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異世界なう―No freedom,not a human―  作者: 逢神天景
第十四章 魔の地帯なう
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324話 豪華な助っ人なう

「……失礼します。遅くなりまして」


「大丈夫、あんまり待ってないから」


 デートのスタートみたいな会話をしつつも、会議室には剣呑な空気が漂っている。

 ベガのギルド、その会議室で……俺たち『頂点超克のリベレイターズ』は、ギルドマスターであるバーレスと向き合っていた。

 相変わらずリャンは背後に立っているのだが、今日はアイネもその横に立っている。彼女曰く「座ってるとなんか落ち着かない」とのことだ。

 いわゆる事務椅子なので、尻尾があると座りづらいのだろう。


「では、失礼して」


 会議室の向かいの椅子に座る、バーレス。彼はいくらか書類を鞄から取り出して、こちらに会釈した。


「用件は理解しておられると思いますので、端的に申し上げます。――ギルドから、正式にクエストの撤回申し立てを行います」


 緊張した面持ちのバーレス。俺は苦笑して、彼の目を見た。


「クエストの撤回申し立てなんて、私が働いていた時に一度も見たことないですよ」


 マリルはそう言って、少し不安そうに俺の顔を伺う。俺はゆっくりと背もたれに体重を預けると、ドアの向こうに視線をやった。

 クエストの撤回申し立てなんて、俺は昨日バーレスに言われるまで知らなかった。一応、AG手帳に書いてあるそうだけど、そこまで目を通して無いからね。

 クエストというのは……基本的に、を出した本人が取り消すか、ギルド側がクエストを無効にしない限り無くなることはない。

 しかし、ギルド側がクエストを無効にするためには様々な理由付けが必要になる。何せ、最初に『このクエストは問題ない』とお墨付きを与えたのはほかならぬギルドだ。

 ランクに見合った難易度で、陰謀など無いと判断したからクエストとして出されているのだ。それを引っ込めて取り消すのは容易じゃない。

 具体的には『依頼人の虚偽申告』や、『依頼のロンダリング』 など根本的にクエストの精査に関わる部分に不備があった場合などだ。


「だからギルドは取り消せない、メンツに関わるからね。公式的には、出した側が撤回したって形にしないといけない。それがクエストの撤回申し立て。――まぁ、信頼に関わる部分だもんね。いいよ、撤回する」


 俺の答えに、ほーっと長い息を吐くバーレス。額ににじんだ汗を拭うと、深々と頭を下げてきた。


「ありがとうございます。……念のために申し上げますが、ギルドがキョースケさんのことを疑っているから申し立てを行っているわけではありません」


 本気で恐怖していたのか、心からホッとしているようだ。怖がらせるのもどうかと思い、俺は努めて優しい声で話しかける。


「分かってるよ。もしそうだったら、そこにいるのはタローだろうし」


 そう言って扉の向こうを見ると、彼も苦笑しながらそちらに視線をやった。


「本人たちも隠す気はないでしょうしね。一応、体裁として私だけで入りましたが……その後の話は、お二人を招いて行うつもりでした。お呼びしてもよろしいですか?」


 俺達に確認を取ってくるのでこくんと頷くと、バーレスが「どうぞ」と扉の向こうに声をかける。すると、ノックもせずに勢いよく扉が開いた。


「ってわけだ。久々だなキョースケ! また女が増えてるのか! 女ったらしだな、タローに並ぶぜ!」


「ぽっやぽっやぽっや。一週間と少しぶりでおじゃるな、キョースケどの。そしてセブン、タローと比べるなんてキョースケどのが可愛そうでおじゃるよ」


 豪快に笑いながら入ってきたのは、SランクAG『巨体』のセブン。その後ろで呆れているのは、先日もあったSランク魔法師、『轟音』のエースだ。

 セブンはバーレスの隣に座り、エースは何故かお盆の上に乗せてお茶を持ってきている。


「粗茶でおじゃる」


「ちょっ、エースさん! そういうのはうちの職員がやりますから!」


「ぽやぽやぽや、こんなもんやれる人がやればいいんでおじゃるよ」


 鷹揚に笑うエース。俺達の前にも置かれるので、軽くお礼を言っておく。


「ありがと、エース。それじゃせっかくだし、お茶請けでも出そうか」


「饅頭とか、あったよな。ちょっと京助、取ってくるぞ」


「わー! いいです、いいですから! お茶菓子ですね、ちょっと待っててください!」


 バタバタと立ち上がって部屋から出ていくバーレス。以前……ダンジョンをクリアした時はもっとクールな印象だったのに、キャラが変わったね。

 ……いや、SランクAG三人に囲まれたら誰だってああなるだろうか。


「久しぶりだね、セブン。ジャックとの天覧試合以来かな?」


「おう、だいぶ力を付けたみてーだな、キョースケ。がっはっは! これ終わったら修練上でちょっとやり合おうぜ!」


「やめとくでおじゃるよ、セブン。またバーレスどのの心労が増えるでおじゃる。さっきも廊下の灯りに頭をぶつけて、壊したばかりでおじゃろう」


 しれっと言うエース。彼がそう言い終えるか否かくらいのところで廊下から「ああ! 大金貨十五枚もする灯りの魔道具が!」という焦った声が聞こえてくる。


「後で弁償しとくから良いんだよ!」


「だからって壊して良いわけじゃないでおじゃる。もっと小さくなるでおじゃるよ」


 嘆息するエース。セブンは俺より八十センチくらい背が高い……まぁそりゃ、普通の人間生活は送れないよね。

 俺が変な表情していると、後ろからリャンがこっそりと耳打ちしてきた。


「(獣人族の中には、死ぬまで成長し続ける種族がいます。もしかすると、彼にはその血筋が混じっているのかもしれません)」


 なるほど、そんな種族がいるのか。

 こっちの世界じゃ体格差なんて『職』や鍛錬、魔法で簡単にひっくり返るけれど、それでもやはりデカい奴はパワーがある。どれだけバフをかけたとしても、素の数値が高い方がバフをかけた後の数値も高くなるからね。


「お待たせしました。……それではお話の続きをしてもよろしいですか?」


 ちょっとだけ胃を抑えながら、部屋に入ってくるバーレス。彼に続いて、クッキーを乗せたお盆を持った女性も入って来た。

 彼女がサーブしてくれたクッキーを齧りながら、彼の話の続きを聞く。


「クエストの撤回について、承知していただきありがとうございます。その上で――改めてギルドは、『頂点超克のリベレイターズ』に調査を依頼します」


 そう言って、バーレスがこちらに書類を見せてくれる。なんとAGのトップであるジョエルから、直々に今回のクエストが出されていた。

 その書類をじっくりと見た上で……俺はバーレスに問う。


「それなら、俺達だけでいいじゃん。これでもSランクAG、Sランクチームだよ? それなのに、なんで二人をよこしたの?」


「別に某たちはギルドから命令を受けて来たわけじゃないでおじゃるよ。純粋に、某たちはキョースケどのの助けになるために来たんでおじゃる。ぽっやぽっやぽっや」


 大きい体を揺すりながら笑うエース。しかしすぐに眉根に皺を寄せると、俺の方を見た。


「乗りかかった船、というやつでおじゃるよ。某の助言で、キョースケどのは今回のクエストを出したわけでおじゃる」


「……だが、そのクエストを受けたAGが三組も帰ってこなかったんだろ? それじゃあ責任を感じてるだろうと思ってな。励ましついでにお節介しに来てやったってわけだ」


 わっはっは、と豪快に笑うセブンだが……彼の言葉に少し違和感を覚えた俺は首を傾げる。


「お節介って……いやまぁ、増援はありがたいよ? 今回、来てくれないならタローなりジャックなりに頼もうと思っていたから」


 うちのチームも強くなった。

突発的な戦いだったソードスコルパイダー戦や、他の人に隠したい事情のあったルグレ戦と違い、今回は憂いも無ければ準備も出来る。

 そのため、最初から仲間のSランカーを連れていくつもりだったけど――


「でも二人とも……後輩のために遥々来るようなタイプだっけ?」


 二人とも、面倒見が悪いかと言われたらそうじゃない。マルキムやタローから評判を聞く限り、割と兄貴肌なイメージがある。

 だけど、言われても無いのに勝手に助けに来るようなタイプでも無かったはず。あくまで自分で解決させようとするというか。

 俺の評価に、エースが苦笑いした。


「ぽやぽやぽや。手厳しいでおじゃるな。某はさっきも言った通り、ちょっと責任を感じている部分があるでおじゃる」


「しっかし、それ以上に気になることがあんだよ。つい最近、オレとエースの二人で五体くらいSランク魔物狩ってるんだけどな?」


 さらっと出される、驚愕の事実。

 二人ともSランカーなんだから、Sランク魔物を倒せても全く不思議はないけれど……そんな『最近カレーが三日連続なんだけどさ』みたいなノリで言われると驚く。


「それらの中身が、全部魔族でよ。しかも魔力の減らない魔道具まで使ってきやがるんだ」


 魔力の減らない魔道具――と聞いて、俺はすぐに頷く。王都動乱の時に魔族が使ってきた、魔道具『新造神器(ネクスト)』だ。


「そもそもSランク魔物なんて年に一体出たら多い方でおじゃる。なのに五体……もちろん、全部魔族でおじゃった」


「んな時に、腕利きのAランカーが情報を伝えることも出来ずに死ぬなんてことが起きた。……ならまぁ、犯人がどの勢力なのかくらい予想はつかぁな」


 なるほど。確かに状況が揃い過ぎている。

 俺が思った通り……魔族の罠って可能性は高いかもしれない。


「オレの知ってる魔族ってのは、直接戦ったら雑魚だが後手に回ると面倒ってイメージだった。だが、だいぶ印象が変わったぜ。今はひたすら面倒だ」


「ぽやぽやぽや、キョースケどのが既に何度も修羅場をくぐっているのは知っているでおじゃる。しかしそれでも、老婆心かとは思いつつも……来ずにはいられなかったんでおじゃる」


 セブンとエースの真剣な表情。俺達は思わず顔を見合わせる。

 Sランクの中でもベテランの二人――この二人にここまで言わせるなんて、もしかしたら思っている以上に魔族の進化は早いのかもしれない。


「というわけで……ギルドから出た調査依頼を聞きつけたお二人から連絡をいただきましたので、私はこの場に呼ばせていただいたのです」


「なるほど、ありがとうバーレス。むしろこっちからお願いしたいくらいだしね。――皆も、大丈夫?」


 チームメイトに声をかけると、全員異論はないようでこくんと頷く。それにしても、二人増えるとなるとかなり大所帯だね。

 アイネも連れていく予定だから、全部で……九人か。


「じゃあバーレスさん、書類的なことはお手伝いするので詳しい話を聞かせていただいても良いですか? あ、キョウ君、決まったことは後で言いますね」


「ありがとう、マリル」


「ではこちらの書類に……」


 マリルとバーレスがそう言いながら端に寄るので、俺たちも逆側によって作戦会議を始める。


「改めて、お互いの戦闘スタイルの打ち合わせがしたいんだけど」


「んなもん、いるか? オレが前衛で殴るから、皆支援してくれってだけだぜ?」


 死ぬほど雑な説明しかしないセブン。だが、確かにそれが一番強い。肉体の大きさを変える能力を持っているうえに、剣士として腕も立つセブンにしか言えない芸当だろうけど。

 ……と、少し納得しかけたところでエースがセブンの腹を殴った。


「ダメでおじゃるよ、情報共有はAGの基本でおじゃる。そんな雑で足元を掬われたらどうするんでおじゃるか」


「あん? オレが足元を掬われるって? んなわけ――あー、分かったわかった! 分かったからそれを止めてくれ!」


 めんどくさそうに席に座り直すセブン。今エースは何か呟いただけにしか見えなかったけど……なんでセブンはおとなしくなったんだろうか。

 二人にしか分からない何かなのか、それとも俺が気づけていないだけか……。エースは腕を組んだセブンを見て、嘆息しながら俺達の方を見た。


「敵が一体なら、今の作戦で十分でおじゃるし……この人数でかかれば捕獲も出来るでおじゃる。でもSランクAGを罠にかけようとしているんでおじゃる、一体や二体じゃないと思った方がいいでおじゃるな」


「一体や二体じゃない……か」


 本当はさっさと契約魔法を使ってから、『トラゴエディアバレー』に行きたかったんだけどね。何というか魔族っていうのは面倒ごとしか呼び込まないよ。

 ……いや、まだ魔族と決まったわけじゃないけどさ。


「それじゃあ改めて、オレは見ての通り剣士。体の大きさを操れるぜ」


 セブンは立ち上がると、剣をいきなり出現させた。彼の身の丈よりもさらに大きい――それは剣というか、もはや鉄塊のような代物だけれど。

 アイテムボックスも無いのに、一体どこからあの大きさの剣を取り出したんだろうか。


「小難しいことは出来ねえから、補助的な技は一切ねぇ。だからタンクとして、肉壁として使ってくれ! 経験から口を挟むことはあるが、基本的にお前らの指示に従うぜ」


「いくら何でもSランカーをそんな雑に扱えないって」


「そうか? わっはっは! まぁ、オレは剣を振って敵の攻撃を受ける! ただ、タフだからな。そう簡単には倒れねえぞ」


 タフなのは見てたら分かるけども。


「ぽやぽやぽや、次は某でおじゃるな。キョースケどのも知っての通り、某は音魔法がメインでおじゃる。セブンとは逆で肉弾戦は苦手でおじゃるが、回復以外の補助は一通りできるでおじゃるよ」


 肉弾戦が苦手、と言いながらちょっと力こぶを作るエース。確かにシルエットは太っちょなんだけど、よく見ると脂肪の下にはぎっちぎちに筋肉が詰まっている。お相撲さんと似たような鍛え方か。

 ……これで肉弾戦が苦手、になるんだね。SランクAGっていうのは、相変わらず凄いよ。

 とはいえ、エースが補助に回ってくれるのは心強い。刃が通らなくなる魔法を使えたり、防御よりの魔法が多いからね。キアラの回復と合わせれば粘り強く戦えるだろう。


「じゃ、今度は俺達かな」


 と言っても、俺と冬子は会ったことがあるので他の子たちを中心に。


「ヨホホ、ワタシはリリリュリー。炎の魔法使いデス。簡単な補助とデバフ、後は最近雷の魔法を習得したデス。魔法師として基本的なことは一通り出来るので、お任せあれデス」


「リャンニーピアと申します。役割はシーフですね。ナイフ術と、体術。派手な技が無いので、小技で攪乱するのが主な戦法です。探索の際は前に出ますので、フォローをお願いします」


「ミサ・アライです。氷使いの魔法師です。えーっと、私は逆に小技よりも派手な技中心なんですけど、特に得意なのはゴーレム生成と大規模凍結です。まぁ雑魚散らしも大物も任せてください」


 ぺこりとお辞儀する美沙。そして顔をあげると、エースを見た。


「ただ、一個だけ質問してもいいですか? 質問というか、情報について聞きたいというか……」


「ぽやぽやぽや、某たちが答えられることであれば是非ともでおじゃる」


 笑顔のエースにお礼を言った美沙は、小首をかしげた。


「それでそのー、私って実はこの中で唯一Sランク魔物と戦ったこと無いんですよ。どんな感じかだけ、教えてもらえますか? 京助君から何度か聞いていますし、Sランク相当の敵を見たことはあるんですけど……戦っていない以上、いろんな人から聞いておきたくて」


 そういえば、ソードスコルパイダーとった時に彼女はいなかったっけ。

 そこまで考えたところで、俺も一つ気がかりがあったことを思い出した。


「ごめん、美沙の質問に関連して聞きたいんだけど……セブンとエースは、本物のSランク魔物と戦ったことあるわけだよね。魔族が合一したSランク魔物と純粋なSランク魔物――どっちが強いとか、あった?」


 エースは少し考える仕草をした後、頭をぼりぼりとかく。


「取り合えず、そちらのお嬢さんの質問に答えるでおじゃる。Sランク魔物は、Sランク相当の実力者たちと比べて大きいことが最大の特徴でおじゃる」


「大きい、ですか。あーまぁ、確かに怪獣って大きさイズパワー! ってところありますもんね」


「いやいや、流石にちょっとそれは雑過ぎやしないデスか?」


 納得する美沙と、ちょっと怪訝な表情になるシュリー。彼女の反応を見て、エースはぽやぽやと笑う。


「信じられないでおじゃるか?」


「い、いやそんなことは無いデスが……その……」


 手をぶんぶんと振るシュリーだけど、彼女は確かに拍子抜けな表情になっている。

 しかしエースは、楽しげに言葉を続ける。


「確かに単純でおじゃる。ただこれは頭から抜けていると、思わぬピンチを招くんでおじゃるよ。我々SランクAGやそれに準ずる実力者は、例外を除いて何らかの技や技術を用いて敵を撃滅する威力を出すでおじゃる。故に技の起こりを、某たちは見逃さない。しかし、魔物は違うでおじゃる」


 彼の言葉に思い出すのは……Sランク相当の強さがあったであろう魔物、ゴーレムドラゴン。奴の技は光球や咆哮、そして火炎など多彩だったが……俺が一番死を覚悟した瞬間は、ヤツの尾が飛んできた時だった。

 全ての攻撃が――でなく、全ての行動が一撃必殺。頭からそれが抜けると、思わぬ致命傷を受けかねない。

 口調とは裏腹な真剣な表情で言われ、美沙もごくっと生唾を飲み込む。彼女の反応を見て、エースは優しい表情になった。


「初めて戦うときは、それを忘れてはならないでおじゃる。Sランク魔物は、デカい。古来より、デカい奴は強いんでおじゃる」


 デカい奴は強い――というところで、セブンがドヤ顔と共にふんぞり返る。そりゃお前はデカくて強いだろうけども。


「――それで、キョースケどのの方でおじゃるが……」


 今度は俺の方を見るエース。セブンはその横で腕を組み、難しい顔になる。


「個体にもよるから、単純な比較は難しいな。ただ『新造神器』を使って知恵もある魔族魔物の方が、基本的には倒しづらさだけで言えば上だ」


「ぽやぽや。ただ経験則でおじゃるが、魔族魔物の方が……固有性質や身体能力などの総出力、スタミナは劣るように感じたでおじゃるな」


 王都動乱で戦った時は、新造神器を持った手練れが魔物の肉体を持っている――という形で、非常に戦いづらかった。それがSランク魔物になれば、尚のこと面倒だろう。倒しづらさだけで言えばそっちの方が上、というのは頷ける。

 ただ出力やスタミナに関しては、知らなかった。もしかすると長期戦に持ち込んだりすれば、戦闘を有利に運べるかもしれない。


「流石、セブンにエース。貴重な情報だ。俺達もそれを頭に入れて戦うよ」


「おう。それじゃ今日は準備に当てて……出発は明日にするか。山だから、それも考慮して準備しろよ」


「ん、了解。ありがとね、協力してくれて」


 素直にそう礼を言うと――セブンとエースは、獰猛な笑みを浮かべた。


「お前はなんでか知らねえが、騒動の中心にいることが多いからな」


「ぽやぽやぽや。今回こそ、騒動にいっちょ噛みしたいんでおじゃるよ」


 ――ああ、そうだった。

 Sランカーって……なんでか知らないけど、戦闘狂ばっかりなんだった。


(こいつら……)


 大義名分を得て、暴れたいだけか。

 色々と納得した俺は、苦笑して肩をすくめるのだった。

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