やまあり
そのだいちには、ふたつのこやまがあった。
いや、こやまとはいえない。ひろいひろい、どこまでもつづくしろいへいげんに、ほんのわずかにできた、ちいさなふたつのもりあがり。みちゆくたびびとのだれもきづかないが、それはそこに、たしかにあった。
ふと、ひとりのたびびとが、あしをとめる。わかいたびびとだった。たしかめるようにしゃがみこみ、そのかわったばしょをかんさつしている。
もくてきちをもたない、たびびとたちのめは、うつろだ。だがそのわかもののめはまだ、すこしのひかりがのこされているようだった。
わかものは、にもつをおろした。そうして、ちかくのつちをりょうてですくいとると、ふたつのもりあがりのうえに、のせはじめた。
つぎのつちをすくい、のせる。それを、わかものは、くりかえした。
なぜだかわからない。だが、そうしなければいけないような。そんなきが、していた。
たくさんのたびびとたちがとおりすぎる。だれも、わかものにめをむけない。
だが、わかものはきにすることなく。ゆっくりと。しっかりと。
そこにつちを、そそぎつづけた。
いつまでも。いつまでも、そそぎつづけた。
(おしまい)