一、異世界
目を覚ますと、そこは知らない場所だった。
木の目があったため、見るのに飽きることのなかった天井は、錆や血で汚れた鉄の天井へ…
昨日父が干したため、フカフカでお日様の匂いがしていた布団はなぜかアンモニアの臭い匂いのする鉄板へ…
「ここは、どこ?」
いつから自分の寝相は、
ここまでグレードアップしたのだろう。
そんな、くだらないことを考えながら、身体を起こそうとすと、
ジャラ…
「えっ…」
なぜか両手足と首の全五ヶ所が鎖で拘束されていた。
ギィィギィギィィ
そんな音の鳴った方を見ると、そこから、白衣を着た医者や科学者らしき人達が入ってきた。
「あの、これは…」
いくら寝相の悪いハヤテでも、寝ている間に自分を鎖で縛るなんて器用なことはできない。
ということは、おそらく、この白衣を着ている人達が自分を縛ったのだろう。
そう思い、どういうことなのか尋ねようとしたのだが…
一番偉そうなジジイ……ではなくおじいさんがなにか囁いたかと思うと、空中になんとアニメとか、漫画に出てくるような、魔法陣が浮き上がり、ハヤテの身体をスキャンした。
十秒ほどでスキャンは終わった。
すると、白衣の人達はなにかを書き留めたり、情報の交換をし始めた。
そこで、ハヤテは気づいた。
白衣の人達が話している言葉が、おそらく地球に存在している、どの言語とも違うことに…
白衣の人達が書いている文字も、おそらく地球は存在してないことに…
白衣の人達は紙に文字を書いているのではなく、空中に文字を書いていることに…
白衣の人達はハヤテを、地球の科学者たちが実験動物を見るときと、同じ目で見ていることに…
つまり、最悪の形で異世界にきてしまったということに…