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資金力だけでパーティを最高ランクにする②

 受付の女の子が見せた怪しげな合図に一抹の不安を覚えつつも、俺は案内されたパーティの登録窓口に向かった。正直、面倒ではあったが。とにもかくにもこれをやらないと話が進まないらしい。


「パーティ登録はここでできるんです?」


 登録窓口にいたギルド係員の若い男に訪ねてみる。


「あなたが、パーティのリーダーですか」


「リーダーか……、まぁそんなところです」


「市民証はお持ちで?」


「市民証? そんなものは……」


「リーダーの市民証がないとパーティ登録はできませんが。グランシルバか、別の大陸のどこかの街でもいいのですが、それもないんですか? どちらから来た人間かお聞かせ願いますか?」


 ギルド係員は訝しげな表情でこちらを見つめる。まずい、怪しまれているかもしれない……。


「いえ、パーティのリーダは私です。これが市民証ですので、どうぞ。彼も私もグランシルバ出身ではないんです」


「あなたがリーダですか。では、拝見しま……これは!」


 見かねたヴィオラが割って入った。そして、彼女の市民証を確認したギルド係員は目を見開いて驚いている。


「あなたは、あの『キス・オブ・ドラゴン』のヴィオラ様じゃないですか! 噂はかねがね!」


「ありがとう。でも『キス・オブ・ドラゴン』は解散したの。これからこの新パーティで心機一転やっていくのよ」


「ええ、ええ! ヴィオラ様がリーダーの新パーティですか、喜ばしい! 私の弟も大ファンで……」


 手早く準備に取り掛かる係員に、優しく微笑むヴィオラ。やはりこの国ではかなり有名な人物なようだった。


「さすがヴィオラ、有名人だな」


「そんなに騒がれるなんて困ったわね、私はグランシルバのギルドではあまり依頼を受けてこなかったのだけど……それより」


 ヴィオラは係員に手渡された書類に指を添わせて言った。


「パーティの名前はどうするのよ」


「名前かぁ、決めないといけないのか。こだわりとかある?」


「特にないわよ」


「そうだな……。ビー玉で結ばれた絆だからなぁ『ビーダマン』なんてどうだ?」


「なにそれ。色んな意味でダメなような気がする、他の候補はないの? そもそも宝石で結ばれた絆って凄い汚らしい感じで嫌よ」


「なんだかんだ文句言ってくるな……」


 パーティの名前は紆余曲折あったが、英語でビー玉を意味する『マーベル』とすることにした。何の捻りもなかったがそもそも俺自身が拘りがなかったのだから仕方がない。


 パーティ登録を済ませた俺は、先ほど案内してくれた窓口の女の子のもとに向かった。ここからの目的はただ一つ。Sクラスパーティである『グランシルバ・イージス』との交渉。そして資金力を活かしてパーティを乗っ取ることだ。


「パーティ登録を済ませてきたんで、会わせてくれませんか?」


 なるべく怪しまれないように、ぎこちない笑顔を浮かべる俺。


「ご対応ありがとうございます。では案内を差し上げますね。そちらの扉へどうぞ。そこが『グランシルバ・イージス』用のVIPルームになりますので」


 女の子は指を揃えた手で扉の方を示した。


「ありがとう」


 ヴィオラと共にその扉を開けると、中はガランとした小部屋であり、タンスのようなものはいくつかあったものの、何も入っておらず殺風景だった。


「ちょっと待て、何もないぞ……」


 振り返って口を出そうとしたその瞬間。



『ドンッ』



 背中に激しい衝撃が走った。誰が押したんだ?


 と思うのもつかの間、複数人の屈強な男から身体を縄で縛られる。


「ヴィオラ、こいつらなにか怪しいぞ!」


「ごめんなさい、油断したわ……」


 彼女に危険を伝えるも時すでに遅し。ヴィオラも簀巻きにさせられ床に転がされてしまっていた。縄からこぼれた彼女の大きな胸が目に入ったがそれどころじゃない。まずい、まずいぞ。彼女が封じられたら何もできない……。


「魔法は使えないのか?」


「さっきから発動しようとしているんだけど、なにか強力な力で邪魔されているみたいっ!」


「くっ、なんなんだ……。そうだ、アノは? どこかにいるのか?」


 妖精の手も借りたいと叫んでみるも、返事はなかった。あいつ危険を察してか逃げ出したな……。


「くくっ! あはは! こんなに簡単に引っかかるなんてバッカじゃないの!」


 どこかで聞き覚えがある声がする。最近聞いた声だ。これはまさか……。


「悪く思わないでよねぇ! こっちだって手荒な真似はしたくないんだから!」


 上半身を必死に起こし振り返ってみると、なんと受付で案内してくれた女の子がそこに立っていた。周りに何人もの屈強な男を携え高笑いをしている。親切な態度で対応してくれた女の子とは雰囲気が一切変わってしまっていた。


「どうやら、こっちが本性のようだな……」


「自己紹介しとこうかしら、ボクが『グランシルバ・イージス』のリーダー、カーミアちゃんよ! よろしくねっ」


「しかもボクっ娘かよ……」

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