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力こそ正義!!  作者: かもめ一号生
6/7

弱肉強食!? 旅は道連れ!余は情け?

「ふふふ、スズちゃんに聞いたとおり

面白い子ですね、天掴くんは♪」

廊下を歩く一人の女性教師、白山琴音は

「ちょっと意地悪だったかしら~」

一人で楽しそうに呟く。

つい先ほど、彼女は購買で昼食を買っていると

黒い角刈りに、黒ぶちメガネをかけ

背はシュッと高いガッチリした体格の男。

自分が担当するクラスの生徒で、「スズちゃん」の

お気に入り、天掴朱天を見かける。

(スズちゃんがあんなに早く懐くなんて、天掴くんは

どんな魔法を使ったのかしらね~)

白山先生は今日の朝の事を思い出す。

何があったのか、ニコニコと彼は良い子だとか料理上手だとか

楽しそうに話していた。

(昨日の朝は青い顔して、お昼は絶望した顔してたのに・・)

面白くなさそうな顔をする白山先生。




入学式の放課後、彼女はスズカ先生を慰めていた。

そんな時だ、校庭が騒がしくなり、少しして

小田原先生がボロボロの少年を担いできたのは。

すこし悩んだが、これを機会に成長してくれればと

立ち直ったばかりのスズカ先生に様子を見させていた。

そして、朝会ってみればすっかり元気になっていたクセに

授業中は口を閉じて置物状態。

どうしたものかと考えていた矢先の事だ。



こっそり様子を見ていると「財布を忘れたようだ!失礼!」と慌てて

立ち去ろうとした。

人見知りのスズカ先生を懐かせた彼に興味があったのと

内心、それが面白くなかったのもあって

(ちょっと悪戯してあげましょう♪)

と、先回りし声をかけたのだった。



驚いた表情をした天掴くんは、素直に話を聞いていたようで

決心したように食堂へ戻っていった。

少し話しただけだがスズちゃんの言うとおりの真っ直ぐな子だ。

それを確認できたのと、ちょっとした「仕返し」も出来たので満足だ。

(ふふ、ふふふ♪またからかってあげようかしら♪)


白山先生は足取りも軽やかに職員室に戻っていく。








「たのもぉーう!」

食堂のカウンターに向けて言い放つと先ほどのおばちゃんが顔を出す!

「アら?アンタさっきの・・・」

「ワシと!食べ物をかけて決闘して頂きたい!」

そう、言い放つとおばちゃんは顔を引っ込めた。

少しすると店内からおばちゃんがゆっくりと出てきた。

「ほーぅ?誰に聞いたか知らないけど、アンタ新入生かい?

いいだろう!その申し出、受けて立とうじゃない!」

おばちゃんがそう応えた。

瞬間、例の結界が張られ、膜のようなもので覆われる。

背はワシより低いものの、体格は倍はあるんじゃないかという

迫力のあるおばちゃんは

指をパキパキと鳴らし、ニヤリと笑う。

「さぁはじめましょう?」

ワシが見たところ、このおばちゃん!タダ者ではない!

「全力で・・・参る!」

ワシはそう言い放つと床を蹴り突進する!

「家事で鍛えた主婦の力!あなどるんじゃないよ!」

おばちゃんも負けじと前にでてくる!

そして同時に攻撃体勢になり・・・

ワシとおばちゃん、二人の連続攻撃(ラッシュ)

激しくぶつかり合う!

避け!手で受け流し!時には拳と拳がぶつかり合う!

「うぉおおおおおおりゃあぁぁぁぁあああ!」

ワシが叫ぶ!

「うりゃぁーぁぁぁ!!!」

おばちゃんが同時に叫ぶ!

二人の連続攻撃(ラッシュ)はさらに速度を上げ!

ダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!!!

と、機関銃を乱射するかのごとし音が、食堂に響き渡っている!

そしてワシが渾身の一撃右手で放つと、おばちゃんも同じく右手で渾身の一撃を放つ!

「うぉおおお!」

「うりゃぁぁ!」

ガシッィ!

おばちゃんの左手にワシの拳が受け止められる、と同時に

ワシもおばちゃんの拳を左手で受け止め

両手を組み合った状態になった!

「アンタ、新入生のクセに中々やるじゃないのサ!」

「あなたこそ、タダの食堂のおばちゃんではない!な!?」

グググググッ!!!

お互いが力を込め、押し合う!!

「ハハハ!威勢がいいねェ!でもまだまだ甘いねェ!」

おばちゃんがそう言い放った瞬間、強烈な頭突きをもらう!

「うぐ!」

ワシは一瞬怯むと、おばちゃんはそのスキを逃さず組み付き

投げ飛ばす!!!

「てぇえええィ!ゴミ捨てシュゥゥゥト!」

「うぐぁぁぁあ!」

ドスゥウウン!

食堂に衝撃が走る!!!

「ぐ・・・ぅう、ま、参りましたァ!」

ワシは廊下の壁に叩きつけられ、敗北を認める!

「潔良いねェ!気に入った!またおいで!

いつでも再戦を受けてあげるヨ!」

おばちゃんはそういうと、ほれっと言って

アンパンを一つ投げつけてきた。

ワシはその「施し」を受けると

「か、かたじけない」

と言いのこし、逃げるように食堂から去る。





はぁ、入学してから何度目だろう、か。

また負けてしまった。

まったく、この学園は実力者揃いだ。

むぐむぐもぐもぐ

ワシはアンパンをほお張りながら教室へ戻る。

時計を見ればもうすぐ昼休みが終わる時間であった。

むう、しかし中々どおして!

(このアンパン、美味である!)

ぺろりとアンパンを平らげ、水道で水を掬いすすると

教室に入り、席につく。

他の授業を受ける生徒もすでに席についており

あとは教員を待つのみである。

結果的に腹は満たせたが、鍛えなおす必要がありそうだ。

最近、たるんでいたのかもしれない。

ふと気になって生徒手帳の個人戦績を見る。

1戦0勝1敗0分・・・・

ふむ、どうやらおばちゃんとの決闘は反映されていないようだ。

そして1敗の詳細を出すと、親睦会 対戦相手 四十万 蟋蟀

と映し出される。

便利な道具だ、自動で対戦した時と場所を記録してくれるのか。

ワシが手帳を眺めていると、前方に人の気配を感じ

「は、はーい!で、では、授業を始めます、よ?」

と、昨日から一番多く聞いた声が聞こえた。






スズカ先生がたどたどしく授業を進めていく。

内容は魔法技術の初歩中の初歩という事らしい。

「―意識を集中して、創造(イメージ)して、具現化し――」

魔力の扱い、武器の具現化、そんな話を進めている。

(ワシの知らぬ知識ばかり!ちゃんと聞いて理解しよう!)

ワシは集中して授業を受ける。

基本は大事だ!確実に習得しなければ!

話の合間にチラリと他の生徒の様子を窺うと

皆、ワシとおなじく真剣に授業を受けている。

少し気が付いたことがある。

今の内容はリュウや、ニドルは普通に出来ていた。

ワシは出来ない。

今受けているモノももしかしたら出来ないのでは?

つまり、初歩や基礎が出来ていない生徒のみ、残されて

この授業を受けるんではないだろうか。

(ひーふーみー・・・七名か)

ワシを含めて八名の生徒がこの授業を受けている。

とにかく、まずワシはこの八名の誰よりも先に魔法を「ますたー」せねば

そう心に決め黙々と授業を受けるのであった。






座学が終わり、続けて次の時間は実習ということで

教室から、「親睦会」が行われた、学校地下の第二ホールに場所を移した。

先ほどの授業で習った「武器具現化」を実際にやってみるということだ。

我ら8名はスズカ先生の前に3~4m程の間隔で横に並び

「で、では・・・はじめ!」

というスズカ先生の号令で一斉に「武器具現化」を開始した!

(まず頭に具現化する武器をイメージし・・・

手に意識を集中し、力を集めて武器を作りだすようなイメージを・・)

ワシは先ほどの授業で習った事を思い出しながら、実行していく。

恐らく他の生徒達も同じようにしているだろう。

と、いかんいかん。

他の生徒を気にしている余裕は無い。

ワシは目を瞑り、「武器具現化」に全力で挑む。



しばらくすると・・・・



「で、出来た!」

・・・・・

どうやら他の生徒の一人が成功させたようだ。

ちくしょぉおおおおおおがぁぁぁぁあああ!

ふと他の生徒の様子を見ると、武器になるまでは至っていないが

手に光りが集まっていたり、ぼんやり輝いていたり、と

具現化まで後一歩という感じだ。

それにくらべてワシは・・・

(まったく、手応えが・・・無い!)

先ほどから色々と試してはいるのだが。

何も起こらない、何も感じない。

・・・・・・

スズカ先生が一人一人に声をかけて回っている。

アドバイスしたり、褒めたりといった具合に、だ。

そうして一番左側に居たワシの所に回ってくると

ワシの様子をジーっとみて、ニッコリ笑い元の位置に

戻っていった。

(アドバイスくらいくれてもいいんじゃないか?

一応、先生なのだし・・・

差別はいかんよ、差別は。)

・・・・・

今は具現化に集中しよう。

・・・・・



「は、はい!き、今日は!ここまでです!・・」

スズカ先生が授業の終了を知らせる。

ここまでで四名の生徒が具現化を成功させ、三名の生徒が

武器の大きさに光りを集める事に成功していた。

あとの一名?

・・・・・

・・・・・

「で、では!授業を終わります!レイ!」

ワシを含め生徒全員がぺこりと頭を下げ

「ありがとうございました」

と、不揃いに礼をする。

ぞろぞろと帰っていく他の生徒達の後をゆっくりと

付いて行こうとすると・・・

「あ!天掴くんは居残りです!」

と後ろから言い放たれる。

ワシは振り向かず歩みをピタリと止めると

他の生徒たちがチラリとこちらを振り向いたりしながら

決して目を合わさず、帰っていった。

・・・・・・

他の生徒達が見えなくなると、ワシは振り向く。

スズカ先生は、真剣な表情で

「天掴くん!先生悲しいです!マジメな子だと思っていたのに!

先生の授業は聞いてくれなかったのですか!

メッ!ですよ天掴くん!先生も怒りますよ!」

と、言いがかりをつけてきた。

そう、先生、それは言いがかりなんだよ・・・。

「先生・・・」

「なんですか!言い訳ですか!」

先生はプンスコ怒りながら、激しい口調で答える。

これは、下手な事は言えぬな。

そう直感したワシは、授業を聞いていた事を示すため

「意識を集中し―」

と、「武器具現化」の習った工程を口に出しながら

先生の前で再度実行してみる。

・・・・・・

やはり出来ない。

「天掴くん、先生の授業・・・聞いていたのですね」

スズカ先生はそう呟くと、真っ赤な顔をショボンとさせ

「ぅぅぅぅ、生徒を、天掴くんを信じてあげられなかったとは

先生・・・失格・・です、ぅぅ」

とうって変わってグスグスいいながら、俯いてしまった。

子供かこの先生は!いや、子供でもいいんだが!

それでいいのかとぅえんてぃーわん!

・・・だが、その悲壮感漂う姿を見ると、とてもツッコミや、冗談

等は言えなかった。

・・・・・

「スズカ先生、どうしても武器具現化ができんのです、アドバイスを

・・・頂けませぬか?」

ワシがそう尋ねると、先生は顔を上げる。

な、ナミダァ!?

「あ、天掴くん、ご、ごめんなさい、せ、先生、ヒック」

・・・・・

ワシは無言で懐からハンカチを取り出し、手渡す。

先生は受け取ると顔を拭い、しばらくの間部屋は静寂に包まれる。





先生が落ち着いた頃合を見計らい、ワシは再度口を開く。

「先生、ワシが至らぬばかりに、勘違いをさせてしまい申し訳ない。

だが、見ての通り具現化の手ごたえが得られず、八方塞の状態。

先生のアドバイスをいただきたいのです。」

「そんな!天掴くんが謝ることなんて!」

スズカ先生がワシの顔をジッと見る。

ワシは目を瞑り、もう一度具現化を実行する。

・・・・・・・

「うーん、おかしいです、ね・・」

すこし立ち直ったのか?スズカ先生はワシの具現化にコメントする。

「先生、ワシは一体どうすれば・・・?」

先生はワシの手をジーっと見ながら頭を捻る。

「おかしい、です、魔力の収束を感じません」

「魔力の収束?・・・」

ワシは先生に問いかける。

「試験をパスしたという事は、恐らく適正があったという事でしょうが・・」

スズカ先生は呟きながら考えを巡らせている様子。

「先生・・・・?」

先生はこちらの様子に気が付きハッとしたように

「ごめんなさい、天掴くん!えと、ですね・・・」

続けて先生が説明する。

「魔法は、誰でも使えるわけではないのですよ、適正・・・才能と言いますか

この学校に入学する生徒は個人差はあれどそれを持った人なのですよ。

ですから天掴くんも生徒である以上、魔法の才能があって

使えない事は無いと思うんですが・・・・」

再度首を傾げるスズカ先生。

「聞いたこと無いですけど、もしかしたら相性が悪いのかもしれません」

「相性・・・ですか?」

「魔法には色々な種類があって・・火を出したり、水を出したり

自分の能力を上げたり、人に幻覚を見せたり・・・・

人によって得意だったり、使えなかったり、そういう事があるんですよ。

天掴くんは武器具現化・・というか、魔力を放出する、扱う、という事と

相性が悪い・・・のかも、しれない、です」

スズカ先生は、そう言いつつも納得していないような顔をしている。

「ワシは・・・魔法が使えないんでしょうか?」

情けない話だが、ワシは才能が無いのだろうか。

そう思い、先生に尋ねる、が

「わかりません、私もこんな事初めてで・・・」

と、再びしょんぼりと肩を落としてしまう。

・・・・・・・・

「なあに!先生!ワシにはこの拳がある!そのくらい些細な事よ!

勿論!ワシは諦めないがな!可能性が零で無い限り!

常に精進し、突き進むまで!ハハハハハハ!」

「あ、天掴くん・・・せ、先生も応援します!天掴くんが魔法を使える

ようになるまで!先生、全力でサポートしますから!」

先生はそう応えてニッコリ笑う。

ふふふ、そう来なくては!スズカ先生はやはり笑っているほうが良い!

「フッ、サポートされる前に、ワシが魔法をますたーしてしまうかもしれませんが

ま、ヨロシク頼みますよ!」

「はい!先生に任せてください!あ、あと・・天掴くん!」

「フハハハハ!ん?なんですか先生!」

「あの・・ありがとう」

・・・・・・

・・・・・・

フッ、調子が狂うぜ・・・・

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