第5話 初勤務 前編
星が良く見える時間帯。
成咲と義浄は部屋で試験結果を開こうとしていた。
「いいのか悪いのか、試験の中断により採用者はなしか……」
「仕方ないと言えば仕方ないな。私の会社で同じ事が起こったら、人を雇う所じゃないからな」
実技試験中の本物のテロリストによる襲撃で三万人いた試験者は半分……役一万五千人が亡くなった。
テロリスト達は義浄と成咲のおかげで全滅したが、死体全てに爆弾が付けられており証拠品の回収や人物解明が出来なかった。
それだけなら、まだ良いのだが実技試験の会場は学園からハズレにある小さな小島の上にあった。
島の至る所で爆発が起きたことにより島が完全に沈んでしまった。
その時に五千人が亡くなった。
つまり、あの一日……竜宮学園の採用試験一日で役二万人が亡くなった。
「試験者の半分が亡くなったんだから仕方ない___ん?」
ふたりでこれからの事に頭を悩ませていると、義浄の元に一本の連絡が入る。
〈もしもし、どちら様ですか?〉
〈お電話失礼します。私、竜宮学園の採用担当の者ですがメールの方は確認されましたか?〉
〈はい、採用者無しと言うタイトルのメールですよね〉
〈そうですね。ですが、そちらのメールは全体に一斉に送信した物になりまして、次に送られたメールはまだご確認されてないですか?〉
〈次に送られてきたメールですね……少々お待ちください〉
義浄は電話をミュートにして、急いでメールを確認する。
「これか……」
一言呟いた義浄は電話のミュートは解除し話を始めた。
〈今、メールを確認しましたが、この内容はどういう事でしょうか〉
〈ご確認ありがとうございます。そちらのメールの内容はですね、内容の通り今回の件は大変悲惨なことです……が、その中でも二人の試験者を合格させようと話し合いで決まりまして〉
〈話が見えてきませんね〉
〈失礼しました。あの襲撃の件で多大なる功績を残した二人の試験者、試験番号 二万八千番と二万八千一番の………久田 義浄様と成咲 透琉様を合格とさせていただきます〉
電話を終えた義浄が成咲の元へ戻ってくる。
「どんな内容だったんだ?」
「合格だってさ」
「そうか………………ん? 合格? 誰がだ?」
「俺達は特例で合格なんだってさ」
義浄は電話の内容をそのまま成咲に伝えた。
最初こそ、疑っていた成咲は話を聞いているうちに徐々に納得していった。
「なるほどな、でもあんだけ好き勝手暴れて採用にするとはどう言う事なんだ」
「どうやら、判断力、危機察知能力、反射神経、体術……等々が合格の理由だってさ。
それと、筆記試験の点数が満点…パフォーマンスも満点だとさ」
「なんかよく分からん学校だな」
「それに関しては同感だ」
ふたりはとりあえずの関門を突破し安堵していたが、次なる疑問がやってきた。
「……さて、あの襲撃者は一体なんだったんだろうな」
「そうだな、俺の方は色々調べてもらおうとしたが、本部と連絡がつかなくて何も分からない」
「そうか、こっちは一応美咲に連絡して調べてもらってるが部下達のミスの処理に追われているからかまだ連絡は返ってきてない」
「……そいえば、襲撃の話を盗み聞きしてたんだろ? その時何か言って無かったのか?」
襲撃者達は確実に竜宮を潰すと発言していたがそれ以外の事は何も分からない。
「黒ずくめ……特殊迷彩……水に触れても問題なく作動する銃…相手は相当な手練だろうな」
「あぁ、しかも話を聞けば圧倒的なバックがある組織らしいぞ」
命令に従う限り自分達の安全は保証されている。
命のやり取りが起こる場でこんな発言が出るなんて相当強大な力を持つに違いない。
「なるほどねぇ……はぁ、めんどくさい事押し付けられたなぁ」
「気の毒だな……あっ、それと今夜、あの階段の下に行くぞ」
「わかった」
あの階段の下……廊下の壁に隠された扉の先にあったネオンが輝く階段の下。
昨夜一度偵察に向かっただけで何も分かっていない。
行動時間はディナーの後からスタッフによるモーニングコールが掛かってくるまでの、八時間。
ふたりは明日の初勤務は寝ずに向かう事になるが、承知の上で探索しに行く。
「そうだ、お前の会いたかったあいつが届いてるぞ」
「俺が会いたかったやつ?」
成咲は零一号室内の大きな絵画を剥がしそこから、恐ろしい程美しい輝きを放つ"刀"が姿を表した。
「___ッ! 願星刀! なんでここに」
「……いや、ちゃんと届くように説明はしてただろうが」
「あっ……でも、願星刀は特殊科の奥に閉まってあったはずなんだか」
「…………まぁ、まぁそんな事は良いじゃないか」
「いやいやいやいや……良くない良くない、絶対に何かしたよな? その反応」
成咲は義浄の言葉は聞こえないふりをして刀を手渡す。
もちろん手袋はちゃんと着用して渡した。
「ほらよ」
「あっ、サンキュ……ん? どうやって持った?」
「ん? パワードグローブ」
「あ〜、納得」
願星刀は義浄にしか扱う事はできない。
義浄が手にした時は重量が七十キロに達し、義浄が手に取るとそれはそれは軽くなる。
「ったく、こいつを運ぶのだいぶ苦労したんだぞ?」
「まぁ普通は重くて持てた物じゃないからな」
「隕石から作られた刀……実に欲しかったが、扱えないなら意味がなから」
そんな話をしていると、部屋のインターホンが押された。
「ん? …………義浄、良かったな。試し斬りにはちょうど良さそうだ」
「そうだな」
成咲はインターホンのモニターを確認する。
〈どうかしましたか?〉
〈お食事の準備が出来ましたので、配膳に参りました〉
優しそうな声がインターホンから鳴った。
〈わかりました、今開けますね〉
その声を聞くと扉の外にいるスタッフ達は一斉に扉の端に移動しだした。
〈ちゃんと学習しているようですね〉
成咲は最後に煽るように言い残しその場に伏せた。
「一回で沈める……」




