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リバース─犯罪者隔離更正施設─  作者: 修多羅 なおみ
第1章 犬と狼
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依頼2

「じゃあ、改めて今回の依頼を説明するよ。――あ、犬飼くん、狼子の隣に座ってもらえる?その方が説明しやすいし」


「は、はい!」


 そう言われ彼女の隣へ急いで移動する。腹の痛みはだんだんと治まってきた。チラリと狼子の表情を横目見る。


(…やっぱり綺麗な人だな……。しかも何かいい匂いがする!)


 睫毛まで銀一色の狼子に見とれていると、前から咳払いをする音が。慌てて正面を向く犬飼に、一連の流れを見ていた右近は、くつくつと肩を揺らしていた。


「狼子ちゃんが気になるのは分かるけど、集中してね」


「す、すいません!」


 ニヤリと悪い顔の虎之助に赤面する犬飼。そんな二人を余所に、ただただ無視を決め込む狼子だった。


「この子を探してもらいたいんだ――右近!」


「……ほらよ」


 右近から手渡された写真をそれぞれ受け取る。そこに写っていたのはあどけない笑顔の少女。


「名前はマリア、18歳。本国からのお客さんでね、何でも偉い人の娘さんらしいんだよ」


「依頼主はその父親?」


「違う人だけどその関係者みたいなもんかな」


 名は明かせないとのことから、どうやらこの娘の父親は、相当な大物なのだということが伺い知れる。一人で護衛もつけず島に来た彼女は、2日後の朝に消息を絶った。


「いったい何しにここへ?」


「父親の話しじゃ、何度か友人たちとボランティアに来たことがあるらしい」


 この島には両親のいない孤児たちが数多く存在する。死別だったり生き別れだったり、はたまた捨てられたり…と理由は様々。


「北区にある教会で、食事の世話や子供たちの遊び相手をしてたみたい」


 将来彼らが大人になったときの為にと、勉強を教えたりもしていた。


「…若いのに立派な子ですね」


 貧しい子どもたちのためにと……まさにその名にふさわしい聖母のような少女。すっかり感心した様子の犬飼を尻目に、狼子は鼻で笑った。


「東区を出て南に向かったのが、彼女の最後の姿だよ。雪兎に頼んで他の区のカメラも調べたんだけど……」


「カメラの数が少なすぎて姿が映ってなかった……ってこと?」


「そういうこと。それに本人がカメラを避けてたのかも」


「……だとすると、ますます探すのが厄介だ」


 島といってもそこいらに浮いている小さな島ではなく、rebirth(ここ)の面積は約1000k㎡もある。


 あの…と、犬飼が手を挙げる。


「誘拐されたって線はないんでしょうか?」


 父親が大物ならば金目当てに少女を狙う者が出てきてもおかしくはない。


「それだったら良かったんだけどね~。けど、一週間経って身代金の連絡が来ないんじゃ、自発的に消えたとしか考えられないね」


「……あるいは死んだか」


「そ、そんな! ――まさか!?」


「そういうことはよくある」


 犬飼の脳裏に()()の文字が浮かぶ。


「生きてるにせよ遺体にせよ、依頼を受けた以上は、マリアちゃんを探さないってわけにはいかないから」


 よろしく頼む、虎之助の言葉に二人は頷いた。


「一つ聞いてもいいですか?」


「ん? なに?」


「なんで誘拐だったら良かったんですか?」


 身代金さえ払えば解決するからだろうか。


「だって楽でしょ? 犯人の居場所さえ特定できたら……」


 ()()()()()()()、そんな言葉を期待したが、犬飼(かれ)の考えは甘かった。


「あとは皆殺しにするだけだもん!」


 そう笑った虎之助の顔が酷く美しかった。

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