土魔法で家を建てる
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仮の領主の館ができたその日、村長がやってきた。村のこれからを話し合うためだが…何か様子がおかしい。
アレ…見知った人たちも集まってきた?(村人たちは全員見知った人だが)
「みんなでどうしましたか?」
「いや…1日にしてこんな立派な建物ができれば誰でも見にくるだろう」
「まあ…魔法で作ったんで時間かからなかったんですけどね。でも、ちゃんとした家ができるまでの仮の家なんで…」
「仮でこの出来…凄いのう」
「羨ましいわ~」
「中を見て良いかい?」
「どうぞ。出来上がったばかりなので中は簡素な出来ですよ」
そう言った途端村人たちが家に殺到した。
どうした?みんな。なんか殺気立ってないか?
「無理もないさ…」
「え?」
「この村は小規模なうえ、みんな平屋暮らしだぞ。」しかも、家は補修はしているがいつ壊れてもおかしくない。そこにこんな立派な家が1日で建ったらなぁ…」
「あー…確かに」
これは苦笑いするしかないなぁ。
さて、それはさておき俺は尊重を呼んで村の開拓の方向を話し合うことにした。
ロイレンの村。人口は86人。農業と酪農に森の恵みで暮らす普通の村よりも格段に落ちる『集落』の様なとこだ。なので当然だが、貨幣は使わない物々交換が普通だし、お店と言うモノが存在しない。その日の暮らしで精一杯…それがロイレンの村なのだ。
ここが開拓村に選ばれたのはリフレインの大森林とバレスト湖にある。ここは国境の近くであるにもかかわらず人が住んでいないことでいつ攻められてもおかしくない状況だった。そこで村を作ることで抑止翼にしたわけだ。もっとも、この100年攻められたことは1度も無い。と言うか同盟が結ばれたので村は意味を無くしたのだ。で、放置となったわけだ。
リフレインの大森林は北東に大きく広がる。北西にバレスト湖があり、森の南寄りにロイレンの村があるわけだ。
まずは、村を町の規模にするためには森を切り崩す必要がある。だが、やり過ぎれば森が死んでしまう。今は村と街道までは歩きで1日かかる距離がある。なので村から半日分まで森を切り崩すつもりだ。これで、バレスト湖まではくっきり森がなくなる。北西側の森は十分以上に木々が残る。で、逆に南の街道へは半日の距離で出られるわけだ。
「なるほど…確かにここまでなら大丈夫か」
「あとは、木々を間引きして日差しを入りやすくする必要もあるな」
「それは何え?」
「木々が隙間なくあると光合成ができなくなって森の恵みも育ちにくくなるんだ。だから適度に木を刈って光を入れることで森が活性化するんだよ」
「主は博識ですね」
「まあ、このくらいはね。あとは南側一帯を農地と家畜場にしようと思う。やっぱり、太陽が十分に浴びれる場所が良いからね」
「村人の住む場所はどうする?」
「住宅街と商店街の配置は…」
「宿泊街もいるなぁ…」
「出来ればギルドの設置もできるようにしたいですね」
あれこれと話し合いながら、まず、村役場兼診療所を村の中心に作ることを決める。
村長の家は領主の館(小高い草原の方)と村役場の間に作ることになる。
「中央は商店街関係を西に宿屋街を置き、攫い西のバレスト湖に高級リゾート施設。東に住宅街北側に公共施設を作るつもりだ。村の入り口に近い場所に各ギルド施設を配置すればどうでしょう?」
「なるほど…」
千里眼と鑑定、分析で村の詳細な地図があるので中心の場所をある程度整地する。地図を作って分かったのだが、村の作りは雑になっていて中心部分は小さな空き家…と言うより廃屋と化していたので、まずは地面に道と建物の境界線を付ける。鑑定と分析で完璧に分けられるのは良いなぁ。
村役場兼診療所は木造平屋建てだ。壁は木造に見せかけて木の間に『断熱材』となるグラスウールを使っている。、ガラス繊維でできた、綿状の素材であるのでちょっとした知識とこの世界の素材で作れるから材質変換呪文でちょちょいと言うわけだ。
「しかし…広いなぁ…」
「60畳はある畳部屋だからね。隣の部屋が診療所。できれば治療できる人が4人はいてほしいね。裏に入院施設も作ろう」
「この中央の穴は何だ?」
「そこに火を起こして暖を取るんだ。破損した『赤の魔宝石』を石と一緒に置くと熱を生み出すんだ」
これは、この世界での『魔宝石オーブン』の応用である。魔宝石オーブンは破損した魔宝石を石窯に入れると反応して熱を発する。入れる大きさ、欠片の数で熱の温度と時間を調節できると言うわけだ。しかも、破損した魔石はクズ同然の値段で売られる。まあ、鉱石の掘れるところでなら魔宝石の欠片は小石並みに落ちているのでタダ同然で手に入ると言うわけだ。
入院所を作り終えて、村長宅を新たに作る。イザベラの持つ『魔道具』の能力で作った『無限鞄』に村長の家の家具を詰め込んでお引っ越しと言うことだ。
村長の新しい家は木造2階建てにした。と言っても、地球一般では結構な広さのお屋敷と呼べるほどだ。ついでに、蔵に庭付きで檜風呂も完備している。村長の家族全員、大喜びだった。
MPはまだまだ余裕はあるが、みんなの家を作り直すには時間的に厳しいので明日以降と言うこにさせてもらう。
村の大移動(お引っ越し)には4日かかった。みんな、木造2階建てをご所望だった。一応、10軒ほど空き家も作っておいた。
「とにかく…人手が足りない。そこで、合法奴隷を大量に買おうと思う」
「まあ、それしかないか…」
合法奴隷…犯罪を犯した犯罪奴隷と違い、税が支払えなかったりして身売りすることを合法奴隷と呼ばれている。買い手には奴隷を不当に扱うことはできず、ちゃんとした生活をさせることが義務付けられている。 また、定められた金額を支払えば奴隷としての立場を買い取ることができて自由の身になれる。
村から町にするには人口の少なさは致命傷だ。その上村人たちは農業や酪農、狩人くらいしかできないので商売人の確保は急務と言えた。
「アンリエッタ、シーラ、イザベラは森の伐採の方を指揮してくれ」
「お任せください」
「ウチにまかてや」
「仕方ないわね」
「エリリンは俺と王国に行くよ」
「はいです~」
「レムは…?」
「お留守番を頼むよ。エリンとエルクと一緒に行動していてくれ」
「…分かったの」
今回は神の交渉術が物を言う機会が多いはず。なので、エリリンは必要不可欠なのだ。能力共有で俺も使えるけど、人海戦術。分かれてそれぞれに購入していく必要があったのだ。
レムは、年頃が同じでありながら天才ブラザーズに任せるのが1番だと判断したのだ。
「早速、行ってくるよ」
「行ってくるです~」
仮の領主の館の地下に設置した『移動の魔法陣』で王国に行く。
エリリンにはまず各ギルドに施設設置の交渉に行ってもらう。
俺はもちろん『奴隷商』の店だ。
「初めてお方ですかな?」
「あ、はい。合法奴隷を大量に買いたいのですが…」
「ふむ。数は…?」
「とりあえず、10家族分を…」
「それは大変なお買い物で。では、すぐに集めてまいります」
初めはカウンター席しかないようなところで話していたが、俺の言葉で応接室に通された。多分、購入条件で通されるな所が違うのだろう。
つまり俺は彼らにとって儲けさせてくれる富豪に映ったのかもしれない。
「ご用意が出来ました。ご自分で決められますか?」
「そうさせてもらおう」
俺の鑑定をかいくぐることはできない。信じているが一応のことを考えて不当な考えの持ち主は辞退させたいのだ。
「では、こちらに…」
「頼む」
ついに初めての奴隷買い。ちょっとだけ罪悪感を感じるのだった。