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時の加護者のアカネの気苦労Ⅰ~時の狭間の白い手  作者: こんぎつね
第3章 天秤の砂 sable d'équilibre
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第54話 勇気の言葉

私は「時の加護者」アカネ。アリアの町での剣豪ゼロとの勝負は圧倒的な力の差でアコウが勝利した。残念なのはその雄姿を私は見れなかったこと。しかし、一難去って、また一難。町が何かに取り囲まれた!?

—アリアの町 外—


グギャー!! ガガガ!


ギギー! ギャギャッグガガー!


思い出すのもおぞましいフェルナンの処刑場。あの巨大熊とも巨大鳥とも区別のつかない猛獣トリュテスクロー。そいつが今、再びアコウの前で雄叫び、木の壁を震わせる。


「こりゃ、まいったね.. 20はいるな」


さらにはライオン並みの大型肉食獣も草むらに潜んでいる。だが、やらなければ町が、ラヴィエが殺られてしまう。


「もう少し俺に付き合ってくれ、アリアの剣よ」


そういうと地を震わせながらアコウは凄まじく剣を振るった。猛獣トリュテスクローは断末魔さえもあげられず叩き切られていく。その固い鎧のような背中の鱗もアリアの剣の前には布のごとく切られていく。


だが、次々と猪突猛進する猛獣トリュテスクローは、ついにアコウを剣ごとはじき飛ばした。


『ぶっ.. 』とアコウの口から血が吐かれる。


その様子をマジムとラヴィエ、または町の人々は壁の隙間から見ていた。


「マジム! 私行きます。あなたが止めても無駄です」


「ダ、ダメです。アコウ共々殺されてしまいます」


猛獣の迫力に怯えてしまったマジムが力弱く引き留める。


「何を言っているのです、マジム。アコウが殺されれば否応なくあの猛獣はこんな木壁などなぎ倒して、町になだれ込んでくるのですよ。どの道同じことでしょ」


「  .. 」


「誰か! おらぬか! フェルナン国王女ラヴィエについてあの猛獣を討伐するものは!私は.. 私は大切な人を守るために闘います! 」


[  ..   ]


町の誰もが普通の人々だ。あの恐ろしい猛獣に恐怖してあたりまえ—


「お、俺は行く! 女房、子供を守るのが俺の役目だ」


「あんた? 」


「悪いな。でも王女様自ら行くんだ。俺もお前たちを守るために闘う」


それは30代半ばの腕の細い男だった。


「 ..俺も行く(20代の男性)」


「私も(30代の女性)」


「わしもいくぞい! どうせ生い先短いんだ(70代のおじいさん)」


次々とラヴィエの勇気に声を上げていく。


「私も行こう! ラヴィエ!! 」


声を上げたのはフェルナン国王ジインだった。


「王様だ! ならわしらも行かなきゃな、みんな! 」


[  オオーッ!!  ]


町の人々が一斉に声をあげた!


その声はもはや猛獣トリュテスクローの声よりも大きく鳴り響いた。


太鼓の音と共に外門が開く。


血を流し闘うアコウの隙をついて肉食獣が襲い掛かろうとする時、その猛獣めがけ、鋤や鍬が振り下ろされた。そして猛獣の腹にとどめの槍が突き刺さる。


「 ..みんな ..マジムさん」


「遅くなったな。みんなラヴィエ様の声に闘うため出て来たんだ! ほら、あそこで王女様が闘っている」


「そうか.. なら、俺もまだ頑張れるな」


アコウの剣がラヴィエを襲おうとしていた肉食獣をたたき切る。


「ラヴィエ様、ありがとう」


「アコウ。私はあなたと共に闘いますわ」


闘いなれない人々のフォローは、王直属護衛部隊ゾルネブルが大きな力となった。


だが、あと2匹いる猛獣トリュテスクローが人々を傷つけていく。


ジイン王を庇い、すでに2人の護衛兵が死んだ。アコウは死力を尽くすが、人々の被害が大きくなっていく。


一匹の猛獣トリュテスクローがラヴィエ目掛け突進してくる。それを剣で切り裂くがその巨体にはじき飛ばされる。


「残り1匹を倒せば何とかなるな.. 」


だがそこに今まで誰も見た事もない魔獣が、地面から土煙を上げながら這い出て来た。その魔獣はまるでモグラとハクビシンを掛け合わせたような醜悪な姿をしている。


そして森からミゼが姿を現した。

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