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資金力を活かして中ボスを仲間にする①

 グランシルバから出発して3日程で、俺たちがいるアーステ大陸を牛耳る魔王の拠点近くまでたどり着いた。


 普通に移動したら、本来1ヶ月程度はかかる距離なのだが、ヴィオラのフィールド移動速度を格段に上げる補助魔法をおかげで、だいぶ時間を短縮することができたのだ。


「はーい、カーミアちゃんの美味しいご飯を召し上がれー!」


 俺たちは拠点に乗り込む前に、英気を養うためグランバニアの店で仕入れた高級食材をふんだんに使った豪勢な飯を食べていた。


「お、美味しいわ!」


 カーミアの作った料理を食べたヴィオラは目を輝かせて言った。


「ああ、この世界の料理は見たことも食べたこともない物ばかりで困惑してたんだが……やっぱ美味いものは美味いな」


「ちょっとー! カーミアちゃんの料理の腕を褒めて欲しいんだけど!」


「悪い悪い。それにしてもカーミアにこんな特技があったとはな」


「こうやってミッションを自分からこなしに行くなんてこと、前のグランバニアイージスでは無かったからさ。暇で料理ばっかりやってたら結構上手になったんだよね」


 事実、この3日間飯は交代で作っていたのだがカーミアの料理はずば抜けて美味かった。ちなみにヴィオラの料理は美味くも不味くもなかった。本人曰く胃袋に入れてしまえばなんでも同じらしい。


「あとは、ケータくんがその気になるように隠し味を入れておいたから♪」


 口についたスープの滴を舌で舐め取りながら、カーミアは不適な笑みを浮かべている。


「ちょっと待て、いったいなにをしでかしたんだ?」


「じゃじゃーん、カーミアちゃん特製沼ワームカエルの性欲エキスでーす! これをケータくんの飲んだスープにこっそり忍ばせていたのでしたー! ふふふ、これを飲んだら最後リビドーが収まりきらなくなって……ボクを襲わざるをえな……」


「それ、中身差し替えて捨てといたから」


 謎のエキスが入っていたであろう空瓶をひらひらさせたヴィオラが呆れたような口調で言った。「よけいなことしないでよ!」とカーミアが頬を膨らませて言う。


 俺は「やれやれ」とその光景を一瞥したあと、テント近くにロープ止めしてある馬に飯の残りを食べさせた。

 以前、屈強な男達を雇って荷物持ちをさせるのをヴィオラに断られてしまったが、やはり最低限の運搬手段は必要だろうと、彼女を説得した結果グランシルバ最高品質の馬を購入したのだった。


「いやぁ、概ね快適な旅だな」


「あら、ゆったりとした日は今日でおしまいね、いよいよ明日から敵の拠点に乗り込むんだから」


 身体を大きく伸ばす俺の近くで、残飯を土に埋めながらヴィオラはため息をついた。


「そういや、敵の拠点ってどういう感じになっているんだ?」


「強豪パーティが過去に偵察に行った情報によると魔王はこの先にある谷の中心部。そこに大きな屋敷を建てているわ。周りもその側近の住処になっているみたい」


「ということは、城下町みたいになっているということか、なんか魔物が普通に暮らしているって思うと不思議な感じするけど」


「魔王や魔物も生き物なんだから辺り前じゃない?」


 ヴィオラは真顔で言ってのけるが、俺が遊んだRPGで出てきて倒しまくった魔物も、それぞれ暮らしがあったと考えると軽く罪悪感を覚える。ここでは深いことは考えない方がいいかもしれないが。


「それに、レベルも高い魔物のなかには知識が高くて喋れるものもいたり、人型だからパッと見て魔物と思えないようなモノもいるわよ。魔王もその1人と言えるかしらね」


「なるほどな……」


 それはなんとなく想像ができる、魔物を束ねるにも知能やコミュニケーションが必要だからだろう。


「特に……拠点の入り口を守る魔物は特に強力で、挑んでいったパーティは軒並みやられてしまったという噂だわ」


「な、なんだって……最初からそんな強い奴と戦わなきゃいけないってか。RPGで言うと中ボスってやつだな」


「もう……よく分からないけど。そんなところで負けてるようじゃ、魔王討伐なんてできないわよ」


「そ、そうだな……」


 最初の魔王だからって一筋縄にはいかなそうだ。それにいざ戦闘になったら、戦力にならない俺を除いたら、カーミアとヴィオラしかいない。果たしてこのパーティで討伐することなんてできるのだろうか?


 明日は自分の命がないかもしれない。

 現実を浴びてきた不安を抱えつつ、俺は干し草の上に敷いたマットの上で眠りについたのだった。

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