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やば×2位  作者: ビードロくん。


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第2話 竜宮城騒動 前編

月明かりが港を包む。

一切の澱みなく、光り輝く星々の下で今ただならぬ空気が漂っていた。


車のエンジン音が消え、音を立てながら港の際まで歩いてくる男の姿が見える。


「時間通り到着したか。まぁ想定より遅かったがな」


歩いている男の視線の先には車に寄りかかる男の姿があった。


「突然の呼び出しに応じただけ、マシだと思って欲しいがな」


二つの影が並ぶ。


「…それで、話ってのは一体なんなんだ?」


海を眺めながら尋ねる男。


「まぁまぁ、そんなに焦るな義浄。今うちの奴がまとめて話してくれる」


「お前が話すわけじゃいんだな。というかひとりで来る手筈のはずだ」


「そこは、許せ。連れてきたのは美咲だ。美咲なら問題ないだろ?」


「美咲さんか……それなら問題ない」


義浄と成咲はふたりで海を正面に一定の距離間を保ちながら横に並ぶ。


「遅れて申し訳ございません」


車からタブレットを抱えた美咲が降りてきて謝罪をする。


「構わない。話してくれ」


「……問題ないです」


美咲はふたりの言葉を聞き、ふたりの間に立ち話をはじめる。


内容はさっきの電話の内容や要件を全て話した。



「……なるほどな。それにしても、情報が盛れるなんて爪が甘いんじゃないか?」


義浄は成咲の方に体を向け話す。


「だが、お前がその条件を飲み込むしか方法が無いのも事実なようだな」


「あぁ、今後を考えると断る事は最前とは言えない」


成咲も義浄の方を向き、ふたりは向き合う。


「どうする?」


「どうするとは?」


「分かっているんだろ? 君も私も協力するしか無いことを」


「……どうだろうな。お前に協力しなくても俺には後輩がいるからな、相棒を探す事は簡単だ」


「実力、規模、裏、歴……それらを踏まえても同じ事が言えるのか? というかもう答えは決まってるんだろ?」


「…長い付き合いだと、立場関係なく考えが分かってくるのか」


「それか、人を見る力が優れてるのかもしれん」


成咲と義浄はお互いの認識、立場、答えが分かっているかのように話を進める。


「……はぁ、明後日だ。明後日、竜宮に向かうお前はどうする?」


「明後日か……美咲」


名前を呼ばれ美咲はすぐに明後日の予定を調べる。


「……明後日の予定は特に入っていませんが、一週間後に警察に対する実習実験が入っています」


美咲の言葉に動揺の欠片も見せない義浄は、成咲を睨みながら本音がこぼれる。


「またか、飽きないのかよ」


「飽きる飽きないでやってないんだよ。それに、私は戦について一切の関与はしてない…部下の独断の判断だ」


「なら、しっかり躾ておけ」


義浄は腕を組んで思考を巡らせた。


「潜入捜査ってのに…なら一週間後のその実験? の日に一度こちらに戻ってこよう。お前はともかく、俺が顔を出さないのは違和感しかない」


スマホのカレンダーを開き予定に書き込む義浄。


「そうだな。だが今回は私も顔をだそう」


「何故だ?」


成咲の気まぐれとも取れる発言に疑問を抱く義浄。


「ん? そんなに深く考えるな。俺が顔を出せば想定よりも早く切り上げる事ができるだろ? 時間はいくらあっても良いんだからな」


「……そういう事なら納得だ。なら、明後日は竜宮内部に朝七時には集合するようしろ。合流場所は………竜宮駅にしよう」


義浄は竜宮城内部のマップを確認しながら、一つずつ指示を出していく。


「わかった、ならそれまでに竜宮用の身分を作っておく必要があるな」


「そうだな……ってそんなものが必要なのか?」


「忘れたか? 竜宮に足を運ぶことが出来るのは一般人と政府公認の警官達だけ、俺の代表としての顔も意味無いって事だ」


「そんなルールがあったのか、それならこの話が俺に回ってくるのも納得だな」


義浄はこの国で唯一国に認められている警察官である。だから、こそある程度好き勝手やったとしても問題ないのだ。

でないと、一週間後に行われる成咲のギャングとの戦争で、犯人を一人も捕らえずに逃がすなど出来る訳がない。


「公認さんは、違うな」


「バカにしてるのか? それに、誰のせいだと思ってるんだ?」


「俺の事を追い続けて来るのが悪いだろ」


「お前が悪さをしなければ済む話なんだが?」


「それは、無理な話だろ。私にはこれしかないからな」


義浄と成咲のふたりの様子を見ながら美咲はタブレットを触りながら、偽造用のデータを入力している。


「さて、義浄。私は明日、竜宮内に武器を密輸する予定なんだが……止めるか?」


「…………止めるかよ。世界一平和な都市に武器

持ち込むのは見過ごせないが、必ず武器は必要になる」


「そうか、それならこちらも気長できる。ただ……一つ不安な事がある」


「あぁ、そうだな」


義浄と成咲は何かを感じ取ったようで、武器を一斉に取り出す。


次の瞬間、コンクリートの地面に金属が落ちる音が響く。


突然の出来事で美咲はタブレットを落としそうになる。


義浄の手には郡上色に輝く刀身の刀が、成咲の手には白銀に光を放つ銃がそれぞれ握られていた。



「…………鈍っては無いようだな」


「それは、こっちのセリフだ。俺よりも現場に出てないはずだろ?」


「現場に出なくとも最強であり続けないと奴らに文句を言われるからな」


どうやら、ふたりはお互いの今の実力に不安があったらしく軽い牽制を行なったようだ。

お互いが相手を自分よりも下の実力なのではと不安を感じていた。


「……とりあえず、そのかっこいい刀を収めてくれないか? 美咲が怖がってるだろ」


「なら、先にそいつを下げてくれないか? そいつにも怖がってるだろ」


「私と美咲の信頼関係を舐めているのか?」


義浄はグチグチ言いながらも刀身を鞘に収めた。

その行動を確認した成咲も武器をしまった。


「先に、収めるとは随分信頼してくれてるようだ」


「信頼じゃない、俺死ねば困るのはお前の方だ。だから先に収めてよいと判断したまでだ」


「素直じゃないんだな、いいぞ。そういうの好きだぞ」


「………今度は首ごと落とすぞ」


「血の気が多いようだな。怖い怖い」


義浄と成咲の会話を聞きながら、美咲はふたりの関係性を微笑みながら眺めていた。


「おふたりって犬猿の仲に見えて、意外と仲良いですよね」


「「なんだと? こんな奴と仲がいいはずが無いだろ!」」


ふたりは声を揃えて美咲の言葉に反論する。


「美咲、言っていい事と悪い事があるぞ?」


「そうですよ、俺は今でこいつの頭を切り落としたくてうずうずしてるんですから」


「なんだ? 言ってくれるじゃないか、だったお前のどっちが先に首落とせるかやるか?」


ふたりの啀み合う姿を眺めながら、やはり笑みが零れてしまう。

ふたりはどこか楽しそうに見える。


美咲は、きっとお互いそういう友達的な存在が欲しいんだなと直感的に理解した。


「おふたりとも! 喧嘩はまた後にしましょう。今は今後のことを考える事を優先しましょう」


手を叩き、美咲が場をまとめる。

ふたりは仕方ないかという表情を浮かべるが、次の瞬間ハッとしたような顔で美咲に言い放った。


「「元はと言えば!」」


「美咲のせいでこうなってんだろ!」

「美咲さんが原因なんですけど!」


再度声を揃えて仲良く言い返す二人であった。



この出来事から二日後。


晴天の中、多くの観光客が闊歩している間を心地よい風が通り抜ける。

そんなに良い天気の中、一つ不穏なオーラを漂わせている一人の男の姿があった。


「………………あの野郎。警官が診査で突っかかるってどういう事だよ、普通俺だろ。」


普段なら横に美咲がいるはずだが、潜入捜査という事で義浄が合流するまでの間ひとりでいるしかない成咲。

慣れてない状況にどうやって暇を、時間を潰せば良いのか困りながら遅刻している"相棒"の事を待ち続ける。


成咲が到着してから三十分の時間が過ぎた。


「……遅すぎるだろうが!」


百八十度振り返って改札から歩いてくる義浄に向かってらしくない声量と話し方をする成咲。


「仕方ないだろ、上のやつらが話を通してなかったからパスを持ってきてなかったんだよ」


「そんなの、警察手帳なりなんなりで何とかなるだろう?」


「いや、警察手帳は複製自体は簡単だから信用ならんって突っぱねられたんだよ」


警察手帳を成咲に手渡し、素材や質感を確かめさせる。


「確かに、一見複雑そうに見えても作りは簡単……素材の複製もシンプルな技術で可能…その人の言ってる事は間違いじゃないな。なら、どうやって説得したんだ?」


警察手帳という身分を証明する上での最大の武器が通用しないならどうやって通過したのか気になるところだ。


「電話だよ、形上の上司に連絡して話をつけてもら……いたかったがそれも通用しなかった」


「なに?通用しなかった?」


「そう、どうやら声の変声は簡単だからこれも信用ならんって言うもんだからビデオにもしたが、加工は簡単だからって、何やっても話を聞きやしないんだよ」


成咲もさすがに仕方ない事情があった事を理解しつつ警官に同情してしまう程だった。


「だから、天皇直接連絡して説得してもらったんだよ。そしたら流石に相手も通さざる得なかったみたいだな」


天皇に直接連絡したと言うパワーワードを初めて聞いたが、成咲は気にする事はしなかった。


「なるほどな、そりゃ長くなる訳だ。なら、仕方ないか……ってだとしても連絡一本寄越せたはずだろ」


「……………………忘れてた」


義浄の一言により静寂が訪れた。

周りの観光客の声や風切り音、鳥の鳴き声……環境音だけが辺りに響いた。


成咲も呆気にとられてしまっていた。


「……とりあえず、宿屋に移動しよう。手配してくれてるんだろ?」


「あぁ、警察の権利フル活用で用意した特別な宿だ」


「ほぉ、それは気になるな。よし、そういう事なら早く向かおう」


成咲と義浄は横並びに歩き出し、普通の一般客を装って進んでいく。


「……そんなに良い宿取ってるなら、それを確認させれば早く済んだんじゃないか?」


成咲の言葉に何も言えなくなる義浄。



しばらく、歩いていると途中で義浄が歩みを止めた。


「……ん? どうした?」


「いや、疲れたからタクシーでも拾おうかと思ってな」


義浄はアプリを開いてタクシーを呼ぶ。


「だったら、最初から呼んどいてくれよ」


「仕方ないだろ、まさか引っかかるなんて思わないじゃないか。それに、そっちの方こそタクシーを呼ぶ時間はあったよな」


「それは、確かにそうだがな。いつ来るか分からない人間を待ちながらタクシーも一緒に動きを止めるのは可哀想だろ」


「……その答えが出るのになんで、ギャングなんてやってんだよ」


「ギャングの前に一会社の代表だ、忘れるな? あとタクシーってこんな遅いのか?」


義浄がタクシーを読んでから五分程度が経過した。普段ならもっと掛かったりもする為特には気にしないが、ほぼ同じタイミングてタクシーを呼び出していた、他の観光客達はもう到着し出発し始めていた。


「他の人たちは、もう居ないんだけど?」


「いや、たまたまだと思うけが……あっ」


「やったな? まさかちゃんと呼べてない、なんてオチじゃないよな?」


成咲は先に義浄の逃げ場塞ごうとする。


「……そのまさかだ。手配じゃなくて確認のボタンを押して終わってた」


成咲はこの先を思いやられながら頭を抱えている。

成咲は今日ほど自分でタクシーを呼べたらと思った日はない。

竜宮城に入るために成咲が偽造したのは、身分証明書だけ、携帯の情報は一切手を加えてない。


竜宮内のタクシーを呼ぶ為には、身分とアプリ内、スマホの情報の統一性を確認し無ければならない為、成咲はタクシーを呼ぶことが出来ないのだ。


タクシー呼べてない事件から三分後、今度はちゃんと呼べていたようでタクシーがやってきた。

義浄を先に乗せて、その後に成咲は乗り込んだ。


目的地を伝えて車が走り出す。


「……義浄…お前って、実はポンコツだったりするか?」


「…認めたくないが、今のままだとポンコツになってしまうな」

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