ふたつのこやま
そのだいちには、ふたつのこやまがあった。
なだらかなしろいへいげんに、ただふたつだけ、だいちがちいさくもりあがっている。それいがい、そこにはなにもなかった。
そのやまを、ひとりのたびびとが、おとずれた。とおくからでもみえる、ふたつのやま。それをめざして、やってきたのだ。
「ここにはほかになにもないのに、これだけがちがう。いったいどうしたことだろう」
やまのふもとで、やわらかなつちをなでながら、たびびとはふしぎがっていた。
そこに、べつのたびびとがやってきた。かれも、このやまをとおくからみつけ、ここまであるいてきたのだ。
「やあ、あなたもですか」
「ええ。このだいちには、このふたついがいに、かわったものはなにもありませんからね」
そうしてふたりでふしぎがっているうちに、ひとり、ふたりと、たびびとがやまへとあつまってきた。
「これがなにか、わかるかたはいませんか」
はじめのたびびとが、あつまったたびびとたちにそうたずねる。だがみんな、くびをよこにふったり、かしげたりするばかりだった。
「だが、ちいさくても、これがあってよかった。これがなければ、われわれは、じぶんのいるばしょすら、わからなくなるところだった」
としよりのたびびとが、そういって、まわりをみわたす。どちらをむいても、いちめん、しろいしろいへいげんがひろがっている。それいがいには、なにもなかった。
「これがあったからこそ、われわれはいま、こうしていられる。そういうことですな」
「そういうことでしょう」
たびびとたちは、たがいにうなずきあった。
「だが、ちいさいですな」
にばんめのたびびとが、つぶやいた。
となりにいたひげのたびびとが、うでをくんだ。
「たしかに。もしもこのちいさなやまが、くずれてなくなってしまえば、いったいどうなるのでしょうか」
そのばにいたぜんいんが、はなしをやめた。なんにんかは、あおいかおをしている。
「そんなことになれば、なにもなくなってしまう」
あおいかおをしたひとりが、かすれたこえで、いった。
「このひろいだいちがあるじゃないか」
ひげのたびびとがそうこたえる。としよりのたびびとが、へいげんをゆびさした。
「そうだ。これがなくなれば、のこるのは、このまっしろなだいちだけだ。もくてきも、めざすばしょもない、ただただひろい、このへいげんだけだ」
このやまがあったからこそ、いま、じぶんたちがここにいる。そのことは、すべてのたびびとたちがわかっていた。
「やまを、おおきくすればいい」
はじめのたびびとが、いった。そのめは、ふたつのやまをみつめている。
「このやまを、おおきくすればいい。そうすれば、みな、このやまをめざすことができる。もしかしたら、やまのうえにのぼることだって、できるようになるかもしれない」
ぜんたびびとが、わいた。
「そうだ」
「われわれのてで、おおきくすればいいのだ」
「おおきくなれば、すこしばかりけずれても、なんとかなる」
「それに、ここにあつまるたびびとだって、もっともっとふえるかもしれないぞ」
「そうだ、それがいい」
「いろんなプレイだって、できるようになる」
「ちいさいのはステータスでも、バッドステータスだからな」
「だいはしょうをかねる」
「おっきいことは、いいことだ」
「おおむね、よろしいとおもう」
たびびとたちが、うなずきあった。
「だが、どうやって、おおきくするのだ」
こやまをあおいで、ふとったたびびとがきく。みな、しずかになった。そこまでは、だれもかんがえていなかった。
「まわりのつちを、あつめる。それしかない」
はじめのたびびとが、ちからづよく、こえをはっする。
こやまのかたほうにちかづくと、そのばにしゃがみ、りょうてでつちを、ほりかえしはじめた。
「きっとたいへんなことだろう。じかんもかかるだろう。だが、おおきくしたいとおもったら」
みんなにせなかをむけたまま、たびびとはかたる。
「それしかない。すこしずつでも、つちをたし、おおきくする。それしかないんだ」
たびびとたちが、ひとり、またひとりとやまにちかづき、しゃがみこんだ。
そうして、やまのしゅういをほりかえし、すこしずつ、すこしずつ。やまにつちをかけはじめた。




