住人を増やそう
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う~む。奴隷と言うからみすぼらしい格好をさせられていると思い込んでいたが、普通の服で顔も生気がちゃんとある。
どうやら、俺の思っていた奴隷とは明らかに違う。人としての状態を保っていたのは素直に関心と安心をした。
「色んな種族がいますね」
「はい。力仕事から鉱石採取に長けた者や仮の得意なモノにモンスターと戦える者、細かな作業に元経営者など色とりどりに用意させてもらいました」
「面接をしても?」
「もちろんでございます」
「では、早速…」
簡単な質問をしながら俺は『鑑定』を使って『本性』を確認していく。結果から言うと変な思想や宗教を崇拝するような人物はいなかった。全員、ちゃんとした仕事について身分を買い取ることを目標にするような堅実な考えの持ち主ばかりだった。
その上、何かしらの『特技』を持っている者ばかりで嬉しい限りだった。
「…すべてで20家族…10家族多いようですがよろしいので?」
「まあ、嬉しい誤算ってことで…あと、3ヶ月後に80家族を頼みたい」
「…これはこれは大きな取引ですね。何か条件はございますか?」
「そうだな…。種族は問わないから仕事経験者を優先で。あとは身分を買い取っても残ってくれそうな者ならなお良い…こんなところだ」
「お受けたまわりました。これからも輪が店をご贔屓に」
「うん。頼むね」
当初の倍の家族を買うことになり、おれは急ぎ移動の魔法陣で連れて帰ることにする。
とりあえず、あと10軒の家を造る必要がある。だいたいの一家族が4~5人家族なので、全部2階建ての木造建築で作っていく。必要な家具は後回しにさせてもらった。
「おーい。ルーク君」
「…イザベラ?なんで君付け?」
「いや…シーラと同じだとちょっとね…」
「まあいい。で、どうしたの?」
シーラと張り合うのはいつものことなのでスルーすることにした。
「ついに完成した。『魔導トイレ』だ。ルーク君の設計したものを参考にワタシが造り上げた最高傑作だよ」
「動力は青の魔法石の欠片?」
「いや、茶色の魔法石をそのまま組み込んである。100年は可動可能の代物だよ」
「おおっ。それはスゴイ」
「とりあえず、50個ほど作ったから設置を頼むよ」
「了解」
魔導トイレの形は、座る便座タイプだ。どうやら水洗ではなく、出したモノを大地に還ると言うモノにしたらしい。つまり、出したモノはそく肥料になると言うわけだ。どんな構造なのかは難しくて分からないが、自然に優しいので無問題。
とりあえず、魔導トイレを設置しながら使い方を教える。ヤベェ…2時間もかかった。急いで王国に戻らないとエリリンが。
「ごめん。待たせちゃったか?」
「いえ~。各ギルドに設置要請をしたのですが~申し込みに手間取りまして~今終わったところです~」
「ご苦労様。設置はいつごろになりそう?」
「書類審査や~人員の確保などで~3ヶ月はかかると言ってました~」
「そっか~…まあ、こればっかりは仕方ないか」
「それで~この後はどうします~」
「とりあえず、住民のために服を買うのと食料もいるなぁ、武器や防具に農具。家畜なんかも買わないとね」
最低でも1人3着は服を買わないといけない。食料に関しては肉は問題ないほどあるからいいけど野菜や調味料などは買わなくてはいけない。とにかく、気が付いたら買う…で行くしかないか。
服屋に着くと悠長に選んでいる暇はないので片っ端から買っていく。5軒はしごして500着を確保した。その上で生地や針に糸も買っていく。武器や防具に農具も買えるだけ買い、後は注文しておく。
食料はまず個人商店何軒かで爆買いし、その後で大きい店でも買っていく。で、家畜のことも交渉して3日後に揃えてもらえることになった。
「エリリン。ブレアドの町に行くよ」
「はいです~」
ブレアドに向かったのには理由がある。1つはアルド商会で調味料や香辛料の買い付けだ。もう1つはアルド商会の支店を俺の村に置いてもらうお願いだ。
「…支店ね~…ヴェル。アンタ、やってみるかい?」
「――え!?僕ですか?」
「お前もそろそろ独り立ちしても良いだろう。ただし、店の経営は楽じゃない。うちのモットーも忘れるな」
「…分かりました。『目先の儲けより人との繋がり』ですよね。僕、頑張ります」
「…じゃあ、ヴェルに餞別だ。ヤロウ共!」
「「アイサ―!」」
樽・樽・樽・箱・箱・箱が次々に摘みあがっていく。そして荷馬車。それにしてもあっさり快諾が貰えたのは嬉し誤算だ。
「ヴェル。アルドの名を頼むよ」
「…アルドの名に恥じぬよう頑張ります!」
「ルークの旦那。ヴェルを…」
「彼のことは任せくれ」
荷物は俺が『無限鞄』にしまい、荷馬車ごと『移動の魔法陣』で村の入り口に出る。この『移動の魔法陣』はレベルが上がったことで『特定人物も自由に使える』というものになった。俺が認めた人なら自由に魔法陣で移動できる。今のところは俺の仲間限定ではあるが、アルド商会のメンバーも入れてもと考えている。
「…まだ何もないんですね?」
「ここに初めての店を建てようと思うんだけど…君の意見が欲しい」
「僕が決めて良いんですか?」
「もちろんだよ。一応店員になってくれそうな人たちも確保してある」
「何人ほどいますか?」
「そうですね。6人だね」
「じゃあ、ブレアドのアルド商会と同じ規模が良いですね」
「んー…じゃあ!こんな感じかな?」
造形呪文で形を作る。内装もヴェルと会話を交わしながら作っていく。荷物を『無限鞄』から出して、俺は店員になれそうな人たちを呼びに行く。集まったのは俺が言った通り6人。早速、ヴェルはその6人に指示を出して商品を並べていく。並べるのはこの村では採れないような珍しい商品を置いていった。
「しばらくは物々交換で商売をしたいと思います。ギルドや他のお店が建ち、お金の流通が出来るまではですが…」
「それまでの給金は俺が責任をもって払いますので安心してください。もちろん、店長の分もね」
「よろしいのですか?」
「軌道に乗るまではそうするのが領主の務めだろう」
5年間の徴収税が免除されているとはいえ、住人達にお金を流通させるには元手がいる。タダでやるのはよろしくないので、それぞれに合った仕事をこなしたら報酬として払うと言う形で仕事をする喜びを知ってもらおうということだ。
アルド商会・ロイレン支店をヴェルに任せて住宅街に行く。後回しにしていた家具を作って設置するためだ。俺が家具の設置している間にエリリンに『無限鞄』を渡し、服を配ってもらうことにした。いや、配ると言うのは適切じゃない。服を出した瞬間から奪い合いになった。主婦パワー恐るべしである。
「慌て作業になり挨拶が遅れました。俺がこのロイレンの村の領主のルークです。皆さんにはこの村を発展させ町に昇格させるために頑張ってもらいます。それぞれの得意分野を生かして生活の糧にしてもらいますのでよろしくお願いします」
「がんばります」
「発展のためにか…遣り甲斐があるねぇ」
「早いとこ稼いで身分を買い戻すぞ」
「「おおうっ!」」
空が茜色に染まり、アンリエッタたちが帰ってくる。こちらの騒ぎに気づき何事かと思ったようだ。
「新し住人ですか?それにしては数が多いような…」
「見るんや。家の数が増えとるえ」
「かなり良い奴隷が揃っていてね。10家族ほど追加で買ったんだよ」
「では、できるだけ早く森の整理をしてしまわないといけませんね」
「頼むよ」
そんな会話をしていると、村長が新しい住人を見て言った。
「新しい住人を祝って宴だー!」
「「おおうっ」」
…本当、お祭り好きだなぁ。
でも、こういうところがこの村の良いところでもある。
さあ、明日から頑張るために今日は大いに飲んで食べよう。




