、二人とも僕の手を握って」
・・・えっ!?
「じゃあ、しゅっぱーつ!」
「え?え?わわわわわー――――――――!!!!!」
飛行開始わずか二秒、俺は気絶した…
「うーん」
俺は思いっきり腕を植えに伸ばして伸びをし、ここはどこ?私は誰?風にきょろきょろ周りを見回してみると、どうやらここは応接室みたいだ。目の前には暖炉が置いてあり、俺は向かいに置いてあったのだろうロッキングチェアで寝ていていたようだ。ほのかに香る杉の木の匂いを感じながら、椅子から降りて窓の外の景色を見てみると、そこには崩壊した都会の姿があった。
コンコンとドアがノックされる音がされ、後ろを振り向くと、俺の様子を見に来たと思われる希が立っていた。
「あら、起きてたのね。景色を驚いたでしょ。でも、ここはましな方よ。別の都会なんて跡形ものこっていないところだってあるんだから」
「おい、一体何がここで起こったんだ?」
希は、さっきまで着ていた黒の制服から、室内着とおもわれる白のワンピースに着替えており、そのワンピースの裾をギュッと握ったまま苦しそうな顔をしていた。
「これは、魔王サタンが魔王軍という軍隊を率いて、めちゃめちゃにした結果よ…」
「そいつらは何が目的で、こんなことをしたんだよ?」
「やつらの目的はこの世界の征服。そのためにやつらはこの世界から私たち人間を滅ぼそうと侵略を繰り返しているのよ。そのせいで、私の両親は…」
重苦しい空気が立ち込めた。希は今にも泣きそうな顔をしているが、俺はなんと声をかけてやったらいいのか分からずただ立ち尽くすことしかできなかった。しかし、希は涙をぬぐい
「ごめんね、余計なことを言っちゃって」
希は涙目ながらも笑顔を作っていた。
<ちっ、そんな顔されたらこっちは困るんだっつの…>
俺は、顔が赤くなってきたことがばれないように、そっぽを向きながら
「べ、別に構わない。と、ところで何か用か?」
「え?あっ、そうだ。ウァイシュ様がお前を呼んで来いって言われたんだった。さぁ、行くよ」
「ちょ、いきなり手を引っ張んなよ!」
こっちの方がこいつらしいや
俺は内心ほくそ笑みながら彼女の後について行った。
移動の最中、俺は希からこのギルドの施設についていろいろと教えてもらった。面積は東京ドーム約1.5個分。部屋は、食堂・トレーニング室・風呂場(なんと大浴場らしい)・応接室・中庭とあとはギルドのメンバーの個室7室あるそうだ。
俺はなんでこの施設だけ壊されなかったんだ?と希に聞いてみるとどうやら特殊な結界が張ってあるらしくて、攻撃から免れたらしい。
そうこう話している間に、ヴァイシュのいる部屋に着いた。さすがギルドのマスターだけあって入口のドアには様々な複雑な模様が描かれており、高級感を漂わせている。
希がドアをノックすると、向こう側から
「入っていいぞー」
と声が聞こえたので、二人いっしょに入ると、周りには色々な資料がぶちまけられており、机にも山積みの資料が両サイドに積んであり、その間からヴァイシュが顔をのぞかせた。
「全く、一週間前にちゃんと綺麗に掃除したのにもうこの有様ですか!使う資料と、使わない資料はきっちり分けておいてくださいとあれほど言っているのに…」
「アハハハ…すまんすまん。今度ちゃんと掃除するからさ、ね?」
希はため息をついて、やれやれといったような顔をして頭を抱えた。
<いろいろとこいつは大変そうだな>
「ところで、俺に何の用ですか?」
「お~、そうだった、そうだった。こっちに座りなさい」
ヴァイシュはソファを指差した。これまた、高級感漂わせるものだったので座るのをためらったが、ドカッと遠慮もなく希が座ったので、俺も縮こまりながらも座った。
「さてさて、君をここに呼んだ理由だが…」
<ゴクリッ>
真剣なまなざしで俺はヴァイシュを見た。
「君、僕の彼氏にならないか?」
ズコッ
俺はソファからずれ落ちそうになった。しかも、隣に座っている希もである。
「ななななな、何を突然!?」
「そそそそそ、そうですよ!!なんで急にこんな話を!?」
「ジョークだよ。いやー、君たち二人のあわて具合は愉快だな。あれ?その様子だと、まさかもう関係出来ちゃった?」
にやにやしながらヴァイシュは俺と希を見てきた。視線から逃れるため目を横にずらすと、偶然にも希と目が合ってしまい、二人とも顔が赤くなった。
「だだだだだ、誰がこんな奴と!!」
「そそそそそ、そうですよ!!誰がこんな奴と付き合うんですか!!」
「ハハハハハ。本当に君たちをいじると楽しいよ~」
「「バカ言わないでください!!!」」
「ギャハハハハハ」
「で、本題は?」
俺はこの流れから抜けたくて、話をもとに戻した。ヴァイシュはコホンと一つ咳払いしてから
「君には、このギルドに入ってもらい、魔王を倒してもらう」
「は?」
思わず俺の口から間抜けな声が出た。
「もう一度言う。魔王を倒してもらいたい」
「はぁぁぁぁああああーーー????」
そろそろ期末テストなのでなかなか更新できないかもしれませんw楽しみにしてくださっている方には申し訳ございませんが、少しずつやっていますのでお待ちいただけると幸いです<(_ _)>