ヒーローⅠ
怯える三人にとっては、十分程度の待ち時間はとてつもなく長い時間に感じられた。これから死ぬという恐怖で縛られ、信頼していた大人から殺されると理解した絶望に打ちのめされ、彼らは動けなくなった。
巨大な絶望感は人を立ち止まらせる。
何をしても無駄だ。
何があっても駄目だ。
そんな風に人から、あらゆる力を奪う。
三人もその状態だった。
「待たせたな、ガキども」
「おいおい、遅いぞ。そこら辺の動物園から奪ってくればすぐ済むだろ?」
「いやあ、園長のジジイがさ、抵抗しやがって。面接官様の許可が出たからリンチしてたんだよ。それがまた楽しくてさあ、ついついこっちの用事忘れちゃってたってワケ」
教師たちは信じられない言葉を次々と吐き出す。
しかも笑顔で、だ。
彼らは暴力を心から楽しんでいる。
「さあて、と」
若い教師の一人が舌なめずりした。
「そろそろ処刑タイムと参りましょうか!」
高らかに死の宣告をする。
「待ちくたびれたぜえ。さあ、泣き叫べよ。助けを求めろよ。まあ、誰も来ないだろうけどなギャハハハハ!」
下卑た声で、血走った目で、笑い狂う中年の教師。
三人の中で一番年上の少女は目を瞑って、、震えた。
「誰か……助けて。誰でもいいから……」
「だから、誰も助けなんて来ないんだって。お前らはもう人間じゃないの! 面接で人間力がゼロになったから、家畜と同じなの! 散々勉強したはずだろ? バカは死ななきゃ治らないってやつ?」
若い教師が愉しそうに罵った。
「それがいるんだよなあ、正義の味方ってやつがさ」
一発の銃弾が空気を切り裂いて、若い教師の右膝を貫いた。
続けて、二発三発と銃弾が悪意に満ちた空間を撃ち抜く。
うずくまる若い教師の近くにいた教師たちの右膝を破壊した。
「正義の味方ってガラじゃないか。俺たちは悪の敵、だ」
マシンガンを構えた長髪の男がその場に飛び込んできた。それを見た三人は茫然としている。起こらないはずのことが起こった。
少女の瞳にわずかな希望の光が灯る。
「また考えなしに飛び込んだな、レネゲイドくん。後始末をする我々の身にもなりたまえ」
褐色肌で痩身の男が続いて飛び込んでくる。
そして、両手に持った剣で、拳銃を構えた教師たちを瞬く間に切り刻んだ。
「遅せえぞ、ゼノ! あれ? ドントレスはどうした?」
「ここにいるぞ、レネゲイドくん」
ドントレスと呼ばれた巨漢の男は、その外見に相応しい巨大な三叉槍を校舎に向けて力任せにぶん投げる。そして、間もなく爆発が起こった。
「背中にも気を付けるんだ、俺が来なかったら死んでたぞ」
バズーカを持った教職員がいたらしい。レネゲイドはそれを見落としていた。
「あー……悪い悪い。助かったぜ! んじゃ、おっぱじめますか!」
「助けて! 助けて! 助けて!」
少女の声が弾けた。
「おうよ、助けてやるからしばらく動くんじゃねえぞ? お兄さんたちがちゃちゃっと救い出してやるからな」
「私は博愛主義者ではないが……こんな子どもが殺される場面を見物するのは趣味じゃなくてね」
レネゲイドとゼノがそれぞれの感情を表に出したが、ドントレスは何も言わない。
「総員武装解放!」
レネゲイドのこの合図で二人は瞬時に己の役割を理解した。
「殲滅だ。一人たりとも逃がすな」
さっきまでの明るさは消える。命令を下すレネゲイドの表情は冷徹な指揮官のそれになっていた。
こんばんは、星見です。
GW中は比較的時間が……あんまりないです(苦笑)
それでも筆が走る刺激を受けたので、時間を見つけて執筆しています。
「ホスト、教師になる」はまだ下書き段階なので、こちらにはしばらく掲載しません。というか、本業が忙しすぎてできません。言い訳ですね。ヘブバンする時間を削ればできそうです。
動きが少なかった物語も少しずつ動き始めました。
レネゲイドくんが暴発して動き出したのがきっかけですが……この結末は彼らをどこへ運んでいくのでしょうか。ではまた次回お会いできることを祈りつつ……




