終わりの始まり
「地獄の沙汰も金次第、さあ始まりました地獄門大評定。では早速本日のジャッジを務める、無く子も黙る不精髭『裁判官THE閻魔大王』様に登場していただきましょう!」
辺りが暗転し、目の前のスポットライトに、貧粗な老人が現れる。
「どうも、閻魔です。よろしくお願いします」
「って、ちょっと待ってください、閻魔様って恐ろしい顔をした大男ってイメージでしょ。これじゃあ・・・ちょっと・・・。地味だし。」
「ちょっと、君、そういうことは、声に出さないの。人間界で勝手にイメージ作られて閻魔大王も困ってんだから。」
マイクをもった男がフォローに入る。
大王、へこんでるし。
「いいんです。いつもの事ですから。期待に沿えない見た目で申し訳ありません。」
大王が謝る。ちょっと悪いことしちゃった感にさいなまれる。
「こちらこそ、失礼なこと言っちゃってすみません」
大王は、弱々しく右手を軽くあげて、まあいいけどさ、とサインを送ってくれた。
「では、気を取り直して、THEジャッジ・オブ・ヘブン・オア・ヘルをスタートします。本日の司会を務めますのは、わたくし「司会THEケルベロス犬井」です。どうぞよろしく。」
「はい、すみません、ちょっと事情が掴めないんですが・・・」
「ここ来る途中の船で説明聞きませんでしたか?困るなあ、しっかり聞いておいてもらわなくちゃ」
司会の犬井さんは、思うように進行できず不機嫌になってきたようだ。さっきから頻りに水を飲んでいる。
「あのさ、うちらも慈善事業でやってんじゃないんだよね。だいたい君らがさぁ、呼んでも無いのに来るから、もう仕方なくやってんの、わかる?でもさ全員地獄ってんじゃちょっとかわいそうでしょ。」
「はあ、」
って、やっぱり分からない。
「まあとにかく、君が天国に行くか地獄に行くかこれから決まるから。とりあえずレッツエンジョイ!」
「天国と地獄とかって、死んだら行くとこですよね。・・・あれ、てことは俺死んだの?」
そういえば、そんな気がしてきた。なんで死んだんだっけ?
「おそい、気づくの遅すぎ!今のでマイナス2億点です。あー残念」
ちょっと、ちょっと、ええ。
「じゃあ、第一問!」
かなり強引に閻魔大王が第一問も始めた。
「はい!はい!ちょっと待ってください。天国か地獄ですよね?生前いいことをしたとか、悪事を働いたとか、蜘蛛を助けたとか、あれですよね?第一問って」
ちょっと俺も必死になってきた。
そこに犬井が再び切れ気味に割り込む。
「君、うるさい。場の雰囲気を読んでよね。」
なんか腹立ってきたぞ。
「ちなみに、人間は基本地獄行だから、頑張らないと苦しんじゃうぞっ!」
おい閻魔、なんだ軽いノリはっ!
「苦しんじゃうぞっ!」
犬井もそれに乗るな!
「改めて、第一問!私閻魔大王の職業はなんでしょう!」
ちょっと閻魔が生き生きしてきた。軽いステップなんか踏んじゃってるよ。
「職業って言われても・・・、あ、ああ、裁判官、裁判官でしょ、さっきそう言ってましたよね」
裁判官THE閻魔大王って言ってたはずだ。
「正解は・・・」
犬井がタメを作り、ドラムロールが流れる。
向かいの電光掲示板にルーレットのような表示があらわれ、はい出た。
「閻魔大王」
そのままじゃん、問題じゃないじゃん。
「はいハズレ。ああ、いい忘れましたが、うまく閻魔様に気に入られると、天国美女と逝く豪華極楽クルーズの旅、残念ながら嫌われちゃうと血の池・針の山・三角木馬・地獄三都物語がプレゼントされますのでお楽しみに」
「はい!」
「はい、そこのひと、また質問ですか?」
「あの、地獄三都物語の三つ目、ちょっとおかしいような」
シャラップッ!
「こまかい!あなた非常にこまかい!ノリでやってるんだから、いちいち話の腰を折らないように!」
「はぁ・・・」
その時大王はというと、第二問を出したくてうずうずしているようだ。
犬井が話を問題に戻した。
「さあ次の問題に行きましょう。お願いします。」
(つづく)