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資金力を活かして魔王を倒す①

 セレスをうまく懐柔できたとはいえ、ここはまだ魔王拠点の入り口。戦いとしてはこれから本番だ。


「ケータと言ったな」


 セレスが俺の袖を指で引っ張ってきた。


「どうしたんだ?」


「お腹が……空いたんだが。なにか食べさせてくれないか?」


「空腹なのか? もしかしてメシもロクに食わせて貰えなかったのか?」


「二日に一回は配給があったが……最近乏しくてな」


「いや、それは少ないよ。よく今まで生きてこれたな。カーミア頼めるか?」


「頼まれましたー!」


 とハイテンションなカーミア。カバンからライ麦のような色のパンと干し肉、野菜のようなものを取り出す。


「いまからパパーッと作ってあげるからちょっと待っててよ!」


 料理上手な彼女は、そのまま手際良くサンドイッチのようなものを作り出す。まるで喫茶店で出される軽食を店員が作っているかのようなスピード感。あっという間に完成させた。


「肉と野菜をパンで挟んだものでーす!」


 サンドイッチだな。と突っ込もうとしたがこの世界には名前の由来となったサンドイッチ伯爵もいないのだから通じないかもしれない。


「み、見たことのない食べ物だ……」


「さあ、召し上がれ♪」


 カーミアに勧められ、サンドイッチを口に運ぶセレス。ガブッと一口食べるとそのままピタッと動きを止めた。


「な……なんだこれは!?」


「あれ、美味しくなかった? おかしいなぁ」


「ち、違うんだ。す、素晴らしすぎて。パンと肉は食べたことあるが、組み合わせるとこんなに美味いなんて知らなかった……!」


「なら良かった!」


 そのまま勢いよく、まるで飲み物のように食べ進めていくセレス。よほど感動したのだろうか頬には涙が伝っていた。もう元の魔王の手下に戻ろうなんて気はさらさら起きなさそうだった。


 セレスが夢中になって食べてる間に、妖精のアノにステータス計測をお願いする。セレスのステータスは以下の通りだった。



セレス

レベル:38

HP:2958

MP:333

スキル:アリトンの盾(戦闘開始から一定時間物理攻撃のみ半減させる)

取得技:水属性を中心とした物理攻撃技多数

職業:上級魔物(ランク黄金)

所属パーティ:

アーステ大陸魔王直属 (ランクなし)



「予想した通り、かなり強力な前衛要因ね。ほんとうに敵として戦わなくてよかったわ」


 ヴィオラが表示されたステータスを覗き込んで言った。確かに物理攻撃を得意としているのかMPは少なめだが、そのデメリットなど気にならないくらい、ヴィオラとカーミアを遥かに上回るHPを持っていた。貴重な物理戦闘要員だ。


 よく考えたら俺たちのパーティは魔法使いしかいなかったから、攻撃にはかなり手薄だったのかもしれない。このまま魔王に挑んでいたらと思うと……危ないところだった。


「さて、さっそく魔王の拠点に乗り込もう」


 先程のセレスの攻撃で解かれてしまった防御魔法のミネルヴァガードとバリアブルシールドを装着する。堅固ではあるだろうが、魔王の攻撃をまともに貰わないようにしないと。


「セレス、元魔物のお前にはさっそく仕事をしてもらうぞ。信用しない訳ではないが実績を積んでこのパーティの真の仲間になってほしい」


 セレスは俺の言葉にゆっくりと頷いた。

 バリアブルシールドはヴィオラとカーミアには装着していたがセレスにはかけなかった。彼女が本当に仲間であると判断できたならば、同じ対応をするつもりだ。


「懸命だけど、意外と厳しいのね?」


 ヴィオラが髪を手でくるくると巻きながら言う。


「厳しいかもしれないけどな。人に裏切られてきた俺にはそれくらい慎重にならざるを得ないんだよ」


「ふぅん……」


 いつかこの悩みを彼女に話す日も来るのだろうか。


「で、なにをすればいいんだ?」


 腕を組むセレス。

 美しい筋肉のかたちが浮かび上がっていた。栄養状態をよくすればさらに磨きあがるかもしれない……そんなことを考えるなんて、俺はトレーナーか。


「道中の敵に見つからないようなルートを教えて欲しい。無用な戦闘は避けたいのさ」


「敵に見つからないような……」


 セレスは少し考え込んだ。

 この拠点は全体を堀と魔力がかかった防壁に囲まれていて、魔王がいるとされる屋敷には大量の魔物の住処が点在している。


 俺たちのパーティーがたとえ彼らより高レベルだとしても、展開をミスればあっというまに十人束になった敵に取り囲まれてしまうだろう。


「ちょっと……これだけ堅固な拠点にそんな都合いい空間ある訳ないでしょ」


 ため息をついて、やれやれといった感じのヴィオラ。一方考え続けていたセレスは思いついたようにふと顔を上げると。


「ある、ひとつだけ」


 と鋭い目線をある場所に向けた。

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