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異世界なう―No freedom,not a human―  作者: 逢神天景
第十一章 先へ、なう
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279話 一層? なう

前回までのあらすじ!

京助「ヨハネスに説教されたよ」

ヨハネス『オマエが情けネェカラナァ』

キアラ「やれやれ、妾のおらんところで何の話をしているんぢゃか」

京助「それでは本編をどうぞ!」

 ――時間は、少し遡る。


「ここは……一層、なのか?」


 異様なほど広い空間。周囲に地平線が広がるが、真っ白な大理石が敷き詰められているせいで方向感覚が狂う。

 というか、真っ白で何もない無限に広い空間なんて……一人で長時間いたら、たぶん発狂するんじゃなかろうか。

 冬子が階段を登ってすぐ固まってしまったからか、階下から心配そうな声が聞こえてくる。


「冬子ちゃん、大丈夫?」


「あ、ああ。ただ……皆、登って来るなら覚悟してくれ。今までの階層とはまるで違う」


 まずは美沙が階下から登ってきて、うぇっと顔をしかめる。


「何これ……気持ち悪い」


「確かにこれは凄いですね」


「ヨホホ……クラクラしますデスね」


 四方に広がる地平線に、しばし四人で呆然とする。そもそもどちらへ向かえばいいのかが分からない、というかここは一体どこなんだ。


「私たちは上へ……つまり出口を目指して進んでいたはずじゃ」


「それがそもそも間違いだったのかもしれませんね」


 ピアはそう言いながら、しゃがみ込む。魂を拳に纏い、思いっきり地面を殴りつけた。そしてめくれた大理石を持ち上げて、振りかぶった。

 ポーンとキレイな放物線を描いた大理石の破片は、そのままスゥッと消えていった。


「もしかすると、我々は地下に送られたのではなく上へ……つまり二層に降りたのではなく、登っていたのかもしれませんね」


「ああ、転移だったもんね、最初。アレで降りたつもりになってただけってことか」


「ええ。ミサ、今度は魔法を撃ってみてください。私が石を投げた方向とは逆方向に」


「おっけー」


 美沙がピアに言われ、氷弾を作って発射する。ビュン! と勢いよく飛んで行ったそれは、やはり一定の距離を行ったところでスーッと消えてしまった。


「リュー、お前も撃ってみてくれないか? じゃあ……後ろに」


「ヨホホ、どっちが前でどっちが後ろか分からないデスけど」


 苦笑したリューは、炎の弾丸を冬子たちの背後に撃ってみる。一定程度進んで、やはりスーッと消えていった。

 冬子も地面を踏みつけて、大理石を砕く。そしてめくれた大理石をリフティングの要領で蹴り上げ――


「それ!」


 ――そのまま前方に向かって蹴り飛ばす。

 今度はかなりの距離飛んで行ったが、消えることなく地面に落ちてから砕け散った。


「冬子ちゃん、足癖が悪いよ」


「お行儀が悪いですよ、トーコ」


「ヨホホ、キョースケ君の前では気を付けるんデスよ」


「戦闘中なんだから仕方がないだろう!? と、というか! 蹴り技は足癖の悪さとは無関係だ!」


「マスターもそう思ってくださるといいですね」


「あいつは脚フェチだから大丈夫だ!」


 言って、なんか違うなと思うものの……首を振り、思考を切り替える。冬子は自分が破片を蹴り飛ばした方を指さす。


「しかしこっちの方向であれば、進めそうだな」


「そうデスね……」


「なんか幻覚みたいだし、それを見破る魔法でもあればいいのにねー」


 美沙がそう言って笑うと、リューがポンと手を打った。


「ヨホホ、それなら『魔視』を使うデスよ」


 そう言って彼女は少し虚ろな目になる。遠くを見るようにして視線を動かしたリューは、苦笑いして冬子が蹴った破片がある方を指さした。


「ヨホホ、トーコちゃんの勘は良いデスね。あっちにぼんやりと、空間に浮かぶ光の『穴』みたいなものが見えるデス。恐らく、そっちが出口でしょうデスね」


 彼女曰く、『魔視』を使うと階下のような通路の輪郭が見えるらしい。


(……出口)


 その言葉を聞いて、皆ゴクリと生唾を飲み込む。ダンジョンから出られる――なんて甘い考えは捨てた方が良いだろう。

 行くしかない。


「……皆、ここで準備してから行こう。体力はどうだ?」


「問題ありません。ですが武器は少し手入れしたいですね」


「魔力も体力も平気~。ただ、少し緊張してるかな」


 美沙はそう言いながら、自身の鎧をガシャンと揺する。


「回復魔法を使える人がいないのは怖いデスねぇ。回復薬はすぐに使えるようにしておくデスよ」


 そう言って、腰に下げたポーションボックスを開くリュー。ペンケースほどの大きさで、中にはクッション材が入っている。

 ここに回復薬や傷薬を入れておけば素早く取り出せる上に、割れないのだ。


「美沙も入れておけ」


 ピアも同じことをしている中、動いていなかった美沙にそう声をかける。


「なんで? アイテムボックスから出せばいいじゃん」


「私たちが気絶した時に、回復薬が切れていたら皆が困るだろう。焼け石に水かもしれないが、一つでも皆が取り出せるところに置いておいた方がいいだろう」


「そっかー」


 納得した美沙もアイテムボックスから回復薬を取り出し、同じように仕舞う。


「さて、と」


 冬子は一度自分の髪をほどき、髪ゴムを変える。大丈夫だとは思うが、万が一戦闘中に取れたら不利になってしまう。

 美沙はおさげをほどき、お団子にしている。そっちの方が戦いやすいんだろうか。


「うん。三つ編みだとみょんみょんなるんだよね」


「髪を伸ばしているからそうなるんですよ。私くらい短くすればいいんです」


「京助がこの髪型、好きだって言ってたからそれはしない」


「明日から私もポニーテールにする!」


「ヨホホ……ミサちゃんはそのままが可愛いデスよ」


 というか、髪型が被るとキャラが被る。

 ため息をついて、美沙の頭をぽむぽむしてみる。


「私のお団子をドリブルしないで、冬子ちゃん」


「楽しくないか?」


「される側はなんか恥ずかしいの!」


 バッと美沙が離れてしまったので、冬子は自分の刀を引き抜いて武器の手入れを最後に行う。


「まぁ、Sランク並みの力があるだろうな」


「四人でどうにか出来ますかね」


「ヨホホ、どうにかするしかないデスね」


「私、Sランク魔物と戦ったこと無いんだけど、そんなに強いの?」


 そう言えば、美沙はソードスコルパイダーと戦った時はいなかったか。

 しかし塔のゴーレムドラゴンを倒した時はいただろうに。


「ああ、あれってSランクだっけ。……Sランクなの、アレ」


「どうだろうな。一撃でこちらを消し飛ばす攻撃と、無限再生に超スピード。しかし、あの時は私たちもまだまだ弱かったからな。一概に比較できないが……まあ、アレより強いのが来ると思っておいてくれ」


「はーい」


 美沙にそこまで言ったところで、武器の手入れが終わった。今の会話で、ぬるっと覚悟も決めた。


『あー、もしもしー』


「どうました、マリル」


『いやー、なんか緩いんでー。あのー、ダンジョンボスですよねー。……EXクラスのー。どうしましょう、あのー、あの、物凄く……怖い、んですけどー』


 なんだか萎れた声を出すマリル。

 ……怖い、か。


「大丈夫デス」


「そうそう。まぁ、最悪私たちがピンチになったら……京助君がどこからでも飛んできますからね」


「私たちも京助がピンチになったら駆けつけるが……あいつの心配性はもはや病気レベルだからな。ホント、あの過保護っぷりは……私たちを守る対象としてしか見てないんだろうな」


 言っててちょっと凹む。

 でも、まぁ……。


「だから、安心しておいてください。ピンチになったら逃げますから」


『うー……ちゃんと生きて帰ってくださいねー。終わったら連絡してくださいー』


 ピッ、とマリルからの通話が切れる。若干の沈黙。

 しかしここで立ち止まっているわけにもいかない。こちらは四人、進んでから決めるしかない。


(これで転移とかあったらしんどいが)


 魔法師の二人はちゃんと道が見えるようなので、彼女らに手を引かれて無限に広がるような空間を歩いていく。

 一歩一歩進んでいるはずなのに、距離感が分からない。本当に進んでいるのかどうか分からないまま、それでも二人を信じて歩いていく。


「うー……リューちゃん。めっちゃ怖いよー……」


「ヨホホ……これ、かなり気分が悪くなるというか、しんどいデスね……」


 二人ともちゃんと前を向いて歩いているが、時折フラッとバランスを崩している。かなりキツそうだ。

 しかしそれでも、彼女らの足取りに迷いはない。ついていけば大丈夫だろう。


「しんど……あ、開けた」


「ヨホ」


 どこまでも続くかと思われた空間だったが、唐突に広い場所に出た。天井は高く、広さもサッカーコートくらいある。

 そしてその真ん中には……


「アレは……なん、だ?」


 全身が粟立つ。他の皆も武器に手を置き、ど真ん中に鎮座する『カイブツ』を睨みつけた。


「なんです、か……アレ」


「ヨホホ……見たことのない、姿かたちデスねぇ」


 根っからこの世界の住人であるピアとリューは、アレが何か理解出来ていないらしい。しかし美沙と冬子は、それから目を離さず……頷き合った。


「あれは……ティラノサウルス、だよな」


「うん。でも、ティラノってあんなに大きな腕なんてあったっけ。どっちかっていうとティガ〇ックスじゃない?」


 ――ど真ん中に座っている化け物は、いわゆるティラノサウルスだった。ただしその腕は、まるでゴリラのように太くなっており、四足歩行で上体を起こしている。

 全身が水晶のように透通る何かで出来ており、よく目を凝らすとその表面は鱗のように盛り上がっていることが分かる。しかもデカい、十五メートルくらいはあるだろうか。

 ティラノサウルスにゴリラの腕――それだけでも十二分に不気味なのだが、それを更に際立たせているのがその肉体に張り付いている『骨』。

 まるで鎧のように骨が全身を覆っている。ドラゴンゾンビ……なんかが、ファンタジーだと分かりやすい例えになるだろうか。

 ゴリラアームの先には、男性の腕程はあろうかという太い爪がついている。アレを振り回されるだけで近づけないだろう。

 キラキラと光りを反射し、がらんどうの眼孔がこちらを睨む。

 身に纏い、発する圧はAランクのそれじゃない。しかしソードスコルパイダーほどでもないか。Aランクより強い、くらいに思っておこう。


「……やるぞ。目標は、スカルティラノ。消耗が激しい場合は撤退する」


 冬子がそう言いながら刀を引き抜く。ピアもナイフを構え、魔法師の二人は杖を構えた。いつも通りの戦闘態勢。しかし、目の前には京助の背中は無い。


「まぁ、王都で戦ってた時もそうだったしな」


「そうですね。皆さん、怖いですか?」


「ヨホホ、相手にとって不足無しデス。何か顔が怖いデスけど」


「ん……じゃ、あ……私、が……先制攻撃、する……ね……?」


 コテン、と首を倒した美沙。その目は明らかに焦点を結んでおらず、身に纏う魔力は戦闘時のそれ。


「前に出過ぎるなよ? 美沙」


「……努力、する」


 少し不安だが、京助が馬鹿にされるとかしない限りは暴れ出さない。取りあえず大丈夫だろう。

 冬子は一つ息を吐いてから、一歩前に出る。今、敵の攻撃を正面から受け止められるのは冬子だけだ。つまり、壁役に専念しなくてはならない。

 相手の強さに依るが……大丈夫だろうか。

 少し浮かんだ不安を、頭を振って追い出した。


「行くぞ!」


 冬子が叫ぶと同時に、全員で走り出す。するとどうだろう、スカルティラノは雄叫びを上げながら巨大化していくでは無いか。


『グオオオオオオオオオン!!!』


 ビリビリと空気が震える。大きさはさっきの倍ほど、三十メートルくらいだろうか。両腕を組んで振り上げ、勢いよく地面に振り下ろしてきた。


「チッ! 避けろ!」


 全員に叫び、その場から離脱する。グゴォォン! と尋常じゃない轟音と共に、地面が陥没した。

 巨大なクレーターが出来ると同時に、スカルティラノが冬子の方へ跳躍してくる。


「トーコ!」


「問題ない!」


 振り下ろされる爪。それを足で受け止め、蹴り返すことで自分から外へ飛ぶ。地面に叩きつけられるが――


「スコルパイダーインパクト!」


 ――地面に向かってそれを撃ち、衝撃を相殺する。

 ノーダメージとはいかなかったが、だいぶ軽減出来た。


「トーコちゃん、無事デスか!」


「なんとか!」


『グオオオオオオオオオン!』


 落下してくるスカルティラノ。冬子は横っ飛びでその爪を躱すが、衝撃波で吹き飛ばされてしまった。

 二度、三度と転がって衝撃を分散する。なんであいつは冬子ばかり狙ってきているのか。


「まぁ、いい! 『獅子魂獣』!」


 バチバチバチ! 肉体に魂を纏い、スカルティラノに突っ込んでいく。スカルティラノが潰そうとこちらに腕を振り下ろしてくるが、今度はそれを魂のエネルギーを籠めた剣で受け止める。

 ギギギギギギギイイイインッッ!

 振り上げた剣と爪が拮抗する、が……重い。当たり前だが、重い。そして何より……


「微塵も……刃が通らない!?」


 今までに無い経験。あまりに表皮が硬すぎる。今まで、どんな硬い魔物でも切り裂いてきた。刃が立たないなんてあり得なかった。

 一瞬、驚愕に体が硬直する。しかしすぐに頭を切り替えて、爪をいなしてその場から飛びのいた。


「トーコ!」


 ビュンビュンビュン!

 勢いよく糸がスカルティラノに巻き付いていく。そのままターザンのように迫ってきたピアが、冬子のことを抱きかかえてその場から離脱した。


「アレは明らかに、こちらの壁を崩すつもりで動いています!」


「ああ、前衛が少ないと思って私を狙ってるわけか……! 知恵が働くとは厄介だな!」


 冬子とピアが着地したタイミングで、スカルティラノが糸を引きちぎる。それを見たピアはやはり驚きに目を見開いた。


「マスターの全力でも引きちぎれなかった糸ですよ……!? な、何なんですかあの膂力は!」


 しかしやはり、そんなことを考えている暇は無い。グンとスカルティラノが加速し、四本足で駆けだした。ナックルウォークと言うんだったか、名前なんてどうでもいいが。


「来るぞ、ピア!」


『グオオオオオオオオオオオオガオオオオオオオオオオン!!!!』


 振り下ろされる爪。しかしそのスピードがさっきとは段違いで、ピアも冬子も回避できそうにない。

 冬子は剣を構え、ピアもナイフを構えた。


「「うおおおおおおおおおお!」」


 ガグワァァン!

 冬子もピアも、全身に魂を迸らせて爪を受け止める。押し潰そうとしてきた先ほどとは違い、すぐに左の爪が飛んできた。

 回避は出来ない――


「スコルパイダーインパクト!」


 ――ギョガッ!

 爪を受け止めると同時に、スコルパイダーインパクトを発動。弧を描く一撃が爪を一瞬だけ押し返し、その隙をついてピアが『雷刺』の転移を使ってその場から跳躍した。


「二人とも、大丈夫デスか!」


「…………凍れ。『アイシクルランス』!」


 美沙が膨大な量の氷の槍を撃ち出し、スカルティラノを押し返す。圧倒的な広さがあるせいで、彼女らの射程範囲から外れてしまっていたらしい。

 冬子は回復薬と体力回復薬を取り出し、ちゃんぽんして喉に流し込む。苦みとえぐみが同時に襲い掛かって来るが、効果は覿面だ。


「この味だけは何とかならないものかな……」


「ヨホホ、効果が高いとどうしても……」


「マスターは一番効果の高い物しか私たちに持たせませんからね」


「自分、は……テキトーに、揃え……てる、の、に……ね」


 ふふふ……と暗い笑みを浮かべる美沙。そのまま彼女は自身の魔力を高めていく。凍てつくような冷気と共に、蒼白い――まるで氷のような魔力にその身が包まれた。

 コーン……と木と木を打ち合わせたような音が鳴る。荒ぶる魔力が、彼女の姿を怪しく照らしだし――そして、一瞬で魔力の揺れが止まった。


「魔昇華」


 ギュウゥゥン!

 ブラックホールのように『力』が美沙の肉体に収束し――彼女の魔昇華が完了した。

 片角が生え、目が紅くなり、そして圧倒的な魔力を纏う。

 京助のそれと違い、荒々しい息吹は感じない。しかし、まるで地獄の底を覗き込んでいるような、そんな錯覚に襲われる。

 美沙は杖をスカルティラノに向け、呪文を唱えだした。


「『霜の力よ! 氷結者の美沙が命令する! この世の理に背き、我が身を護る氷の巨像を! サモン・ザ・ベルゲルミル』!」


 ドッ! と『力』が周囲に伝播する。スカルティラノがこちらを見つけて走り出すが、美沙は不敵な笑みを崩さない。


「ふ、ふふ……あん、な、大きいのが……走り回ると、戦いづらい」


 だから――美沙はギラン! と目に力を入れた。


「もう、一声……ッ! 『霜の力よ! 氷結者の美沙が命令する! この世の理に背き、氷の巨像に新たな力と巨躯を与えよ! ベルゲルミル・ライジング』!」


 轟!

 美沙の魔力が荒ぶる。それらがベルゲルミル――彼女の背後の氷の鬼に注ぎ込まれて行く。

 普段は足の無いベルゲルミルに巨大な足が生え、文字通り鬼のような形相で巨大化していく。普段の六倍、十八メートルほどだろうか。

 阿修羅像のように腕が生え、角は八本に。今までのように美沙を守るために背中から援護をするような存在じゃない、それだけは分かる威容だ。

 ズズン……と、地響きを立てて着地するベルゲルミル・ライジング。美沙はそれを見上げてコテン、と首を傾けた。


「あはっ……! これ……魔力、消費が激しい、んだけど……なんかぁ……ふふっ、王都動乱、以来……なぁんか、ふふっ……魔力があふれて仕方ないんだ、よね……! 行くよ、ベルライズ!」


『グオオオオオオアアアアアアアオオオオン!』


 叫んだスカルティラノが冬子を屠ろうと爪を振り下ろす。しかしベルライズが冬子とスカルティラノの間に入り、その爪を受け止めた。

 ガギィン! と耳をつんざく異音が鳴り、スカルティラノを弾き飛ばす。取りあえず態勢を立て直すことには成功したようだ。

 ホッと一息をつき、美沙の方を向く。


「美沙! その魔法を使ってる間、自分の魔法は使えるか?」


「……? 別、に……? 普通、に……使える、よ……?」


「じゃあリューと一緒に援護を頼む! ピア、私たちはベルライズが抑えてくれている間にこいつの弱点を探るぞ! 何せ硬い!」


「分かりました!」


 何らかの弱点を見破らないと、攻撃が通らない。当たり前だが、攻撃が通らないと相手を倒せない。


「援護は任せるデスよ!」


 地味ではあるが、リューの魔法がスカルティラノの目を焼く。視界が塞がれたからか、スカルティラノはその場でブンブンと爪を振り下ろしている。

 ニッと冬子は笑い、スカルティラノを睨みつける。ピアと共に身を低くして、武器を構えた。


「行くぞ、スカルティラノ」


「貴方を――」


「――ワタシたちの経験値にするデス!」


「……あ、そういうの、あるんだ」


 ドッ! と地面を蹴る。

 キメ台詞を言うと、気合が入るものだ。

マリル「あー……これ本当に私の出番無さそうですねー。久しぶりに色々誰か呼んで語っちゃいましょうかねー」

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