表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/13

   第六章☆進一に彼女ができた

「でさ、進ちゃんが宇宙に興味があるから、民間の宇宙開発の会社設立して、ロケット開発しようかと思ってる」

一馬は長年の夢を実行しようとしていた。

いつも一緒にいてくれる進一と同じ夢を追いかけようと、一馬は想っていた。

「あのさ、一馬」

「なに?」

「俺、彼女ができたんだ」

「えっ」

「恵美ちゃんっていうんだけど、将来結婚も考えてる」

一馬はおろおろした。

「家庭を持つのか?」

「そのつもり」

「それは・・・」

それは、俺との付き合いをやめるってことなのか?と一馬は心の中で叫んだ。

「もう遅いから今日は家に帰るよ」

「ああ」

進一を見送った後、一馬は脱力してソファに身を投げ出した。

「一馬様、緊急事態です」

執事が来て早口で告げた。

「ああ」

「ああじゃありません。複数の侵入者です」

「えっ⁉」

「おそらく、一馬様の研究を狙って侵入しようとしています」

「わかった。発明室は3重の扉で封印する。お前は先に逃げてくれ。俺もすぐ秘密の通路で逃げるから。しばらく時間を置いて、安全が確認できたら戻る」

「了解しました。・・・一馬様」

「なんだ?」

「冷蔵庫に羊羮が大量に冷えています」

「なんのこっちゃ」

「では、お先に」

「ああ。気を付けて」

執事を見送ると、一馬は簡易モニターで侵入者たちの様子を見ながら発明室を厳重に閉じて、洋館に備えてある脱出ルートを通って外へ逃げ出した。

高橋山の中腹にある稲荷神社の境内に出口が続いていて、夜の闇の中で一馬は山を降りた。

「どこへ身を隠そうか?」

ふっと、一馬を何かが誘った。

無意識のうちに、一馬は種子島目指して急いでいた。

「進ちゃんが行ってしまう。俺はまた独りになってしまう」

胸がひしひしと傷んだ。

「じゃあ、私たちと来るかい?」

何かが一馬に語りかけた。

無意識で一馬はその何かと会話した。

「一馬の発明の頭脳はとても魅力的なんだ」

「俺は、進ちゃんに影響されたんだ。地球が温暖化したり、気候的に不安定になってきてる。人類は宇宙へ進出するべきだ。万にひとつの可能性でも良い。生き残る人の割合を増やすんだ」

「それなら、手伝ってやろうか?」

「・・・」

一馬にはよくわからなかった。

「俺をどこへ連れていくんだ?」

「もっと良いところへ」

足が勝手に歩いていった。

断崖絶壁に一馬は吸い寄せられていった。

「俺は死ぬのか?」

「いいや、迎えが来る」

オレンジ色のまばゆい光が見えた。

「あれが迎え?」

「そう」

ふらふらしている一馬はぼんやりと進一のことを考えていた。

オレンジの光が一馬を吸い込もうとしたその瞬間、一馬はきびすを返して何かからの呪縛を振りほどいた。

「どうして?一馬」

「家に羊羮が残ってる。食わないと」

何か、はあっけにとられて一馬を見送ると、オレンジの光と共に、するん、と空間に消失してしまった。

「カーモリ、か」

一馬は笑った。気を付けないと心の隙間を狙った誘惑がこんな形で現れる。くわばらくわばら。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ