四、分岐点
ハヤテは走った。ここ一週間は、運動なんてしていなかったためか、体中が軋んで、悲鳴を上げている。しかも、扉を出たら、いきなり森で、足場が悪い。
それでも走った。
これを逃したら、もうチャンスは無い。
今のところ、追手はいない。
だが、あくまでも『今のところ』なのだ。折角助かりそうな命だ。無駄にはしたくない。
十分ぐらい経った頃だろうか。
施設からどれくらい離れたのか、確認しようと思い、ハヤテは後ろを向いた。
その瞬間、
ドォッカアァァァアー
施設が爆発した。
しっかりと確認したわけではないが、施設は学校の体育館を縦に三つ並べたときと、同じぐらいの大きさはあった。
それが爆発したのだ。
しばらく呆気にとられていたが、
『何があっても走り続けろよ。』
ローブの男の言葉を思い出し、再び走り続けるのだった。
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その頃、施設から見て、ハヤテのいる森とは真逆の森では……
ローブの男が、ハヤテとは別に捕らわれていた未成年の子供達を、頭に角を生やした爽やか系イケメンに引き渡していた。
「派手にやりますね。」
爽やかイケメンが爆発のした方をみて言う。
だが、ローブの男は無視して、ぶっきら棒に言う。
「んじゃ、この子らよろしく。」
「わかりました。いつもどおり、神域に連れて行きますね。」
無視したのにも関わらず、爽やかイケメンは丁寧に言う。
「お前、相変わらずイケメンだな。」
ローブの男がそう言うと、爽やかイケメンは少し照れた顔をして、子供達とともに一瞬で消えた。
ローブの男と一人の少女を残して……
「本当に一緒に行かなくてよかったのか?」
ローブの男がそう言うと、少女は何かを決意した目で頷くのだった。