アルド商会を救え!④黒幕
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「なるほど…倉庫街か」
スラム街を抜けた先いあったのは、建ち並ぶ倉庫群であった。
ここなら荷物をいったん隠すのにちょうど良い場所である。
ある一角で番頭が立ち止まる。どうやらここがアジトらしい。
「ご苦労だったな、ジンバ。早く荷物を運び入れてくれ」
「ルッソ様…」
「どうした?早くせんか」
「確認取れたな。シーラ」
「ルッソ、お主を拘束するえ」
「―――なっ!?」
シーラが一瞬でルッソの背後を取り、縛り上げる。
「さて、ルッソさん。アンタの背後にいる人物を教えてもらえるかな?」
「フン。知っていても誰が教えるか!」
「じゃあ、手っ取り早く『呪い』をかけさせてもらうよ」
「の…呪い?」
「嘘や黙っていると『死ぬ呪い』をかけさせてもらう」
「や、止めろっ!」
俺は何の躊躇いもなく呪いをかける。
時間が惜しいと言うのもあるが、黒幕を追い詰める『ピース』を手に入れるためには時間をどれだけ短縮できるかが『カギ』なのだ。
『主よ。聞こえているか?』
『ああ…。状況はどうだい?アンリエッタ』
『やはり、主が睨んだように、一筋縄ではいかない相手のようだ』
『じゃあ、『プランB』に計画を移行。譲渡指定…『鑑定』をルークからアンリエッタへ』
『譲渡指定』も召喚術士の『真の能力の1つ』である。
ルークの持つ『能力』を一時的に指定した相手に貸し与える能力だ。
アンリエッタは謁見の間を覗き込み『鑑定』を使う。
謁見の間にいる人物を全て確認すると、明らかにおかしい人物がいた。
『…主よ。見つけたぞ…名前は『ダグスマン侯爵』だ』
『詳細を頼む…』
『ダグスマン侯爵…二重人格者。普段は知略に跳んだ青年実業家だが、隠れた顔を持つ。表の人格はそれを知らない。裏人格は残忍で狡猾。名を『シャドウ』と名乗りマスクで顔を隠して暗躍する。王国を混乱に導くのを心から楽しんでいる。王国内のダグスマン侯爵の執務室に隠し金庫があり、その中に『暗躍リスト』がある。…と、言うことです』
『やっぱり、『二重人格者』だったか…』
国王や宰相、他の侯爵の目を欺けることができ、尚且つ『陰謀』をやってのけられるとすれば『知られていない何者』かがいるのでは?とルークは考えた。
何故その仮説に至ったのか?それは、『存在』があまりにも『知られていない』と言う点だ。
どんなに上手く存在を隠そうとしても、相手がいる異常その素性を知りたいと情報を集めようとする。
なぜなら、誰でも裏切られる可能性を感じているからだ。だからこそ、相手の素性を握れば『万が一』の時の『切り札』として使えるわけだ。
なのに、誰も『黒幕』の素性を知らない。それどころか『予想』すらできていないのだ。
会っていれば、顔を隠していても『もしかしたら…』と言う風に感じるものだ。
しかし、それすら無いとなれば…これは異常なことと言えるのだ。
だからこそ、ルークはシーラに頼んで『黒幕の情報』を聞き出させたのだ。
その結果として『何も得られなかった』と言う『情報を得た』のだ。
あまりにも『完璧な情報隠し』に異常を感じたルークは王国に荷物を運び入れるときに、アンリエッタとシーラにこのことを話し、『プランB』として新たな作戦を立てていたのだ。
『アンリエッタ、ダグスマン侯爵の執務室で証拠の確保を頼む。こちらはアルベルト侯爵たちと合流して城内の包囲に入る』
『お任せください』
連絡をいったん断ち、ルークはアルベルト侯爵との合流を待つ。こちらの位置は分かっているのであと数分もすれば現れるだろう。
その時間を使ってルッソから情報を得る。やはり、ルッソはマスクのシャドウと認識はあるもののその正体には気づいていなかった。
その代り、ルッソはトバ-ルが仲間であることや他にも協力者がいることは把握していた。
これは良い土産ができたな。
「待たせたな、ルーク殿」
「いえ、良いタイミングですよ、アルベルト侯爵」
「そうか…。皆の者、全員を捕縛せよ!」
「「ハッ!!」」
ルッソを含む、盗賊や番頭たちが捕らえられる。
俺とシーラはいつもの姿に戻り、ルッソから得た情報をアルベルト侯爵に伝える。
「まさか…『貴族』にまで裏切り者がいたとは…」
「時間がありません。ここは手分けして捕縛に向かいましょう」
「そうだな。君たちはどうする?」
「ルッソ商会に行って『証拠』を見つけ次第、城に向かいます」
「分かった。では、1班は私とこの物を連れて城に向かう。2班はクスト家、3班はリベルト家、4班はドルマ家、5班はバストーナ家を全て捕縛次第城に」
「「ハッ!」」
それぞれ指定の場所へと向かう。
俺は、ルッソから聞き出した情報を基にルッソ商会のルッソの書斎にある隠し金庫の下へと急ぐ。
なぜ、これほど急いでいるのかと言うと、追い詰められた『ダグスマン侯爵の中にいるもう1つの人格』が目覚める前に包囲しなければならなかったからだ。
多分だが、俺の予想では『シャドウ』の実力はアルベルトに匹敵するほどだろう。
そうなれば、謁見の間でシャドウと戦えるのはベッケン侯爵だけだろう。しかしそれは、シャドウが『奥の手』を持っていなければ…だ。
だが、十中八九シャドウはその『奥の手』を隠し持っているはずだ。
だからこそ、相手に悟られずに追い詰める状況にしなければならないのだ。
「…どうやら、すでに包囲が完了しているみたいだね?」
「アルベルト侯爵、なかなかできる男のようやわ」
「そうだね」
10人ほどの騎士たちがルッソ商会を包囲し、店の従業員たちは店先に集められていた。
「ご苦労様です」
俺とシーラは冒険者カードを提示しながら声をかける。
それを見て、敬礼する騎士の1人。
「ルーク殿とシーラ殿ですね?店の者は全員外に出してあります」
「ありがとうございます。時間がないので証拠を取りに行きましょう」
「了解です」
早速店に入り、ルッソの書斎に入る。
本棚にある本の1冊を引くと、本棚自体がスライドするように動き出した。
「これは…何という仕掛けだ」
「この奥に証拠の品々があります。全て押収して城に向かいましょう」
「了解です。みんな、テキパキ運ぶぞ」
「「おうっ」」
本棚の奥の通路を通っていくと途中で地下に続いていき、辿り着いた先には広々とした部屋。
その中には、金品から美術品や骨董品が山のように置いてある。
俺はそれらには目もくれず、書類を手にした。
「…これで、証拠は揃った。後はアンリエッタの方だな」
ここにある書類はあくまでもルッソやルッソが集めた仲間の情報だけにすぎない。
『黒幕・シャドウ』が関与した事実はないのだ。
つまり、シャドウ側からの証拠を掴まない限りシャドウを捕らえることはできないのだ。
「…方法はあるか」
正直、ダグスマン侯爵自体には何の関係もない。
ただ、1つの身体に2つの人格があったと言うことだけ。
だからこそ、俺は考えていた。
『シャドウだけ』を『捕らえる方法』を…。
そして、1つの『答え』に辿り着いた。
「シーラ、頼みたいことがある…」
俺は『最後の賭け』に出ることにした。
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「国王様、ただ今アルベルト侯爵から報告が届きました」
「そうか。では、報告を…」
「荷物の行き先はルッソ商会が所有する倉庫に運ばれていました。また、アルド商会はこの件には無関係であることが判明しました」
「ふむ…。では、全てはルッソ商会によるものであったと?」
「黒幕は別にいるようですが…」
そう言ってチラリと侯爵たちを見る側近。
だが、侯爵たちの表情は変わらない。
ルークはあえて、『プランB』のことを国王たちには内緒にしていた。
これは『敵を欺くにはまず味方から』と言うことで、ルークは『シャドウ』への目くらましに『国王たち』を使ったのだ。
「では、アルベルト侯爵たちが戻るのを待つとしましょう」
その宰相の言葉とともに、謁見の間は静まりあえるのであった。
『黒幕・シャドウ』包囲網が確実に出来上がりつつある。
最終幕引きまで残すところ数時間と迫っていた。