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異世界なう―No freedom,not a human―  作者: 逢神天景
第十一章 先へ、なう
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269話 罪には罰をなう

前回までのあらすじ!

京助「パインのお父さんことグレイプは、なんけ変なおじさんだったよ」

冬子「また濃いキャラが出て来たな……」

美沙「話しが通じる風で裏では……みたいな見た目してるけどね」

リャン「その場合は後ろから刺します」

マリル「物騒ですねー」

キアラ「まあ、逆らえばどうなるかくらいわかっておるぢゃろう」

シュリー「ヨホホ、それでは本編をどうぞデス」

「まず一つ目。……獣人族が嫌いなんでしょ? すぐにでも宣戦布告をすべき、獣人族奴隷は皆殺し……そう主張してるって聞いたよ」


 俺が問うと、グレイプはニッコリと笑う。


「その通りだ。……私には妻が二人いた。そしてその一人は亜人族に殺されたよ。パインの母だ」


 ……なるほど、パインの剣幕はそれで。


「無論、私が嫌いなのは亜人族だけではなく魔族もだ。父を殺されているからね」


 何でそんなにピンポイントで狙われてるんだ――と一瞬思ったが、彼は警察機構、行政のトップにいる一人だ。狙われる理由なんて掃いて捨てるほどあるだろう。


「だというのに、あんたが亜人族の捕虜や奴隷は本国に送還しているって聞いてる。なんで?」


「当然だ。私は魔族も亜人族も憎んでいる。ああ、憎んでいる。だが、罪を犯していない者を裁くのはアンフェアだ」


 てっきり存在が罪とか言うんだとばかり思っていた俺は、今日何度目か分からない驚きで目を見開く。


「罪には罰を。しかしその罰はちゃんとルールにのっとったものでなくてはならない。感情のまま私刑を与えるのは犯罪者と何ら変わるまい?」


「……でも、あんたのように立場のある人間がそう言っていたら、同じ思想にいる人間は殺して良いと思っちゃうんじゃない?」


「その通り。私は他種族排斥派の筆頭。過激派に位置している。だからこそ、感情ではなく理性によって裁いている姿を同じ派閥の人間に見せることで、人間には理性があるということを示し続けている」


 ……理性があったら過激派じゃないだろ。

 俺が微妙な表情になったからか、グレイプは少し笑った。


「はは、確かに私は一般的な過激派とは違うな。だが、彼らが最後の一線を越えないためにも私は過激派を名乗り……その上で、ルールに則って動かなければならない」


 葉巻の灰を落とし、笑みを消すグレイプ。


「何族だろうが、殺害すれば罪だ。それには罰を与えねばならない。……過激派に位置する人間の殆どは他種族によって理不尽に大切な人の命を奪われている、いわば被害者だ。だというのに、憎悪と激情に任せて他種族の連中を殺害してしまえば――私は彼らをルールに則って、裁かねばならない」


 真剣なまなざしと、強い口調。覚悟と意志が同時に感じられる。


「大事な者を奪われた彼らが、今度は犯罪者になる――奪われ続けるわけだ。アンフェアだと思わないかね?」


 アンフェア、罪には罰。

 なるほど、こいつの行動指針が見えてきた。とどのつまり――


「絶対的な理性主義者?」


「変な言い回しだな。素直に頭が固いと言ってくれて構わないよ」


 リンカーンみたいな髭を撫でまわし、葉巻を吹かすグレイプ。


「しかし理性主義者か。初めて言われたな。いつも言われたのは――まるで魔道具だ、くらいかな。ルールという魔力を流したら、機能通りの動きを返す。そんな、道具のようだと」


 俺達の世界で言うなら、機械みたいだって話か。


「亜人族も魔族も、人族の国にいるならただの不法滞在だ。……大昔、まだこの国が一つになっていなかった頃の法だがね。それによれば、ただ国に送り返す。それがルールなのだと」


 この国が一つになって無かったころ?

 その言葉にちょっと引っかかりを覚えるが、今は関係無いため聞かないでおく。

 グレイプの発言を受け止め、俺は口を開く。


「ルール通り、か。じゃあルールが変わったら?」


「変わったルールの通り動くさ。……もっとも、あのハイドロジェン家が立法の分野で今のような強権を持っている限り、理不尽なルールは敷かれないと思っているがね」


 ああ、そういえばオルランドのところって立法の家なんだっけ。その意識しなさ過ぎてすっかり忘れてたけど。

 まあそんなことはどうでもいい。


「俺のこと、信用していいの?」


「ああ。事前調査で君が思想団体とのかかわりが無いことは分かっていたからね。思想の元がそこでないなら、何も問題ない」


「思想の元って……ああ、誰かから吹き込まれてないかって話?」


「その通り」


 グレイプは三本目の葉巻を取り出して、火をつける。


「他種族融和派を名乗る連中は、基本的に人族の裏切り者だ。他種族と裏で繋がり、奴隷狩りした奴隷を交換して儲ける者や、情報を流しているスパイなどだな。総じて……思想犯と言うべきかな」


「思想犯?」


 問い返す。あまり愉快なワードじゃないだろう。


「そう、思想犯。そうだな……先ほどの裏切者以外であれば、例えば敗北論者や終末論者、社会主義者などかな。他にもいろいろいるが……要するに、国益に反する思想を持ち、それを実行する者を私はそう呼んでいる」


 なるほど、国益にそぐわない人は全部ひっくるめてそう言ってるのか。


「そういう連中は若く、純粋なAGを狙ってこの危険思想を植え付ける。そんな洗脳を受けているのであれば――Sランクとして相応しくない、と進言せざるを得なかったからね」


「……へぇ」


「もっとも、あのオルランド伯爵とティアール君が後見人の時点でその心配は薄かったがね。大方、若さと無知故の万能感に依る物か……と思っていたが、もっと理性的な意見が聞けて嬉しかったよ」


 はっはっは、と笑うグレイプ。本当に、パインの印象や事前に調べていたものと雰囲気がまるで違う。

 そのせいでどうにも脳が混乱しているが……取りあえず、ある程度は信用してもよさそうだ。

 俺は笑い、肩をすくめた。


「二つ目。パインはあんたと違い、悪即斬って感じだった。それはあんたの教えに反するんじゃないの?」


 加えて、怯えようが尋常じゃ無かった。まるで自分が魔族に利用されていたことがバレたら、殺されるんじゃないかって程の。

 グレイプは少し笑い、困ったように葉巻の煙を吐いた。


「さっきも少し触れたが、あれの母親は亜人族に殺されている。その憎しみは計り知れない。私のように感情とルールを切り離せるような年齢でも無い。……だから見分を広めてもらおうと思ってAGをさせているんだ。幸い、戦闘系の『職』だったし」


 パインは俺より年上って聞いている。つまり19か20くらい。俺は貴族の結婚事情に詳しくないけど、いわゆる行き遅れって奴になるんじゃなかろうか。


「はっはっは。ま、彼女が『普通』の貴族の娘として生きるならもう手遅れだな。しかし、あいつは戦うことを選んだ。親としてその道筋を整えただけだ」


「道筋、整えたんだ」


「ああ。貴族の淑女である以上、AGを引退した後はシスター、ギルド職員、騎士、後は騎士やAGの妻……くらいしか無いからな。そのどれにでもアクセスできるように手筈を整えているよ」


「好きにさせてあげてるんだね」


「あれの上……つまり長男と次男だな。彼らがキッチリしていてね。後継ぎも産まれ、妻も二人ずつ。名家との繋がりもしっかり付けた。それを自分の意思でね。だからまあ、特にパインに強制しなきゃいけないことが無いって言うこともあるかな」


 ああ、なるほど。

 ……マジでこの人、パインのお父さん? 血、繋がって無いんじゃないの? 理性的が過ぎる。

 しかしここまで理性的であれば……尚のことあの怯えようが気になる。

 少し、突っ込んで聞いてみるか。


「パインを助けた時……その、あの子が獣人族に攫われた、それだけで物凄く怒られるっていうか、あー……なんか関りを持っただけで殺されるんじゃないかってくらいの勢いだったんだけど、それは何で?」


「む? 別に攫われたくらいでは特に罰を与えることは無いが……そうだな、仮にあいつが自分の意思で他種族の要請、願いを聞いていたら、それはルール違反だ。ルールに則って、処罰を与える。その上で……我が家からは除名になるだろうな」


 あー……。


「思想犯に誘導された、とか騙された、とかでも?」


「ああ。結果として、奴らに与したのであればルール違反だ。無論、普通の人間であれば騙されたり洗脳されたりしたのであれば情状酌量の余地もあるが……私たちはロベリー家。この国で最もルールに則って動かねばならない身だからだ」


 なる、ほど。

 理性主義者って凄いね。


「我々は貴族だ。莫大な富と、権力を、権威を。生まれながらにして持っている。何のためだと思う?」


 一息入れたグレイプは、ハッキリと――真剣なまなざしを俺に向ける。


「民のために身を粉にして働くためだ」


 言い切るグレイプ。


「今後の生によって受ける選択、自由。その大半を奪われるからこそ、それと引き換えに生まれた時からそれらを持ち得るのだ。私たち貴族は」


 自由と言われてしまうと……俺は少し言いたくなってしまうが、しかし納得の上で生きているのであれば、俺は何も言わないし言えない。

 それが生き方と言われてしまえばそれまでだ。


「厳しいと言われるかもしれないが、貴族である以上は守らなくてはならないルールだと私は思っているよ」


 笑いながら、葉巻を吹かすグレイプ。なんというか、俺が彼と同じ年になったとして……ここまで感情と理性を切り分けられるだろうか。

 恐らく、無理だろう。しかし目の前の彼はやってのけている。

 凄い話だ。


「しかし怯える、怯えられていたか……幼い頃、厳しく躾け過ぎただろうか」


「ああ……お父さんにはしたくないね、確かに」


 めっちゃ怖いんだろうな、叱られると。

 俺は苦笑いしつつ、新しい活力煙に火をつける。こんな緊張感がある場所だと、吸う量が増えちゃうよ。

 俺はやや圧倒されながらも、気になることをさらに問う。


「三つ目。なんで俺一人呼んだの?」


「もちろん、お互いの信頼を深めるための話をしようと思ったからさ」


 そう言ってグレイプは立ち上がると、部屋の隅にあった棚から木箱を持ってきた。ぱかっ、とそれを開けると中に入っていたのは……


「女の人の、写真? ああいや、風景記憶絵だっけ」


 要するに写真なんだが、風景記憶魔道具で撮った物を印刷すると、そんな名前になるらしい。


「ああ。我が妻のものだ。若い頃の物から、現在までありとあらゆるものを取り揃えている」


「それが、どうしたの」


「男同士、親睦を深めるのに一番いいのは……猥談だろう?」


「帰るね」


「まあ待て待て」


 席を立った俺の腕を掴むグレイプ。


「ただ性癖を暴露しあうのもいいが、素面でそれをやるにはどおうも照れが混じるだろう? だからここは、己の最愛の女性について語り合おうということだ」


「なんでさ」


「普通の人間相手に惚気れば、不興を買う。が、私は自分の妻が世界一の女性だと確信しているからね。いわば妻自慢さ。世界で一番、素晴らしく美しく、くだらなく――そして喧嘩も起きず、お互いのことを良く知れる」


 お互いのことを良く知れる、という言葉を何故かゆっくり言うグレイプ。喧嘩が起きないというところに引っかかりを覚えるが……。


(って、ああ)


 喧嘩にならない……つまり相手の愛しい人を貶さず、尊重して自分の想い人を自慢することが出来なくてはならない。

 それは最後まで理性を持って、その上で穏やかに話さなくちゃいけないってことだ。それで、相手の人となりを知れると。


「ああ……まあ、理解した。惚気なんて別に無いけど」


「何を言う。君は好きで彼女らと一緒にいるのだろう? で、あれば君しか知らない彼女らの自慢すべき点はいくらでもあるはずだ。それを挙げてくれればいいよ」


 そこまでグレイプはいった後、少し申し訳なさそうな顔になる。


「全員自慢したい気持ちは私も痛いほどわかるが、今日は一人だけに絞ってくれ。では私の妻についてだが……まず、美しい」


 そう言って、写真を俺に見せてくるグレイプ。少し古い写真だが、確かに美人と言える方じゃないだろうか。

 カールした金髪、大きな目、そして大きな口。派手なドレスを着ているが、決して下品にならないその気品。美人というよりはセクシーな女性、と言いたくなるような雰囲気だ。


「外見についてだが、ほらコレを見てくれ。この泣きぼくろ。セクシーだろう?」


 アップになった写真を見せてくるグレイプ。なるほど、そこが彼女のチャームポイントなわけか。


「そして胸! これは服の上からだと分かりにくいがツンと張っていて寝ていても全く垂れてこないんだ! なにより揉み心地もさることながら、非常に寝心地がいい!」


「胸で寝心地って……?」


「枕にするんだよ。おっぱい枕だ」


 俺の知らない世界の話はやめて欲しい。


「性格も素晴らしい。私はルールに則っとって行動する。彼女はそれを尊重してくれてね。いついかなる時も、彼女は感情すら理性的に、理論的に言葉で説明してくれた」


「それは凄い」


「そうだろう? 私ですらカッとなってしまうことはある。しかし彼女は絶対に理性を崩さなかった。彼女がいてくれたから、パインの母――私のもう一人の妻も、最後まで笑って過ごせていたんだと思う」


 ああ、彼女はパインのお母さんじゃないのか。どうりで彼女に似ていないと思った。


「実は今日も、彼女と一緒に挨拶しようと思っていたんだが……ちょっと体調を崩していてね。咳が出るだけなんだが、君にうつしてしまっては大事だろうから、今日は写真だけだ」


「それは別にいいんだけど……あ、もしかして俺の番?」


「ああ。言葉にしづらいなら、今の私のように顔、身体、性格で愛しているところを一つずつ言うといい」


 まさかお題を出して話しやすくされると思わなかった。

 俺は少し考えて……そういえばパインが持ってきた、魔族が写した冬子たちの写真があることを思いだす。一応、リャンとはダンジョンアタックを終えた後にツーショットとか取ってるんだけど、アレはギルドだしね。


(冬子か、美沙か……)


 どっちを紹介しても、後でもう片方に怒られそうだが、性格で好きなところを言いやすい冬子にするか。


「はい、これ」


「おお、君も愛しい人の絵を懐に忍ばせているタイプか。気が合いそうだ」


 どんなタイプだよ。スマホの待ち受けを彼女の写真にするような意味だろうか。


「あー……顔、ねぇ。美人だけど……そうだな、目元かな。このクールで涼し気な感じ。睨まれたいともっぱらの評判だったけど、俺は彼女は笑顔の方が素敵だと思う。クールな瞳で、ちょっと照れたように笑うのが凄く可愛いんだ」


「ほう! どれ、もっとよく見せてくれ。……なるほど、確かに切れ長でクールな目だな。睨まれたい、蔑まれたいという気持ちはよく分かる!」


 そこまで言ってない。ってか分かるのかよ。

 せっかく全身写っているので、俺は冬子の足を指さす。


「それで……体っていうなら、冬子は足が凄く綺麗。白磁のように透き通った肌と、引き締まっているのにしなやかさが見るだけで伝わってくる流線形」


「素晴らしいな……確かに私も踏まれたい」


「俺踏まれたいわけじゃないんだけど……」


「挟まれたいのかね?」


「あー……」


 ………………。


「でね? 彼女の性格なんだけど、まあ優しい。それで……クールぶってるのに、実は割と乙女な考え方をしてるんだ」


「まあ待て、挟まれたいのか? 踏まれたいのか?」


「脚がキレイって言ったらその二択しかないの!?」


 バン! と机を叩くと、グレイプはキョトンと首を傾げた。


「後はねっとり舐めるとか、丹念に触りたいとかかね」


「触りたいけど、舐めたいと思ったことは――ああいや」


 俺はコホンと咳払いし、フンとそっぽを向く。


「そんな破廉恥なこと考えたこと無いね」


「破廉恥って、久々に聞いたな。そんなワード」


 グレイプは自分の奥さんの写真を眺めながら、嬉しそうに笑う。


「しかし足か。いい趣味をしているね。――それで、夜の方はどうなんだい?」


「夜って……言いそびれたけど、彼女らとはそういう関係じゃない。同じチームで、パートナー。それ以上でもそれ以下でも無いよ」


「一緒に過ごしているのに、かね? あんなに美人なのに――君は一切、抱きたいと思ったことは無いのか? いやもっと言うなら、勃つ様なことも無かったのかね?」


 ………………。


「無い」


「あるね。なんだい、それがダメだと思っているのかね? 綺麗な女性に魅力を感じる。当然のことだろう」


「ダメに決まってるじゃん。彼女らは俺を信頼して、信用して一緒にいてくれてるんだから」


 活力煙の煙と一緒にため息をつく。どうしてこうも皆、同じ家に住んでいるだけで奥さんだの彼女だの妾がたくさんだの女好きだの好き放題言うんだか。


「俺は誰にも手を出してないし、誠実に対応しているよ」


「それは異なことだな。相手から『私たちは貴方に性的に見られたくありません』と言われたのかね?」


 そんなこと別に直接言われてないけど――


「普通、そんな風に見られたくな、あー……」


 ――逆のことは、リャンから言われた、気がする。


「嫌いな相手からであれば、見られたくないだろうね。とはいえ、そもそも嫌いな相手と一緒に住むなんてあり得まい。恋心を持たずとも共に住むことが出来る女性もいるだろうが、全員がそういうわけではあるまい。やはり異性と住むということに、特別なものを感じる女性は多いと思うよ」


 美沙を思い出し、再び言葉に詰まる。グレイプは俺が碌に何も言えないのを見て、ニヤニヤと笑う。


「相手の気持ちに応えるのが誠実、というものさ。手を出す、出さないは男が決めることじゃ無いよ。相手がどう思っているか、だ」


「……つまり、相手が望んでいるのに手を出さないのは失礼ってこと?」


「その通り。しかしそれは男にとって都合の良い解釈だ……ということも忘れてはいけないけどね。なにはともあれ、相手とのコミュニケーションが大切だよ。誠実と言うのであれば」


 むう、と俺は口を尖らせる。活力煙を灰皿に押し付け、新しい物を咥える。


「……コミュニケーション、か。タローにも言われたな」


 初対面なのに、人の内面を見透かしたようなことを言う奴だ。

 やっぱり貴族なんて全員……ヤバいのばっかりなんだろうな。そう思った俺は、最後に指を一本立てた。


「最後の質問。……もしかして前から俺と組もうと色々動いてた?」


 グレイプは笑い、頷いた。


「他にも候補はいたが、ね。しかし君の人となりを直接聞けて良かった。おかげで君しかいないと思えるようになったよ」


「その心は?」


「若く、求心力のある実力者。群れることを拒むSランカーでありながら、実力者揃いのチームを作る手腕。何より女好き。私と気が合いそうで何よりだ」


「女好きじゃない」


 そこだけは否定させてもらう。

 グレイプはまた嬉しそうに笑うと、名刺を取り出した。


「私の名刺だ。契約を仮に結ばないとしても、これは渡しておくよ」


「……そう。じゃあ、俺も」


 俺の銘が掘られた槍の穂先を取り出し、グレイプに渡す。それを嬉しそうに受け取ったグレイプは、俺に右手を差し出してきた。


「……ごめんね、俺はAGだから、握手の文化は無い」


「そうか、これは失敬。では門まで送るよ。ダンジョンについては彼に説明を任せてあるから、道すがら聞いてくれたまえ」


 そう言って現れたのは先ほどの老執事。音もなく現れる辺り、本当に実力は高そうだ。


「そうそう、私は妻のほかに愛人も三人いてね。……君には少し有力な話が出来るかもしれない。ダンジョンを終えたら、また来てくれると嬉しいね」


「……ん、無事ならね」


 俺はそう言いながら、灰皿に残った活力煙を全て燃やし尽くしてから立ち上がる。

 やれやれ、ダンジョンに入る前に無駄に疲れちゃった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「良いのですか? 主様」


「ああ。……彼は事前の調べ通り、思想犯に誘導された結果じゃない。あれならいざという時も使える」


「……いえ、そちらは心配していません。何せ王都動乱で魔族を明確に殺害しておりますからな。敵とみなせば斬る。その判断基準が彼の中にしかないことは危ういですが……まあ、十分コントロール可能な範囲でしょう。そうではなく」


「ああ。既にAランクチームが五組、全滅しているダンジョンのことか?」


「はい。いくらSランカーとはいえ、あのダンジョンは……」


「我々の常識の外にいるのがSランカーだよ。それに、彼らはそれを知って尚挑むだろうからね。……あれがクリアされるなら、これ以上喜ばしい事は無い。彼らの実力に賭けよう」


「はっ……」


「最も――なんかあっさりクリアしちゃう気もしてるけどね」

冬子「なんか私の出番が少ない……あとやっぱりこの髭のおっさん、怪しく無いか」

美沙「怪しすぎて一周回って怪しくないよね」

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