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資金力だけでパーティを最高ランクにする①

 その日嫌な夢を見た。


 大学生だった俺は仲間たちと物づくりをしていた。


 スマートフォンの検索履歴を取得し、近い趣味の人間と気軽に交流できるようにマッチングを行う交流アプリケーションだ。


 俺の通う大学は偏差値は高くなかったが、それは高校時代自分のやりたいことに熱中していたせいであり、決して個人の能力としては劣っている訳ではなく、むしろ『尖った』人間が多かったと思う。


プログラム言語に詳しい奴や、サーバ運用に詳しい奴、企画プレゼンテーションなどコミュニケーション能力に長けた奴。


 俺はそんな仲間達を一人一人口説き落として、アプリケーションを企画。クラウドファンディングでも奇跡的に予算は集まり、順調に開発は進んだ。そんなときだった。俺はプロジェクトのサブリーダーに呼び出され、開発を辞めたいと相談を受けたのだ。アプリリリースまであと半年。企業も視野に入れていたのに。


「おい! プロジェクトを辞めるってどういうことだよ! もう少しでやっと形になりそうになってきたのに!」


圭太(けいた)、気持ちはわかるけど。辞める正当な理由ができた」


「こないだの企業からの誘いか?」


 俺たちが作ったアプリケーションは大手ITアプリケーション開発企業の目に留まり、彼らは一つの提案をしてきた『開発中のアプリケーションの買い取り』だ。


「でも、あいつらは何のアイデアも出さずに。企業にとってはした金で俺たちの努力を奪い取ろうとしているだぞ! そんなの納得できるかよ!」


「大人になれよ!」


「は? どういう意味だよ!」


「俺たちみたいな小規模メンバーでアプリを作ったって、できるものはたかだしれてる。それよりデカい企業に売り渡してより立派なサービスを提供できた方がいいと思わないか?」


「自分たちだけじゃできないっていうのかよ!」


「可能性は否定していないが、クラウドファンディングで集めた金はとっくに底をつきた! 資金力は相手の方が圧倒的だ、ベースが違うんだよ!」


 サブリーダはその台詞を言い残して姿を消した。


 そしてそれっきり会うことはなかった。後で風の噂で聞いたのは、俺を除いたプロジェクトメンバーがほぼ例の大手IT企業にスカウトされていたこと。そして俺たちが必死に作っていたアプリケーションは『リリースされなかった』という事実だ。理由はもはや分からない。





『ちょっと! 寝言がうるさすぎてアノちゃん寝れないんですけど!』


 アノの声で意識を取り戻す。グランシルバの宿屋で宿泊していた俺。


 身体を起こすと、自分の寝汗が顔に滴っていたのに気がつく。


「ああ、ごめん……」


『次から、アノちゃん専用の部屋手配してよね!』


「金はあるからいいけど……」


 まだ夜中のようだがこのまま寝れそうにはない。身体中の汗を流そうと風呂場に行く。世界観は中世そのものだがインフラは現代並に整備されていて暖かいシャワーを浴びることができた。一体どういう仕組みなんだろう。


「朝になったらヴィオラと合流しよう。早速計画をスタートするか……」





 朝になって、別の部屋に宿泊していたヴィオラと合流。寝不足でクマができた顔を指摘されつつも、昨日偵察したギルドにたどり着く。


「『グランシルバ・イージス』のメンバーに会いたいのですが」


 受付の女の子は驚いたような呆れたような表情を浮かべる。


 彼女はアラブ諸国の女性が着ているようなケープを着ていて、顔以外の風貌は確認できないが、ツリ目で小さい身体の可愛らしい女の子であることは想像できた。


「なんのご用件でしょうか?」


「話がしたいんです。少しでもいいから会えないでしょうか?」


「このギルドにパーティ登録されている方ですか?」


「いえ、してません」


「でしたら、取り急ぎこのギルドでの登録を済ませていただけますか。お話はそちらで伺いますので……」


「わかりました、どちらで?」


「向かって反対側の窓口です、ごめんなさい」


「じゃあ、済ませたらお話させてくださいね」


 パーティの登録窓口に向かって歩き出す俺。


 ふいに靴紐が解けたのに気がつき、屈んで結びなおすことにした。


 その時だった。いま案内してくれた女の子が近くにいた大柄な男に対して視線をむけたかと思うと、顎でなにかを指示するような動作を見せるのが目に入った。


 丁寧な態度で説明してくれた彼女とは打って変わって、横柄な態度に見えた。

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