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2月の中旬。
毎朝早い時間からやって来る緋依が今日はいつもより遅い時間にやって来た。
『緋依おっはよー。どうしたの今日遅いじゃん。』
私は笑顔で挨拶をした。
『んーおはよう。』
緋依も挨拶を返してきた。
なんかいつもより元気がない様な気がする。
『どうしたー?元気ないよー。』
明るい調子で言った。
なんか嫌な予感がする。
『あのさ‥‥』
緋依が言う。
『なーに?』
『あのさオレ転校することになった。』
『えっ‥‥』
一瞬緋依が何を言ったのか分からなかった。
《転校》その言葉が頭の中に響く。
『なっ、なんでいきなり‥‥そんな‥‥。』
私はまだそれを受け止められない。
『なんかさ、親がいきなり海外の方に転勤することになって、んで母さんもついて行くって言っててオレもついて行くことになって、だから。』
緋依は辛そうに答えた。
『なんでもっと前に言ってくれなかったの?』
私は泣きそうなのをこらえて聞く。
『オレだっていきなり、今朝言われたんだよ。』
緋依は言う。
『‥‥つき‥‥』
私は呟く。
『えっ‥‥』
緋依にははっきり聞こえなかったようだ。
私は怒り・想いをぶつけるようにはきだした。
『緋依の嘘つき!ずっと‥‥毎日ここに来るって言ったじゃない。なんで転校なんかするのよ!私緋依のこと好きだったのに。』
そう言った瞬間私の実体の無い体は緋依に引き寄せられた。
『オレも、オレだって弥代が好きだ。本当は転校なんかしたくない。』
そして私は泣いた。
涙なんかでないのに。
数分間泣いているとだいぶ落ち着いてきた。
『うっ‥‥ひっくっ』
『落ち着いたか?』
『うん。』
私は緋依の腕の中でうなずいた。
『オレだって弥代と離れたくねーよ。』
『うん。』
『けどしょうがないんだよ。』
『うん。』
『約束破ってゴメン。』
『うん。』
私は何度も緋依の言葉に頷いた。
『ねぇ。』
『ん?』
『いつ出発なの?』
私は聞いた。
『3日後‥‥。』
緋依が言う。
『すぐだね。』
私は苦笑した。
『うん。』
緋依も苦笑する。
『オレさ、絶対弥代のこと忘れないから。』
緋依は言った。
『うん。』
忘れない、私はその言葉を聞いてホットした。
それに答えたように私の体が光りだし薄くなった。
『えっ‥‥』
緋依はびっくりしたようにこちらをみた。
『どうしたんだ?』
『分かんないけど私成仏できるみたい。』
私は緋依に笑って言った。
『えっ‥‥だって何だよいきなり、オレは弥代が居なくなったらどうすれば良いんだよ。』
『さっき言ってたように私のこと忘れないで‥‥』
『それだけ‥‥?』
『うん。』
私は笑顔を浮かべた。
『それじゃあバイバイ。』
緋依に別れを告げる。
『あっ‥‥』
私はこの世から消えた。
『っておい。あんな感動的な消えかたしてなんでまだいんだよ。』
緋依が言う。
『あははは。なんか知らないけど気付いたら緋依の隣に居たってゆーかなんと言うか。』
私はいきなり消えた3日後の夜またいきなり現れた。
なんか知らないけどまた緋依の隣に居れてラッキーみたいな。
私はこれからも緋依の側で終わらない恋をし続ける。




