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資金力だけで美少女魔法使いを仲間にする②

 俺の言葉はヴィオラには聞こえていないようだった。


 渡されたビー玉二つを真剣な目で見つめたまま、身体を硬直させている。


 あと一息だな。押してダメなら引いてみるか……。


「ヴィオラさん、無理言ってしまって申し訳ない。別に断っても全然構わないんだ。<彼ら>と魔王を倒すという目的もあるんだろう」


「……えっ!」


「じゃあ明日は頑張ってくれ、安全に帰れるという保証はないと思うけど、全滅しちゃったらこの村も危ないだろうなぁ」


「酷いことを言うのね……」


「俺は死ぬの怖いからね、もっと強いメンバーを集めてから挑戦するだろうけど。あ、その手に握っているものは返して貰いましょうか」


 俺は彼女の手からビー玉を取り上げると、鞄の中にしまった。


 ヴィオラは大事にしている玩具を取られた子供のような顔で見つめてきた。


 それを一瞥して、宿を後にしようとしたその時だった。


「……入る! 入るわ! だからそれをください……お願いします!」


「……そんなお願いされなくても、来てくれるなら喜んで」


 彼女にもう一度ビー玉を渡すと、ヴィオラは両手でそれをぎゅっと掴んだ。


「……金に目が眩んだ女だって軽蔑しているでしょう?」


「してないですよ。正しくて理知的な判断だなって思いました。じゃあ、同じパーティにもなったことだし、今後ともよろしく!」


 彼女の前に両手を差し出し握手を求めると、バツの悪そうな顔をしてヴィオラも握り返してきた。





 次の日、ヴィオラとは村の出口で合流した。


「パーティとか村のみんなとは話したのか?」


 ヴィオラは小さく頷いた。顔色は良くなった。


「あなたから貰った宝石は二つ。一つは村に渡したわ。ただ復興させるだけじゃなく、襲ってくるゴブリンから村を守る傭兵を何人も雇うことができるみたい」


「それは良かったね、パーティのみんなは?」


 我ながら意地悪な質問をしたな、と感じる。


「私の罪滅ぼしに、あと一つの宝石を彼らの渡したの。そしたら……」


「そしたら?」


「狂喜乱舞してたわ。代わりにパーティを抜けることも全く咎められないくらい。私がいなくなったからってのもあるけど、魔王討伐は中止するみたいね」


 彼らが魔王を倒すために旅をしていた目的は俺は知らないが、少なくともそれだけ金さえあれば自分の周りは間違いなく幸せに出来る。自分の目に見える範囲だけでも幸せにできれば、それ以上の目的など抽象的な概念に過ぎなくなる。


 きっと彼らの旅はこのまま終了するだろう。なんとなく確証はあった。


「それで、これからどうするつもりなの? この大陸の魔王を倒すっていっても私一人の力ではとても無理よ」


「とりあえずこの大陸を旅して、強豪パーティから人をスカウトするつもりだ」


「……呆れた。とことんそういうスタイルなのね」


「強い人間がいろんなパーティに散らばっている状況が良くないんだって。敵が強いなら我々もリソースを結集して戦わないと」


「それらしいこと言って……」


 ヴィオラと問答を繰り返していたら、妖精のアノが俺の近くにやってきた。


『思ったよりクズだったねー! 私は魔王さえ倒してくれればいいんだけど!』


「俺だってそのつもりだよ、一年は帰れないとはいえ、それ以上長く家を空けられないし最短距離で済ませたい」


『そういや、武器屋でいろいろと装備は整えたの?』


「一応、今朝色々と試してみたんだけど、鎧とか盾とか剣とかめっちゃ思いのな……挫折したよ」


『だから、まだそんなクソダサシャツ着たままだったの。本当にどうしようもない奴ね!』


「やめろよ、結構気に入っていたんだぞこれ」


「妖精さんとあなたの話の前後は分からないけど、異国の服を着ていたら目立つから服は着替えた方がいいかと。私の家族のものを持ってくる?」


 ヴィオラの提案を聞き入れ俺はこの世界の衣服に身を包む。布で出来た服だがゴワゴワしていて、あまり着心地は良くなかった。


『で、次の目的地を決めないと』


「出来るだけ都会にいきたい、腕のいいものは人が多いところに集まると思うし」


「この先にあるデニムの森を抜ければグランシルバという城下町につくわ、この大陸では一番の都会ね」


「ヴィオラの案を採用することにしよう、その森を抜けるのは簡単なのか」


「ええ、レベル5もあれば問題ないかと。ゴブリンがたまに群れでいるけど」


 さも楽勝そうに語るが、俺にとっては筋肉隆々のボディビルダーが大量に森をうろついているようなものか……キツそうだな。

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