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資金力を活かして魔王を倒す④

 暴走したカーミアを追って地上へと続く通路を進んでいく。道は細くて曲がりくねって長かったが、2〜3分ほど歩いた先にやっと光が広がっているのが見えてきた。


「この先が、魔王の部屋か?」


 セレスに問いかける。暗い道が怖いのか俺の背中にピッタリとくっついている。その豊胸が確かに感じられるが、それを堪能している場合ではない。


「ああ。魔王さま……。いや魔王の部屋に直接繋がっていることは間違いない」


「魔王の部屋の……どこに出るんだ?」


「そこまでは……分からないんだ。わたしも魔王の部屋には入ったことがないからな」


「なるほど」


 いよいよ出口の光が近づいてきたとき、俺は身を屈めた。どこに繋がってるかは分からないから、ひょっとしたらいきなり魔王の前で、いきなり戦いになってもおかしくない。


「ケータ。ここはわたしが前に出よう」


「……わかった」


「もし、魔王がわたしたちと話をする耳も持たないようだったら……」


「ああ……」


「そのまま果たし合いとなっても構わない」


 セレスも覚悟を決めたようだった。俺たちは耐久力に優れたセレスを最前線にいっせいに魔王の部屋に飛び込むことに決めた。


「セレス。悪いけど、そのつもりさ」


 それにしても全く戦う力がない、この世界ではただのレベル1である俺がカッコつけるのもおかしな話である。


 それから俺たちは物理攻撃を半減するバリアブルシールドと、魔法攻撃を半減するグランバニアの金細工を、セレス、ヴィオラ、自身に何重にも施し、金の力で対策できる最大限の対策を打った。




「よし、行くぞ!」




 そして、俺たちは意を決して飛び込む。

 大量の金で集まったメンバー。不純に思えるかもしれないが結果的にひとつの目的に向かって戦っている。金満パーティーでも、それでもいいじゃないか!




「セレス、敵の攻撃に備えて周囲を警戒だ! ヴィオラは攻撃魔法の発動の準備……を……?」




 しかし、その先に広がっていた光景は。堂々と煌びやかな立ち姿で待ち構える凶悪な魔王ではなく、奇妙、奇天烈な光景だった。


「な……なんだ。これ……は?」


 そこには煌びやかな立ち姿をした魔王の姿はなく、朱色の大きなベッドマットのようなところの上で服を着ないで倒れている巨体だった。


 人型だが肌は緑色。筋肉質で身長は2メートル近くあるのかかなり巨大だ。それが大の字になってベッドの上に倒れている。


「……魔王だ」


 セレスが死んだ魚のような目をして言った。


「え、あれが!?」


 寝ているのだろうか、ピクリとも動いていない。さらによく見てるとその巨体のすぐ横にバスタオル一枚だけかけたカーミアの姿があった!


「カ、カーミア!? なにやってんだよ」


「ふ、ふえっ……びっくりした」


 眠そうに目を擦っているカーミア。どうやら寝ていたらしい。


「びっくりしたのはこっちだよ、どういうことか説明しろ」


「なにって……そこにいるオジサマと愉しんでたんだよ。本当に凄いパッションでさすがのボクももう何度も昇天してお腹いっぱいだよぉ」


「馬鹿な!?」


 まさかとは思うが、カーミアの奴。暴走しただけならまだしも魔王とも知らずに「行為」をしちまっまってことか?


「いいから、そこから離れろって。そいつが魔王だよ!」


「え、うそぉ!」


 バスタオルを巻いたまま、そそくさと離れるカーミア。本当に緊張感がない奴である。それにしても魔王が寝ているいま。攻撃を仕掛けるならば最大のチャンスだ。

 まさにセレスとヴィオラに合図をしようとしたそのときだった。


『なんだ、お前らは。どこから入ってきた?』


 時は既に遅し、魔王はすでに目覚めていたのだった。頭を抱えながらのんびりとこちらを伺っている。


『ここに入ってくる奴はみんな殺すって決めてんだ。誰だか知らないがな』


「敵と認定されたみたいね、もう魔王の周りには魔力が満ちてきてる……でも想像よりは少ないわ」


 ヴィオラはいつでも魔法を発動できるように杖を構えながら言った。想像よりは少ない魔力。恐らくだがカーミアが彼の「相手」をしこたましてしまっていたから。というのが関係しているだろう。


「……どうする? まずは私のエアロナイフで様子見を……」


「いや、相手が本気を出す前に一気に仕掛けたい。ヴィオラ。お前の持つ最強の魔法はなんだ?」


「最強の魔法……アモネイナイフ。エアロナイフの数倍の攻撃力を持つ風属性の斬撃魔法だけど」


「迷わず、それを発動してくれ」


「えぇ……でも、私の持っているMPのほぼ全てを使うのよ!? 倒し切れるかも分からないのに不安だわ」


 ヴィオラは貧乏性なのか、魔力消費量の多い魔法を発動させることを躊躇っているようだった。


「ヴィオラ! いいから俺を信じてくれ。秘策があるんだ!」


「もう! どうなっても知らないからね!」


 ヴィオラは自身の最強技、アモネイナイフの発動にむけて準備をはじめた。

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