第3話飲み込まれた先
真っ暗な視界のなかで、チチチ、チチチ、と鳥のさえずる声が聞こえる。
いや、これはさえずるというよりむしろ大合唱か。騒音と言って差し支えのないレベルで何十匹という鳥が鳴いている。その音を聞いているうちに、段々と意識が浮上してきた。
…ここは、どこだ。俺は、寝ていたのか?
未だぼんやりとする頭のなかで、意識を失う前のことを思い出そうとする。
…たしか、学校で、図書館に行って、それから本を見つけて、開いて、そして、そうだ、絵が出てきてそれに飲み込まれて…
そこまで思い出して、一気に目が覚めた。そうだ、変なことが起きたんだった。大丈夫なのか、俺は?
状況を確認しようと、閉じていた目を開く。そして俺が見たものは、
「…木だ」
目の前にあった、本棚から生えるとてつもなく大きな木だった。
とりあえず、体を起こして周りを見渡してみる。
目の前には大きな木、と、それに包まれるようにして立っている本棚…そう、学校の図書室だ、おそらくは。その周りは地面から生えた草や木、伸びた蔦が囲んでいる。まるで、図書室の廃墟だ。
俺は図書室で倒れた。しかしながら俺の知っている図書室にはこんなにも自然で溢れてはいなかったはず。どうなっているんだ?
人生で初めての事態に、心拍数が上がっていく。爪先から冷たいものが込み上げてくる。体が緊張しているのだ。
俺は何処か別の時代か、場所に来てしまったのだろうか。小さい頃読んだ本の主人公のように。
俺はクローゼットの中に入ってないし、ナイフで空中に切れ込みをいれてもいない。真夜中の博物館で門をくぐった覚えもない。けれど、あのとき、本の絵に飲み込まれた。原因はそれしか思い付かない。
なんだかよくわからないけれど、とてつもなくファンタジーなことになってしまった。いやあどうしよう、困った。
どうしたら良いかわからず、体を起こした体勢のままでいると、ふと、目の前に落ちているものを見つけた。
本だ。あの、「幻想世界の戦い方」だ。
もし、この本が原因でこの変なところへ来てしまったのなら、またこの本を開けば帰れるのではないか。
俺は閃いた。さすが俺。鋭い。
そう思いつつ、早速本に手を伸ばそうとしたとき、目の前で本をかっさらっていくものがあった。