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おっさん、召喚術士の真の目的を知る

グレディアの町に入り、真っ直ぐアルド商会・グレディア支部に向かう。


グレディアの町は、王国のある大都市・グロウヴァル王国に1番近い町である。

トアインの町は王国の北東になる町だが、距離的にはグレディアの町より2日ほど多くかかる距離にある。

ブレアドの町は王国から20日はかかる距離にあるので1番遠い町と言うことになるだろう。


そういう位置にあることからも、グレディアの町は結構賑わいがあり多種族も数多く拠点にしている一流の冒険者には憧れの町なのだ。

正直な話、俺もこの町を拠点にしようと思ったのだが・・国王に気に入られた経緯から貴族側から睨みがありブレアドの町に落ち着いたというわけだ。

まあ、移動の魔法陣があるので問題はない。


「そう言えば、アルド商会はなんで本店をブレアドの町に?」

「簡単な話さ。オヤジがあそこで旗揚げした名残ってヤツだよ」

「なるほど・・」


ゲン担ぎや願掛け・・らしいなぁと思う俺だった。


「そういう昔堅気な人って良いですよねぇ」

「そうかい?それで死んじまっちゃあ意味ないがな」

「じゃあ・・」

「ああ・・。トバール商会の奴等にな・・」

「・・・・・」

「まあ、今となっちゃあ恨みもないよ。あいつらにも天罰が下ったしな・・」


あ~・・それやったの俺たちです。

しかも偶然です。すいません。

どうもしんみりしたのは苦手だ。

前世の苦い思いも思い出しちゃうしな。

こういうのはスッパリと切り替えた方が良いだろう。


「姉御、ちわース」

「「ちゃーす!」」


なんだろう・・?

ノリがヤンキーに向けるソレなんだよなー・・。

「着いたぞ。さっそく倉庫に行くか・・」

「行きましょう」



このネタの分かる若者はいないだろうなぁ。


「おう。人の入りは良いがやっぱ物が不足してるな」

「すいやせん。嬉しい悲鳴ってヤツでして・・」

「とりあえず、今から荷物をいくつか搬送する」

「今からですかい?」

「ああ・・。こいつらの力を借りてな」


そう言って、俺たちを指さすアルドリア。

俺たちは軽く会釈する。


「冒険者みてぇですが・・」

「3ヶ月間だが、専属になってもらった」

「・・ってこたぁ、魔法使いですかい?」

「うむ。倉庫に搬送用の魔法陣を作るから人出を集めておけ」

「了解っス」


倉庫に着くと俺は魔法陣を設置した。


「じゃあ、さっそく荷物を取に行こうかい?」

「了解」


魔法陣を発動させ、『アルド商会・倉庫1』に跳ぶ。

すでに目の前には荷車が荷物を積み上げて待っていた。


「荷物の搬送、よろしくお願いしやっす!」

「ローデン、塩樽に水樽、干し肉を用意しな」

「ウス」


荷車を魔法陣の上に動かしたところで俺はアンリエッタたちの方に向く。


「荷物は俺が運ぶから、アンリエッタたちはここで荷物の用意を手伝ってあげてよ」

「分かりました」

「面倒やけど・・仕方あらへんなぁ」

「頑張ります~」


俺は早速魔法陣を発動させて『アルド商会・倉庫2』を選択する。

俺とアルドリアは荷車と一緒にグレディアの町のアルド商会の倉庫に着く。

こうして、アルド商会の仕事を進めていく。

気がつくと今日1日で5往復もすることになった。


「どうやら、真面目に働いてくれるようだし報酬の前払いってことで守り神をやるよ」

「え?いいのかい?」

「これでも、人を見る目はあるつもりだ・・持っていきな」


投げ渡された召喚カード。

そこに描かれていたのは―――。


「む。『魔女・イザベラ』か・・。破って構わぬか?」

「ダメだって!――っていうか、知ってるヤツなのか?」

「ちょっとした因縁というヤツがあるんよ・・」

「とりあえず、家に戻って封印を解くとしよう」


アルド商会を出て家路へと急ぐ。

とは言っても、食料の買い物は忘れずに・・と言った感じでだ。


家に着くと、俺は自分のメイン職業を『召喚術士』にして庭に出る。


「・・ん?なんか『気配』を感じたけど・・まあ、いいか」


庭の草むらに気配を感じたような気がしたが、今は『こっち』に集中したい・・。

俺は、魔力を集中させていく。

この作業が1番難しい・・。


ゲームでは、コマンドで使いたい魔法の選択をして発動・・と言うのが通常だが、『リアル』ではそうはいかない。

確かに、無詠唱で使える魔法はあるが・・魔力を貯めたほうが同じ魔法でも威力が異なる。

しかし、そのことを知っている者はどれくらいいるだろうか?

キッカケになったのは『魔法発動の失敗』である。

この世界はゲームをリアルにした世界である。

通常なら、魔法を選択すればMPがあれば発動自体はできて当たり前のはず・・しかし、魔法使いの中にも落ちこぼれはいる。

魔法をうまく使いこなせないのには理由がある。

それが、魔法力のコントロールである。

魔法力を集中し、決められたMPを消費して魔法は発動される。

魔法使いはこの行程を普通に使いこなすことができる。

だが、中にはコレを思うよにできない者もいる・・。

つまり、ゲームの世界でありながらリアルな欠点があるということであり、逆を返せばやり方次第で魔法の威力を上げることも可能であるということなのだ。

そしてそれは、魔法だけにとどまらないと言うことも意味している・・。


とまぁ、解釈はここまでにして俺は魔法力を集中させていく。

召喚カードの封印を解くにはMPを50消費する。

普通に発動することは俺には可能だが、慎重には慎重を・・と俺は考えている。

曲がりなりにも失敗は許されないからだ。


「これだけあれば十分・・か」


すでに集まった魔法力はMP100分はあるだろう。


「・・カードに封印されしかの者を目覚めさせよ。我が名、ルークの名において―――『リカバリィ』!」


カードが光り輝く。

何度見ても慣れない光景だ。

元々は生体である者をカード化しているにすぎないのに、元に戻すだけでこの視覚効果はゲーム時そのままである意味引く。


「・・あ、あれ?」


通常ならここで光が人型になるはずが、煙が生まれ視界を塞いだ。

ま、まさか・・失敗した!?


「おかしいなぁ・・。十分な魔法力のはずだったんだけど・・」


どこで失敗したのか?

煙が晴れたその場所には誰もいなかった。


「おかしい・・カードも見当たらにぞ?」

「ルーク、よう見い上じゃ」

「上?――あっ?」


視線を上にあげるとそこには宙に浮いた『足を組んで座っている姿の女性』がいた。


「フフ・・・驚かせちゃったかしら?野間大輔・・いえ、ここではルークだったわね」

「・・え?――えええっ!?」


なんで、地球人の頃の俺の名前を知っているんだ?

俺は驚きを隠せなかった。


「ん?・・もしかして、伝えてないの?シーラ」

「お前も記憶を見たなら分かっておろう。昔のことは触れてやるでないわ」

「えっと・・もしかして・・・?」


冷汗が垂れるのを感じつつ俺はアンリエッタを見る。

申し訳なさそうな顔のアンリエッタがそこにいた。


「その・・申し上げにくいのですが・・」

「リカバリィの魔法と一緒に記憶も流れ込んできたのよ。まあ、これも仕様の1つだからしょうがないと思いなさい」

「つまり・・初めから組み込まれてるってことか・・」


なんてこった。

召喚カードの封印解除にそんな作用があったとは・・。

でも、なんでそんな仕様が組み込まれているんだ?

召喚カードは召喚術士を愛するようになっている。

しかし、召喚術士の全てを知ることができると言うことは良いことばかりじゃないはず・・。

なのに、どうしてこんな仕様を?


「答えは簡単さ・・。召喚術士を召喚カードが無条件で愛するっていうのがもともと嘘なのさ」

「嘘?エ・・?本当に?」


あれはゲーム仕様なはず・・なのに嘘って・・?


「ワタシが覚えている範囲で言うと、召喚術士になる条件を満たす『方法』で『召喚術士』の『資格』を得られない者もいるわ」

「どういうこと?」

「ドラゴン・ファンタジーはRPGではあるけど、自由度がかなりあるゲームだったでしょう?」

「まあ・・確かに」


自由と言えば自由ではあったが、何というか普通の選択肢にはない悪意のある項目があり、またそれを選ぶことで罪人系の職業などを覚えていくようになったりもするのだ。

また、モブキャラを殺したりもでき、悪徳勇者にもなれると言うちょっとビッチな部分もあった。

まあ、普通にやる分には問題がなかったので俺的にはドラゴン・ファンタジーは良質なゲームに入っていた。

そう言えば、召喚術士になるために村人をゾンビ化させて数を稼ぐと言った輩がいたと聞いたことが・・。


「職業を取得する際、基準を下回る方法を取ると職業を得られないのよ」

「つまり・・卑怯な方法や何かを犠牲にする方法などじゃあ職業を取得できない・・と?」

「そうなるわね。ただし、それはゲームでの話し。この世界では職業は条件を満たせば誰にでも取得できるわ。そこで、私たちには救済処置として私たちを召喚する者の記憶や考え方などを知ることができて、召還を許可するか判断できるってわけ・・」

「じゃあ・・・」

「少なくともワタシたちはお前を認めたってわけさ・・」

「・・・・・」


嘘じゃないんだろうな・・。

俺の地球での40年・・無駄じゃなかったんだな。

報われなかったと思った40年・・。

それを含めた今の俺を認めてもらえたことが嬉しかった。


「ありがとう・・」


「・・で、それはそれで、ルークには召喚カードの『秘密』は教えたのかい?」

「召喚カードの『秘密』?それって・・」

「おい。それは・・」

「それはじゃないだろう。本来ならジョーカーであるシーラが言うべきことだろう?」

「イザベラ・・おまんのその口の軽さ・・変わらんのう。やから好かんのじゃ」

「シーラ・・?」


イザベラの言葉にシーラはイラついている。

それにしても召喚カードの『秘密』って・・なんのことだ?


「召喚カードの『秘密』・・じゃったか。秘密にするほどのモノじゃないわ。ただ・・ルークには必要はないと思ったまでじゃ」

「どういうこと?」

「ルークがうちらを探している理由じゃ。ルークはうちらと結婚するためじゃなく純粋にうちらを『解放』するためじゃったろう」

「そうだね・・。システムで好きになられても嫌だったし・・」


地球での40年で俺は学んだ。

一目惚れは『まやかし』だ。

見た目や雰囲気で人を好きになってもその人の『本質』を好きになることはない。

『なった』という思い込みがあるだけで『なってはいない』のだ。


だから・・システム上のこととはいえ、『召喚者を好きになる』と言うのは一目惚れに近い感じだと俺は思ったのだ。

いや・・この場合は『刷り込み』・・『インプリティング』と言う方が正解かもしれないが・・。

どちらにしても、俺の本意ではない・・どれほど彼女たちが魅力ある女性たちでもだ。


「言葉で説明してもおまんは信じじゃろう?」

「・・う。そうかも・・」

「せやから、まずはうちらを好きになってもらうんがスジやないかと思うたんよ・・」

「えっと・・正確に言うと嫌いじゃないわけで・・・」

「そないな意味やない・・ことくらい分かってんのやない?」

「う・・」


今なら分かる。

彼女たちの思い・・俺を好きだと言った言葉が本当であることを・・。


もう・・誤魔化せないよな・・。

俺の中にある『想い』も全て知られただろうし・・な。


「好きだと・・愛だと言いきれないけど・・ちゃんと女の子だって認識はしてるよ」

「まあ・・中身はいい大人だからねぇ・・人並みに欲情くらいは・・」

「言わなくていいから!口にされると生々しいから!!」


確かにその・・これだけの美女たちを前に何も感じないわけがないわけで・・。

いわゆる一つの・・性欲というヤツはどうにもならないわけで・・・。

一応、普通に接しられるのは『大人』故なのだろう・・。


「愛だの恋だのだけで抱くとか抱かれたいがあるわけじゃないわ。時には欲望の赴くままにってのもある・・」

「まあね。でも・・俺はそういうのに流されたくないって言うか・・」


愛情がすべてとは言わない・・。

それでも・・欲望に溺れるのはごめんだ。


「とにかく・・その話は置いといて、俺に話すことってのを聞きたいんだけど・・」

「まあ、ええ。この召喚カードはタダのカードじゃないカード自体にある意味があるんよ」

「カードに意味?」

「なぜ召喚カードは14枚なのか?なぜうちのカードがジョーカーと呼ばれとるか分かるん?」

「それって・・トランプのカードのことか?」

「なんや、分かっとるやんな。そう・・13枚の既存のカードにジョーカーを含めた14枚のカード・・しかし、元々この13枚のカードには別の意味があるんじゃ」

「別の意味?」

「ワタシたちは「ハートのカード」を意味してるのさ」

「つまり・・他の・・『スペード』、『クラブ』、『ダイヤ』のカードも存在する・・とか?」

「そういうことじゃ」

「全部で53枚の召喚カードがある・・」

「ただし・・じゃ。それぞれのカードは意味が違うのじゃ」

「それって・・?」

「ハートが『恋愛』を指し、スぺードは『武具』、ダイヤは『富』、クラブは『力』を示しているのじゃ」

「ハートが恋愛、スペードが武具、ダイヤが富ってのは理解できるけど・・クラブの力って・・?」

「そうじゃな・・。詳しく言うとじゃ・・ハートは『恋愛対象』を意味しておる。スペードは『伝説の武具』をダイヤは『宝石や財宝』を・・そして、クラブの力は『従者・眷属』を意味しておるのじゃ」

「召喚術士になることの本当の意味ってそんなにチートな職業だったのか・・」


当時、ゲーム内でも『召喚術士』の職業受給率はめちゃくちゃ低かった。

ゲームキャラとの単純な疑似恋愛と言うのもハマったら戻れなくなりそうで怖いという理由から敬遠されがちだったし、取得しても2~3枚集めたところで満足してしまう者も多くカードの種類があると言う事実にたどり着けなかったのだ。


「ゲーム時はジョーカーのカードは13枚のカードを集めないと見つけられないシステムじゃったからのぅ」

「あ~・・そこまでの根気は確かに続かないかもなぁ・・」


世界中に散らばった13枚のカードを集める労力、カードをキャラクターに戻せば出費の多さも単純計算で13倍になるわけで・・正直メリットよりもデメリットの方が大きい。

元々が『ドラゴン・ファンタジー』と言うゲームは、職業の多種多様性が売りのゲームだったので、職業取得が1つのステータスのようなものだったので、シャレの1つとして持っているパターンの職業だった。

そういう俺も職業集めの中で取得だけした覚えがある。

ただし、カードをキャラクター化はさせなかったが・・。

まぁ、NPCとの疑似恋愛と言うのに興味がなかっただけなのだが・・。


「それにしてもカードを元の姿に戻すだけの能力しかない『召喚術士』にそんな隠された秘密があったとはなぁ・・」


どちらにせよ、戦闘的な能力ではない。

ある意味チート職業ではあると言えよう。

もっとも、カードを探す手間はかかるのだが・・。


「また、目的が増えたってことか・・」


単なるカード集めという目的以上に俺は全職業取得に挑戦することを心に誓うのだった。

次回から本格的な物語が進行します。

長らくお待たせしましたことを陳謝します。

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