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黒の幻想、白き刃  作者: 腐れ紳士
第一章 ~召喚篇~
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その4 修行開始

「んあ? 武術を教えろ?」


 エリーの教育が始まって早一週間。いつものようにしごきの午前を終え、兵士が使用する食堂で飯を食べている。午後はエリーは公務があるとかで、ぶっちゃけ暇だ。

 なのでまあ、目の前にいた兵士隊長のグスタフさん32歳男性に話しかけてみたのである。で、その返事がこれ。


「はい、私は、いつか城を出ます。旅をするつもりです。だから学びたいのです」


 我ながら、直訳したかのような言葉になってるのは理解できる。片言もいいところだろう。だが、一週間で片言でも話せるようになったのはむしろ褒めてほしいところだ。

 グスタフ隊長も、俺が異世界人であることを知っている。だからしゃべる速度を落として、聞きやすく話してくれた。


「なるほどな。まあ、折角の異世界からの客人だし、他の兵士に混じっての訓練でいいならかまわねえが……甘く見てると、死ぬぞ?」


 本気だった。本気で甘く見て参加する程度なら殺す、と。何よりも目が語っていた。


 グスタフ隊長の名前は、会話の練習を兼ねて兵士たちと話していたときに聞いたのだ。曰く、傭兵上がりで武術の腕は確か。貴族に敬意を払わない性格のため兵士隊長などと言う地位についているが、貴族に取り入ることができたなら騎士団長にもなれたかもしれない実力者らしい。

 剣を取っては天下無敵、槍を取っては生涯不敗。無手になっても剛力無双。そんな人物の「本気」。ぶっちゃけもらしそうなくらい怖い。

 だけどまあ、ここでそうですかと引くわけには行かない。こっちもこの先の人生がかかってるのだ。何せ街を一歩出れば魔物に何時遭遇するかわからないデンジャラスファンタジーなのだ。身を守るくらいはできないといけない。


「甘く見ません。がんばります」

「……いいだろう。飯を食ったら訓練場に行くぞ」





 ◆ ◇ ◆




 甘く見てました。

 本気で死ぬ。やばい。助けて。


「おら! 立ちやがれ! その程度で根を上げて敵から生き延びれると思ってるのか! 3つ数えるうちに起き上がれ! できなきゃ止めをさすぞ! 3! 2!」

「起きます!」


 あわてて起き上がって剣を構える。

 足元はフラフラである。つーか、剣って重いのな。飛鳥の家に日本刀があったし、剣道もやってたので、刀の使い方は多少わかるのだが、西洋の剣って初めてなのだ。

 おかげで調子が狂う。いや、グスタフ隊長が鬼教官なだけなんだろうけど。


「よし。じゃあもう一本行くぞ! 死ぬ気で耐えろ!」

「はい!」


 さ、また死んでくるか。




 ◆ ◇ ◆




「よし、今日はここまでだ」

「ありがとう……ございました……」


 ばたり。山岸啓太は死んだ。~fin.~


 いやいやいや! まだ生きてるから! 本気で死ぬかと思ったけど!


「しかしあれだな。お前器用だな」

「そうでしょうか?」

「ああ。初日に剣、槍、馬。色々やらせたけど、そこそこついてこれるんだものなあ」

「ありがとうございます」

「だがまあ、才能はないな。多分どれもいい線は行くが、そこ止まりだ。お前の場合、武器を大量に持ち歩いて状況や相手で切り替えるほうがうまく機能するかもしれないな」


 そうなのか。つうか大量に武器持ち歩くってすごい重そうなんですが。


「まあ、体は鍛えてあるし、ばねも悪くない。ガタイもいいからちゃんと鍛えれば十分いけるだろうがな。なんにせよ先の話だ」


 ふむ。手を変え品を変え、か。そこまで武器を用意できれば、だな。




 ◆ ◇ ◆




 余談だが、飛鳥の奴は数日前に王家に代々伝わる光の勇者の剣とやらを正式に継承したそうだ。

 銘はエクスカリバー。ちなみに岩に突き刺さってた。どう見てもアーサー王伝説です本当にありがとうございました。

 この剣は、光の起源属性を持つものだけが抜けるらしいのだが、それだけでは抜ける盗人とかが現れるかもしれないと言うことで、封印の魔術がかかっているとか。

 その魔術は宮廷魔術師長にのみ代々伝えられる特別な魔術で、国王の出す正式な命令書によってのみ使用が許可される。さらにその魔術は神に使える純潔の巫女の血を数的触媒とするのだとか。

 ちなみに今回の巫女さんは飛鳥を召喚したエリーのお姉さんであるジャスティンさん。二十歳のぼんきゅぼんなお姉さんで、ぶっちゃけすごい好み。でも彼女は飛鳥に一目ぼれしたらしく、かいがいしく世話を焼いている。

 くそう! これは涙じゃない、心の汗なんだ!




 ◆ ◇ ◆




Side:飛鳥


 最初の王様との謁見から2日後。僕は再び王様の前にいた。ただ、今いるのは謁見室ではなく、お城の中庭だ。


「それではこれより! かのもの、飛鳥・藤咲守を光の勇者と認め、ここに王家に代々伝わる神具・エクスカリバーの授与を行う! 皆は知ってると思うが、エクスカリバーは歴代の勇者の手に渡り、魔王を倒してきた由緒ある聖なる剣だ! 皆の者、新たなる勇者に祝福を!」


 わああああああ、と割れるような大歓声。正直くすぐったい。まだ何もしてないのにな。


「では巫女・ジャスティンよ、エクスカリバーに祝福の血を」


 王様の声に応え、ジャスティンはナイフで自らの手首を浅く切り、そこから流れる血が剣を濡らす。

 ところで、僕は日本刀を扱う剣術は習っているが、このエクスカリバーはどう見ても刀ではなく剣だ。これから習うのだろうか? あんまり器用なタイプじゃないので、慣れないものをうまく使いこなせる自身がない。

 ジャスティンが血を流したのにあわせ、宮廷魔術師長であると言うお爺さんが呪文を唱え始める。呪文は数分続き、唱えきった途端エクスカリバーが閃光を放った。


「これにて、エクスカリバーの封印はとかれた! さあ、勇者・飛鳥よ! 剣を取り、受け継ぐがいい!」


 ようやく僕の出番だ。しかし、光属性だとか言われても、別になんか光の魔術を使えるわけでもない。これで抜こうとしたら抜けなかった、とかになったらいい笑いものだなあ……。

 そんなことを思いながら剣の柄に手をかけ、ゆっくりと引き抜く。

 ごごご、と言う鈍い音がして、思ったよりも簡単に抜けてゆく。周囲から、おお、と言うどよめきが広がった。……あんまりすごいことをしてるって実感ないよな、苦労してないし。


 エクスカリバーは、いともあっさり抜けた。そして、抜けたとたんに再び閃光を放つ。

 まぶしさに眩んだ目が見えるようになったとき、そこにはまるで、僕の手の形に合わせて作ったかのように手に吸い付く柄と、神秘的で美しい、荘厳な細工のされた鍔、そして、僕が最も振り回しやすい長さの、日本刀の刃(・・・・・)があった。


「……あれ?」


 呆然とする僕に、美しい女性が答えてくれた。


『エクスカリバーは勇者の剣。勇者が最も使いやすい形に、引き抜かれたときに変形する機能を持っています』


 なるほど、それはありがたい。これで僕の習った剣術が使える。

 あれ? この人誰?

 答えてくれた女性は、腰まで届く白銀の髪と水色の瞳を持ち、痩せていながらも出るべきところは極めてよく出た理想的なスタイルを、胸と腰を覆うだけの金属鎧で隠している。いわゆるビキニアーマーと言う奴だ。顔にはサークレットをつけ、背中には純白の翼。……翼?


『あなたが今代の主ですね? 私の名はブリュンヒルド。エクスカリバーに憑きし戦天使(ヴァルキリー)です。……そうですね、エクスカリバーをあなたが使いこなすためのナビゲーター、忠実なる下僕(しもべ)、とお考えください』

「まあ、よくわからないけどよろしくね。でも、自分のことを下僕なんていっちゃ駄目だよ。女の子なんだから」


 ……なんか、驚いた顔をして真っ赤になった。なんでだろう?

 取り合えず、こうして僕はエクスカリバーと出逢ったのだった。

 累計PV2000越え、累計ユニークアクセス450越えしました。まだ初めて5日目、掲載5話目にもかかわらず、ありがとうございます。これからもごひいきにしてください。


●カテゴリ:(ソード)

 西洋剣などに代表される、分厚く重い剣。両刃で真っ直ぐなものが多い。

 この世界では、兵士や傭兵が使う刀剣類としては最も一般的。

 切れ味はあまり高くなく、重さで叩き切るようにして使う。極端な話をすると、剣が物を切れるのは、「思いっきり叩いたら食い込んだ」という状態。

 逆に言えば、多少乱暴に扱っても武器として機能するため、時によっては盾としても使える。


●カテゴリ:(ブレイド)

 日本刀のように、薄く切れ味の高い剣。叩きつけるのではなく、押し当てて、引くことで生じる摩擦熱で切断する。

 攻撃力は極めて高いのだが、うまく当てなければ切れるどころか曲がったり折れたりする。刃がわずかに欠けても切れ味が格段に落ちるため、手入れも大変。

 熟練者になれば鉄の鎧ごと切断することも可能といわれるが、そんなことをすれば刃がつぶれてしまうため、普通やらない。

 ソードとは違い、ブレイドはわずかな刃こぼれが命取りになるため、武器を盾にすることが出来ない。



 本日の設定コーナーは剣と刀の違い。作者なりに調べた結論ではありますが、実際のリアルは違うかもしれません。ただ、この作品では上記の設定であるとさせていただきます。

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