第1話ルーンは覚えてる?善き隣人とのつきあい方は?思い出してごらん、きっと助けになるだろう。
世界には、たくさんの不思議なものがある。
それは例えば魔法だったり、妖精だったり、占いだったり、はたまた御払いだったり。
昔から人々が信じてきた、あるのかないのか分からないもの。使い方次第で人を幸せにも不幸せにも出来るもの。
科学が発達した最近じゃ、そんなものは必要ないのかもしれない。でも、俺はその不思議なものが小さい頃から大好きだった。
24のルーン文字を覚え、その意味を知った。
隣人である妖精との正しい交流の仕方を学んだ。
そして、妖怪の見破り方を練習した。
独りで本から学ぶ時間は、とても楽しかった。けれど、それらはきっと将来役に立つことはない知識と技術。大人になるにつれて独学の時間は少しずつ減っていき、覚えたことも少しずつ忘れていってしまった。
実際、日常生活でルーン文字を読み書き出来なくでも全く困らないし、妖精が訪ねて来ることもない。妖怪だって此方を化かしたりしてこないのだ、見破る機会なんて一度もなかった。
このまま、不思議なことに触れずに一生を終えるのだろう。憧れたファンタジーの世界が、現実と交じることはないのだろう。自分の蓄えた知識も、実践されないままになるのだろう。そんなことを思いながら、不思議なものとは無縁の生活を送っていた。
あの本を開いて、ファンタジーの知識が全ての世界に入るまでは。
人生って、何が起こるかわからないよね。