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幻想世界の戦い方  作者: そうざき
4/7

第4話輪の中

「!?」

さっきまで人の居る気配はしなかったはず、一体誰だ、と本をさらっていった人影を見る。

そこにいたのは、小さくて、耳がとんがっていて、口は大きく、緑の服を着た、これは、

「…ピクシー」

小さい頃、絵本で見たピクシーの姿だった。なんてことだ。

現代ではいないとされている妖精が、こちらでは存在しているのだろうか。それにしても、姿形が絵本で見たピクシーにあまりにも似ていないか。これではまるでVRゲームをプレイしているようだ。それとも、本物のピクシーもこのようなものなのか。

俺が衝撃を受けて固まっている間、ピクシーは此方を見て、跳ね回りながら、それはそれは楽しそうに笑っていた。

「ーーー!」

その笑い声は人間のものではなく、鈴やガラスの風鈴を鳴らしたような、可愛らしい音だった。しかしながら、その音にはどこか此方を馬鹿にしているような、意地の悪い感じが交ざっていた。

俺は、今、この妖精に悪戯されているのか。

そう気づいた時、すでにピクシーは本を抱えたまま、図書室の奥へと逃げようとしていた。

「ま、待て!待て!」

あの本がこの変なところから出る鍵になるかも知れないのだ。そんな大事なものを持っていかれたらとても困る。困るどころじゃない。

慌ててピクシーの後を追い掛ける。この図書室はそれほど大きくはない。妖精を見失うという心配はないだろう。そのはずだ。そのはずだったが、

「…なんだこれ…なんで、こんなに、広いんだ…」

本棚を曲がった先、図書室の奥には、緑が広がっていた。

一面に生えた木々と草。近くには川も流れている。そこらじゅうに生えた花からは、とても良い香りが漂ってくる。果てが見えないくらいに広い。こんなところ、図書室ではない。図書室には、こんな大きなスペースはない。

しかし、今はそんな衝撃を受けている場合ではないのだ。俺の少し前には、あの憎たらしくはしゃぐピクシー、それと本。一刻も早く追い付かなくては、この広さでは、見失ってしまう。

目の前のピクシーに向かって全力で走る。勿論ピクシーも走って逃げる。その速いこと、なかなか追い付くことが出来ない。ピクシーってこんなに足が速かったか?それとも俺が遅いだけか?いや、やめておこう。体育の話はやめておこう。

だんだんと息も切れてくる。けれど、徐々に距離も縮まってきた。もうすぐ、もうすぐ捕まえられる。そう思って大きく踏み出した瞬間、

「!」

足元から、大きく痺れるような感覚が全身を駆け巡る。静電気が起こった衝撃を、何十倍にも大きくしたような痺れ、これはもう電撃と言って良いのでは、あまりのことに全身の動きが止まる。

何だ、と思う間もなく、再び意識が暗転しはじめる。体から力が抜け、地面に倒れる寸前、視界に入ったものは、茸でできた輪っかと、笑い転げるあのピクシー。

そうか、これはお前の罠だな、そんなに引っ掛かったのが嬉しいか、そうか。

騒がしい笑い声をバックに、また意識を失った。

またか。勘弁して。



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