表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/19

7

「きゃーー! ステラ、綺麗〜!」

「あ、ありがとう」


 あれから三ヶ月が経ち、今日は私とアシュリー様の結婚式。


 控え室に来るなり、アオイが大袈裟なくらいの黄色い声で褒めてくれたので、私は照れてしまう。


「この世界でも結婚式って純白のドレスなんだね」

「アオイの世界も?」

「うん……」


 私のドレスを繁々と見つめ、遠い目をするアオイは、どこか寂しそうだ。


 生まれた国を離れ、一人、この国で生きて行くことを決めたのだ。まだ寂しさが残って当然だろう。


「ステラ、本当に似合ってる! 綺麗!」


 アオイを心配そうに見つめていると、そんな私に気付いてか、パッと顔を明るくしてアオイが言った。


「……アオイも、その聖女の正装、よく似合ってるよ」


 明るく努めようとする彼女に気付かないフリをして、私も笑顔でアオイの装いを褒めた。


「そう? これ丈が長すぎない? まあ、レトロ風で可愛いわよね!」


 淡いパステルブルーのロングワンピースに、同じ色のローブ。シンプルながらも、上品で美しい。自身の装いを見回しながら、アオイが笑う。


 いつもの彼女だ。


 最初、この聖女の正装でさえ、彼女は「可愛くない」と着るのを拒否していたらしい。私が初めて出会ったとき、未だあちらの格好をしていたのはそのためだったみたい。


 彼女もこの国で生きて行くことを決めてから、聖女の力の制御を学んでいる。随分聖女らしくなった。


 そうそう、彼女の魔法の先生は、私が務めることになった。何でも、彼女のご指名だそうで。


 あれから、私はアオイと随分仲良くなった。二人、名前で呼び合うほどに。


 アシュリー様からは、「俺のことも忘れるなよ?」と真剣な顔で言われたほど。可愛い。


 その話をアオイにすると、「ばっかじゃないの?!」と一蹴されてしまった。


 信じられないくらい、仲良くなった私たち。


 私は一息つくと、アオイを真っ直ぐに見て言った。


「ねえ、アオイ……」

「何?」

「アオイはもう本当にアシュリー様のことは良いの?」

「……相変わらず、ストレートよね」


 私の問に、アオイは目を一瞬見開くと、すぐに笑顔になった。


「ステラに言われた通り、私は恋に恋をしていただけなんだと思う。誰でも良いから誰かに愛されたくて、それが王子様なんて最高、なんて思い上がって……」

「アオイ……」

「でもね、私はこの世界に呼び出されてツイてると思ってるの! あそこに私の居場所は無かった。聖女として求めてくれるなら、必要としてくれるなら、この国で生きていきたい」


 真ん丸の黒目が強く光を宿している。


 そうキッパリと言い切った彼女は、すっかり聖女の顔だ。


「でも……」

「?」

「愛してくれる人は絶賛募集中だから、良い男、紹介しなさいよ、ステラ!」


 アオイは、バチン、と片目をつぶって、いたずらっぽく笑った。そんな彼女らしさに、私も思わず笑ってしまった。


「全力を挙げて頑張ります……」

「あー、絶対だからね!」


 はい。アオイの幸せのお手伝いも絶対にしてみせます。


 頬を膨らませるアオイに、私は心の中で手を上げて誓った。


 一段落ついた所で、コンコン、と控室のドアがノックされ、アオイが「はーい」とドアを開けてくれた。


「ステラ………綺麗だ………」


 ドアが開くなり、準備を終えたアシュリー様が、私を見つめながら部屋に入って来たのを見て、私は思わず見惚れた。


 アシュリー様の方がカッコイイです!!


「うわー。ご馳走様ですー。てか、アシュリー様も王子様みたいで素敵ですよ? あ、本物の王子様か!」

「アオイ!! 私が言おうと思っていたのに!」


 アオイに先を越されて、思わず抗議をすると、彼女はニマニマ笑いながら、ドアに向かった。


「はいはーい、邪魔者は退散しますよー。……また後でね、ステラ」

「うん」


 アオイを見送り、アシュリー様に向き直ると、彼は甘すぎるくらいの蕩ける笑顔で立っていた。


 な、何ですか、その顔!!


「彼女とは随分仲良くなったみたいだね?」

「お陰様で……」


 クスクス笑うアシュリー様は、私の近くに寄ると、私を椅子から立ち上がらせた。


「さっき、兄上と話して来たよ」

「レオノア様と?!」


 驚く私に、アシュリー様は話を続ける。その表情は穏やかだ。


「兄上は一人の女性の人生を奪ってしまう、聖女召喚には反対だった。そして、君という存在がいれば召喚なんてしなくても大丈夫だと思ったそうだよ」

「私……?」

「ステラなら魔物を一掃してしまいそうだと」


 首を傾げて目を丸くする私に、アシュリー様は可笑しそうに笑って言った。


「わ、私……っ、いつもアシュリー様のためって必死で……!」


 うう、私、そんな可愛く無いイメージなのかな。


 ちょっと泣きそうになりながらアシュリー様に弁明しようとすると、彼はふわりと優しい笑顔を向けた。


「わかっているよ、ステラ。君がいつも俺のために頑張ってくれていたこと」

「アシュリー様……」


 アシュリー様の優しい言葉に、今度は嬉しくて泣きそうだ。


「俺は、君以外を愛する気は無いって言っただろ?」


 私の頬に手をやり、甘く微笑むアシュリー様。


 私は恥ずかしさを紛らわすように、気になっていたことをアシュリー様にぶつけてみる。


「アシュリー様は、いつからそう思ってくれるようになったんですか?」


 私の好き好き攻撃をいつも静かに受け止めてくれていたアシュリー様。だから、嫌われていない、とは思っていた。


 でもアシュリー様から行動に示されることは無くて。


「いつだと思う?」


 にこり、と不敵に笑ったアシュリー様の顔が近付き、私は答える間もなく、唇を塞がれた。


 アシュリー様との久しぶりのキスは長くて、心臓が止まりそうになった。


 これから結婚式なのに!!


 長いキスからようやく解放されて、顔を真っ赤にしながらアシュリー様を見上げると、彼は、とびきり甘い表情で私を見ていた。


「!!」


 その表情を見れば、アシュリー様がどんなに私を好きでいてくれているか、わかった。


「さあ、行こうか……。ようやく、君の全てが俺の物になる」

「!ひゃう?!」


 まだ赤い私の手を取り、アシュリー様がとんでもないことを言ったので、私は思わず飛び上がった。


「これからは俺が押すから、覚悟して?」


 私の手に唇を落とし、そう囁いたアシュリー様に、私の心臓は破裂寸前。


 結局、答えははぐらかされたものの、アシュリー様が私を好き過ぎる、というのは伝わった。私がアシュリー様を好きなように。


 今までは、私が猪突猛進に彼にぶつかっていただけ。アシュリー様の甘い反撃に、私は耐えられるのかしら?!


 真っ赤な顔でアシュリー様を見つめれば、大好きな私の菫色の瞳も、柔らかく細められた。


私の拙いお話にお付き合いいただき、ありがとうございました!書きたい!と思いつき、勢いのまま書き上げたのですが、ステラとアシュリーは書いていて楽しかったです。書き溜め中の新作が終わったら、番外編とか書いてみたいーな、とぼんやり思っております。ブックマークをしておいていただけると、励みになります!

最後のお願いm(_ _)m

読了の印に、広告下の評価☆☆☆☆☆より応援をいただけますと、泣いて喜びます。よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 第二王子が婚約者に一途なところ。ブレないところは好感がもてる。 [気になる点] 一途なのは結構なのだけれど、聖女を召喚した理由が身勝手過ぎる。 聖女が元の世界にいたくないと思っていたとして…
[良い点] 面白かったです! アシュリーのハッキリ断る男っぷりと後半のデレに好感度上がりまくりでした(*´ω`*) 一途なステラもとっても可愛かったです。 アオイちゃんにも相思相愛になれる人ができて欲…
[良い点] 面白かったです。アシュリーが全くブレなかったので安心して楽しく読めました。 ステラが一途な努力家で、愛情表現がストレートで、好きな人は絶対に譲らないタイプなところがとても良かったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ