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アオイの恋⑤

「でもさ、レオノア様ってまだ独身なんでしょ?」


 マリー様との謁見が終わり、私たちは訓練室に向かっていた。


 まだ時間があるので、アオイの訓練に付き合うことになったのだ。


 アオイは自身の力をコントロール出来るようになっていて、聖女の力を発揮出来るようになっていた。


 近いうち、私と一緒に魔物討伐に行くことになる。


「元々、婚約者は立てられていなかったけど、公爵になられてからも独身を貫いているみたいね」


 レオノア様は、責任を取るかのように、生涯独身でいることを誓っている、とアシュリー様から聞いた。


「それって、私のためだよね?」

「……アオイ?」


 その話を聞いて、アオイが声を弾ませた。


 嫌な予感。


「ねえ、私がレオノア様と結婚したらダメなの?」

「アオイーーー?!」


 アオイは軽い気持ちで言ったんだと思う。


 でもでも、それは……!


「だって、本当はレオノア様が私のお相手だったんでしょ? それに、ステラの結婚式でチラッと見たけど、カッコ良かったもん! 流石、アシュリー様のお兄さん!!」


 きゃ、きゃ、と嬉しそうにアオイが盛り上がっている。


「確かに、そうなんだけど……」

「良いわけねーだろ、バカか」


 アオイに説明しようとすると、頭上から声が降ってきた。


「マシュー!」


 振り返ると、私たちの後ろにはマシューが立っていた。


 訓練室と騎士団の訓練場は近い。マシューも騎士団に行く途中なのだろう。騎士服をまとっている。


「バカって何よ、いきなり!」


 あああ……、お互いを紹介をする前に、アオイがマシューに食ってかかってしまった。


「バカだろ? 聖女のお前がレオノア様と結婚してみろ。後継者問題に発展するぞ。やっと皇太子殿下とステラの結婚問題が落ち着いたってのに」


 マシューが一気にまくし立てると、アオイは顔を赤くして、黙ってしまった。


「ちょっと、マシュー……」


 流石に言い過ぎだと、止めようとするも、彼は止まらなかった。


「まだ聖女として仕事もしてないのに、色恋のことばっか言ってんなよ」

「マシュー!!」


 マシューの厳しい言葉に、急いで遮ったけど、その言葉はアオイに届いてしまった。


 アオイは傷ついた表情で、その場から走り去ってしまった。


「アオイ!」


 急いで追いかけようとするも、その前にマシューに一言!!


「マシュー! アオイに酷いこと言わないでよ!」

「ステラ、すっかり聖女と仲良くなってんのな」

「ちょっと……!」


 マシューに抗議するも、彼は何気ない顔で話を逸してしまった。


「だって、本当のことだろ?」

「……アオイだって本気で言っているんじゃないわ」

「何だ、それ?」


 マシューにちゃんと説明したいけど、今はアオイを追いかけないと。


「アオイは自分が愛される存在じゃないと思い込んでる」

「聖女が?」


 マシューは信じられない、といった顔をしていたが、私はアオイが向かった方へ踵を返すと、走り出した。


「アオイ……!」


 訓練室に向かう階下の下で、アオイがうずくまっているのを見つける。


「何よ……色恋ばっか言って何が悪いのよ……。聖女の仕事だってまだ出来てないのわかってるわよ……」

「アオイ……」


 涙声のアオイに、私は後ろから彼女を抱きしめた。


「アオイは聖女として充分やってくれているわ」

「私だって見境なくこんなこと言ってるんじゃないもん…」

「わかってるよ、アオイ」


 アオイは生まれた国でも無いのに、真剣に力の訓練をしてくれている。この国のために。


 アオイの活躍はこれからなんだから。


「アオイだって幸せになって良いんだよ?」

「……ステラぁぁ……」


 振り向いたアオイは涙で顔がグショグショだった。


「もう、可愛い顔が台無し!」


 ハンカチを取り出し、彼女の涙を拭って笑えば、彼女も笑顔になった。


「レオノア様は、やっぱり聖女のアオイだと難しいかな……」

「うん……。悔しいけど、アイツの言ったことは理解出来た」


 落ち着いたアオイと一緒に階段に腰を下ろして、私たちは話した。


「てか、アイツ何なの?!」

「ああ、マシューはね、第一部隊の隊長でね。厳しい所もあるけど、仲間想いの良い人だよ?」

「ああ、アシュリー様がヤキモチ焼いた長身イケメンか」

「ヤキモチ………」

「はい、思い出してニヤニヤしない!」


 すっかりいつものアオイに戻って安心しつつ、気になったことを問いかける。


「マシューのことイケメンだとは思うんだ?」

「まあ、顔はね? 性格は合わなそう」


 私の疑問にアオイがサラッと答える。


 性格は合わないのかあ。


 実は、マシューなんて良いんじゃないかと私は密かに思っていたのだ。


 しかし、出会いが最悪な上に、確かにお互い合わなさそう。


「でも、アオイも第一部隊と一緒に魔物討伐に行くんだよね」


 そう。私が共にする第一部隊の隊長はマシュー。もちろん、アオイもこれから一緒に行動するのだ。


「ええええ? 嘘でしょ?! さいっ、あく!」


 私の言葉に、アオイが顔を歪めた。

ここでストックが尽きてしまったので、次の更新は金曜日になりそうですm(_ _)m

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