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第七章☆意見を求められる
「宇宙開発に携わりたいというのは本気?」
「うん」
夢うつつで一馬は返事を返した。
「宇宙にまで戦争を持ち込むの?」
「いや。少なくとも俺はそんなこと望んじゃいない」
「でも現実には、核戦争の兆しもあるし、人間はどこまでいっても争うんじゃないのか?」
「俺は、性善説を信じたい」
「地震や異常気候をどう見る?」
「かなり危機感を感じる。手遅れになる前に手を打っておいた方が良い」
「だから、宇宙開発?」
「そう」
一馬は、頭の中で、月や火星近辺に物資を送って、技術者を送り込み、人類が生存可能な空間を確保する案を描いた。
「人類だけ?他の生物は?」
「他の生物も運び込む。生態系を崩さないように」
「子どもの出生率の低下と障害児が増えていることはどう考える?」
「地球環境の変化に伴って、人間の進化過程のひとつとして現れている現象だと思う。染色体異常は特に、新しい環境に適した人類の進化の模索だと考える」
「ふうん・・・また来る」
はっと一馬は目覚めた。
また変なのが一馬の元を訪問したらしい。
「まいったな。一番無防備な時に来るのか」
頭をぼりぼりかきながら大あくびする。
今日は、まだ足りない知識を補う為に、ネットサーフィンやら専門書の読書やらをする予定でいたが、ちょっと、ああいう変な存在への対策はどうしようかとぼんやり考えた。
老若男女関係ない声が複数やって来て、一馬の考えていることを洗いざらい明白にしていく。何が目的なのかわからないし、とても困る。
「一馬様、おはようございます」
執事が朝食を用意してくれた。
「いつもありがとう」
「!・・・いえ」
滅多に言わない礼の言葉に、執事はびっくりしたようだった。彼もだいぶ歳をとった。なるべくいたわろうと一馬は思った。
「おはよう!」
進一の声がした。一馬はびっくりして食事にむせた。
「大丈夫か?」
「大丈夫。それより、なんで来たんだ?」
「歩いて」
「そうじゃなくて、理由」
「理由が必要なのか?」
「わざと言っているのか?」
進一は肩をすくめた。
「俺、恵美ちゃんと話し合ったんだ」
「それで?」
「仕事をして家庭を守りたいんだけど、これといって特技も資格も持ち合わせていないし、煮詰まっちゃって」
「それで俺のところに来たんだ?」
「うん」
「民間の宇宙開発事業を立ち上げるって言ってたの、本当にやろうかと思うんだが、一緒に働いてくれるか?」
「もちろん、喜んで」
「横田正太郎さんに、ロケットに搭載するために解説君のデータをもらえないか打診してみようと思ってるんだけど・・・」
「共同開発になるね」
「うん」
「進ちゃんがいてくれるなら心強いよ」
「てへへ」
何より、気分が全然違う。一人より二人。二人より三人。三人寄れば文殊の知恵とも言うし。
一馬はやる気を出した。