ホワイダニットⅢ
ホテルを出て、三人が向かったのは学校だった。
朝だったから、というのもあるが、その国の様子は教育を見ればわかるというゼノの持論に二人は従った。
「突然すみません。我々はアメリゴ通信社の記者です。この国の先進的な教育を取材したく、参りました。アポなしでの訪問で申し訳ありませんが、許可を頂けますか?」
都内にある小学校の来客用窓口で、ゼノが事務員と思しき中年の男に頭を下げる。
「……外国の方ですか。日本人ならば、処罰の対象になりますが……昨日、哲学の面接官様から、可能な限り便宜を図るようにと通達が出ております。どうぞ」
仏頂面で中年男は三人に校内に入るよう促した。
何の案内もないまま、三人は校舎の中を歩き回る。
小学校といえば、児童が元気よく校庭を走り回るというイメージを三人は持っていたが、この学校の実態はそうではないらしい。児童たちは教師と何かを話し合っているか、一人本を手にして、それを食い入るように読んでいるだけだ。誰一人として、校庭でサッカーを楽しんだり、ジャングルジムに上ったりして遊んでいる児童はいない。
「なんだ、ここは運動禁止なのかよ?」
「いや、そうではないだろう。レネゲイドくん、注意深く観察を続けるのだ」
ゼノが言うと、巨漢も無言で頷く。
三人はしばらく児童と教師の動きを観察していた。特に、異常だと思える要素は見えない。だが、重苦しい空気は三人全員が感じ取っていた。
「小学校ってこんな殺伐としてたっけか?」
レネゲイドの言葉に
「うむ、レネゲイドくんにしてはよく気付いたな」
と巨漢がガシガシとレネゲイドの頭を撫でる。
「俺はガキじゃねえよ!」
「精神年齢はお子様だろう」
ゼノのツッコミが終わるとほぼ同時にアナウンスが鳴り響いた。
「通達します。通達します。次の生徒はすぐに校長室に向かってください。三年二組浦河くん、四年三組下川さん、一年一組十津川くん」
何の感情もこもっていないアナウンスを聞いて、レネゲイドは
「校長室とやらに突っ込むぞ! ゼノ、道案内は任せたぜ!」
と駆け出した。
群を抜いた行動力が彼の武器だな、と二人は納得し、レネゲイドの後を追った。
こんばんは、星見です。
そろそろ星見作品に毎回出てくるゲス野郎が登場します。
え?もう出ている?
あれはクレイジーなだけの似非坊主です。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……