第41話 耳っ娘シャーレ登場
私は「時の加護者」アカネ。
私たちは新たな依り代に移った「運命の加護者」シャーレを迎えに行くべく、「シュの山」へ向かった。「シュの山」は獄鳥パルコが巣をつくるかなり厄介な場所だった。お肌にもかなり悪そうだ..
—シュの山—
「さぁ、さっさと登りますよ。上でシャーレ様が待っています」
クローズがみんなを急かしたてるように言った。
普通の女子高生なら、こんな絶壁を観た瞬間に『ムリ! 』のひと言で終了だろう。しかし私はもうそんな場所にはいない。
ガシガシと登っていくシエラ、クローズと同じペースで登ることを余儀なくされている。これってかなりの無理ゲーに投げ込まれたのでは?いや、いや、考えない!
上り詰めるとそこにはすり鉢状に削られた頂上がでてきた。大きさ的には25mプール2つ分くらいの大きさがあり、一番底には巣床があった。
「パルコの巣は木の枝などだと発火してしまうんですよ。その為、耐火性のある自分の羽毛を千切って敷き詰めヒナの床としているんです。この羽毛はかなりの希少価値があるんですよ」
ここから見たところ何も居ないようだ。
「あっちに行ってみよう。パルコは保存庫を作っているはずだから」
繁殖期になるとヒナの為の保存食として、自分の鳴き声の熱により捕まえた獣を燻製状態にして保存するのだ。たしかにもうひとつすり鉢状のエサ場があった。いくつかの獣の骨が散乱している。
遠くからパルコの鳴き声が近づいてきた。
「アカネ様、いったん、隠れましょう」
「なんか面倒だ。もう終焉の運命を与えてしまおうか.. 」とクローズが口走る。
「お前は相変わらず飽きっぽいな。そんなことしたらパルコの血によって、この辺は灼熱の砂漠になってしまうぞ」
そうだ、それは数千年前の冷鳥フロワで立証済みなのだ。昔にアカネとシエラがぶっ倒したフロワの血により王国フェルナンの土地は寒冷地となってしまったからだ。
岩陰に隠れ様子を見ると、獄鳥パルコが何かを大きな手からエサ場に投げ入れ、また飛び立っていった。近くに寄ってみると5人のオレブランが折り重なって倒れていた。かわいそうに全員死んでしまっているようだ。
その子供達の亡骸を見ているとあまりにも不憫で自然と涙があふれてきた。
「イテテテテ。おのれ、乱暴に投げおって、タンコブができたではないか! 」
ひとり銀髪のオレブランがムクリと上体を起こした。ブワっと涙を浮かべながらクローズが駆け寄る。
「シャーレさまーっ」
「いたたた。そんなに強く抱きしめるでない。子供の体は力が弱いのだ」
それでも抱き着いて離れないクローズに困り顔ながらもシャーレは喜んでいる。
「おーいっ、アカネ、シエラ、迎えにきてくれて助かった。礼を言うぞ」
—もともと「運命の加護者」シャーレ様は齢30前後で転移を繰り返してきた。自分の容姿と力をいつも最高のものとしていたかったからだ。だが、先代「時の加護者」アカネ様が異世界から姿を消したために、世界に充実していた「時」「運命」「秩序」という3主の力が弱まり、シャーレ様は長い歳月転移を行うことができなかった—クローズ談
「首を長くして待っていたんだぞ、アカネ。お前が戻って「3主の力」もほぼ満ちた。「運命を見る力」、「転移の力」とも取り戻したぞ」
「そうなんだ。でも、なぜあのタイミングで首を斬られたの?」
「ははは。そのおかげであの頑固者ジインはラヴィエを許したであろう?それにあれはあれで私自身の運命だった」
なるほど、しかし、なぜ私に迎えに来させたのだろうか?別にクローズだけでも良かったような..
「ところでな、アカネ。『時の空間』をあけてくれぬか?」
「なんで?暑いから?」
「いや、そうではない。魂の無いオレブランは依り代には最高なのだが、なにせ子供ではないか。お前の『時の空間』で1日ほど過ごせば魅力的な大人になるであろう。この幼体では力もままならないしな。お願いじゃ」
と言って私を見つめるシャーレ。
その耳と尻尾がなんて可愛いのかしら♡
「お、おい! やめ.. やめろ、アカネ! モフモフするなーっ! 」




