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力こそ正義!!  作者: かもめ一号生
2/7

朱天敗北!? コゲないように気をつけろ!

遠くで声が聞こえる


懐かしいような、それでいて聞いたことが無いような

こっちに言っているような、どこか違う方に言っているような

消え入りそうな、それでいてしっかりとした

声が聞こえる


力がある方が勝つ

勝った方が正義

つまり


  力こそ正義




正義とはなんだ 力とはなんだ


正義とは貫くもの

力とは求めるもの


お前は何を求める


お前は何を貫く


ワシが・・求めるのは――

・・・・・

・・・

パッと目を開く、光がまぶしい

瞬きをして、目を擦る

パタンッ、と側から小さな音がした

「あ、えーと・・大丈夫・・です?」

声のほうを向くと見覚えのある人が、チョコンと座っていた。

ここは・・どこかはわからんが

とりあえずワシはベッドで寝ていたらしい。

その横でチョコンと座っていたのは・・・

ああ、この人知ってるな。

「スズカ・・先生?」

ワッとびっくりしたような顔をする小さい女の子

スズカ・ガブリエラ先生

そう、ワシのクラスの・・副担任?だったな

「はひ!そうですよ!スズカ先生です!」

と、なぜか慌てながら顔を少し赤らめて応えてくれた

む?手に持っているのはワシの雑誌ではないか、まぁいいか。

それより自分の状況を確認せねば。

そうだ、ワシはあの大男に吹っ飛ばされたんだっけな・・・

一瞬だったな・・・

・・・

ああ、それで気絶してこの状況か。

と分析していると

「えーと、入学早々騒ぎを起こした問題生徒を吹っ飛ばした小田原先生が

白山先生にキミをまかせてー、そのあと私に全部丸投げしたんですよお!」

と、なぜか上機嫌で語るスズカ先生。

「とりあえずケガは・・・するはずは無いんですけど、起きないとマズイので

先生が様子をみていたんですよ!」

と楽しそうに説明してくれた。

ワシはスズカ先生をジッと見つめて

「そうですか、ご迷惑をおかけし、申し訳ありません」

とペコリと頭を下げる

「ふえ!?迷惑なんて・・先生として、生徒の心配をするのは当然ですよ!

それにしてもー、天掴朱天くん?でしたよね?やー!白山先生ってば

問題生徒って言ってたけど素直ないい子じゃないですか!先生びっくり

しましたよお!」

等とニコニコしながら話す、スズカ先生。

ふーむ、改めてみてもこの先生

かなり子供みたいな人だ。

栗色のふわっとした髪型にお世辞にも似合っているとはいえないスーツを着て

無邪気な笑顔でこちらをみている。

これで先生というから驚きだ。

「はい、ワシは天掴朱天 ご心配おかけして申し訳ない。」

と再び頭を下げる。

「ワシ?天掴くんっておじいちゃんみたいな喋り方ですね!」

とスズカ先生、ちょっと失礼なのではないか?それは。


実は結構喋り方を気にしている男、天掴朱天である。


「ぐぬ・・ワ、いやオレも最近直そうとしている所だぜ!」

と変な口調になるワシ、いやオレを見て、くすりと笑うスズカ先生。

「天掴くんの個性ですから!先生良いと思いますよ!」

と笑いながら言ってくれた。

・・・早急に言葉遣いを直す必要がありそうだ。

「ところでー、天掴くん、入学早々決闘したり、小田原先生に攻撃しようと

するのはダメですよー?何か深い理由でもあったのですか?

さぁさぁ!先生に話すのです!先生が力になりますよ!

さぁさぁさぁ!」

と、いきなり詰め寄ってきた

「うお!ヮレもよくわからんのですが、頭に血が上ってしまって!」

ジーっとワシの顔を覗き込むスズカ先生に必死に言い繕うと

「すぐに暴力に走るのはメッ!ですからねぇ!?」

とくりっとした目を大きく見開いて視線を外さない

ワシは何も反論できず、観念して

「は、はい・・」

と頷いた

するとスズカ先生はニッコリ笑って

「先生との約束ですからね?破ったらメッ!ですからねー?」

と言って離れ、立ち上がる。

最初の印象と違って、中々あなどれない人だ!

と思いつつ、ワシもベッドから降り、立ち上がる。

スズカ先生と並ぶように立ったのだが、やっぱりというかなんというか。

やはり小さいな・・・

すると先生はワシの腕を掴むと

「さぁさぁ!良い子の天掴くんは下校の時間ですよ!」

と言って引っ張っていくのだが・・・

身長差のせいかバランスが悪い!

すぐに先生の隣に並ぶ、うむこれなら大丈夫だ。

部屋の外にでて窓を見ると、すでに日は暮れていた。

さて、そんなこんなで学校の入り口にでたのだが。

「そういえば、ワシ何処へ帰ればいいんだ?」

クススッとスズカ先生が笑い

「何言ってるんですかぁ!あー、もしかして」

手帳のようなものを操作する先生。

「ああ、やっぱり!天掴くんは寮に入るのですね!

てっきりおうちがわからない!とか、人はどこからきて

どこへいくのだ!的な冗談かと思っちゃいましたよ!」

よくわからないことを言うスズカ先生が、続けて

「寮の場所が分からないってことですね!さぁさぁこっちですよ!」

と引っ張っていく、すかさず先生の横に並ぶ。

「天掴くんはすごく遠くからきたんですねー!慣れない土地で一人

だと寂しいですよね!いつでも先生を頼ってくれていいんですよー!?」

とこっちをトコトコ歩きながらこっちを向き、いや見上げニコニコ笑う。

なんて良い先生なんだ!と思うと

「あれ、天掴くん今笑いました?」

「いえ、くしゃみを堪えただけです」

「嘘です!先生見ましたよ!口元がほころんでましたよ!」

「いやー冷えるなァ!」

「あー!ごまかしましたね!なんで認めないんです!絶対笑いましたよ!

きっと本当は良い子なのに一人慣れない土地に来て

寂しさのあまり反抗しケンカに走るかわいそうな生徒が

先生の優しさに触れ、笑顔を取り戻す!

そういう顔をしていましたよ!」

いや、何を言っているんだこの人は、大体ワシは今日この町に来たのだ

寂しくなるにしても、早過ぎるだろう。

いや寂しくなんかならないがな!

あと笑ってなんかいない、くしゃみを堪えただけなんだ!

そんなこんなで気が付くと大きな建物に着いた

「と~ちゃくです!ここがあなたの新居ですよお!

あ、ちなみにあっちに見えるのが先生達の寮です!

寂しくなったらいつでも来て良いんですからね!」

「いや、いかねーよ!寂しくなんかならぬからな!」

ついつい声に出してしまった。

「あれぇー?そんなムキになってー?本当は寂しいんじゃないですか?」

ニヤニヤする先生に何か反論してやろうかと思ったのだが

バカらしくなったので、やめた。

スー ハァーと、深呼吸したのち

「先生、案内ありがとうございます、失礼いたします。」

といって建物に向かう、早歩きで。

・・・・・・

・・・・

・・・



(ぬううううああああああ!!)

寮の入り口についた、ついたのだが・・・

その扉は硬く閉ざされ押しても引いても開かぬのだ。

ぬうう、これが都会の せきゅりてぃー というやつか。

我が道を阻むとは、良い度胸だ!

さて、どうしたものか・・・・。

・・・・


そのとき!朱天の頭に一つの物語が湧き出て!

まるで雷が落ちたかのごとし、衝撃が走る!!!


「フフフフフハハハハハワーハハハハ!!!

この朱天!貴様ごときに歩みを止められるものではないわ!」

興奮のあまり一人熱くなり、扉に向かって言い放つ!

「ゆくぞ、くらうがよい!扉ヤロォォォォ!!!」

スーーーハァァァァ息を整え

必殺の一撃を言い放つ!!!!

「開けェェェエエエエ!ゴマァ!!!」




夜の静寂、風に吹かれて木々がさやさやと揺れている。

扉はシンッと微動だにせず依然と黙している。


不意に後ろに気配を感じた!

「アハハ、ハーハーあ、天掴くフん、フフ、ハー

ひ、開けゴマって、ケラケラ、ハーハー」

ソコには涙目で顔を真っ赤にし、必死に笑いを堪える

スズカ先生がいた、いや、いやがった、なぜいるんだ!?

「ヒヒ、し、心配だからぁ、コッソリ様子みハハてたら

ひ、開けゴマってアハアハハハハ!」

そう言いながら近づいてくる。

ワシは呆然と突っ立って、口をパクパクさせていた。

「はー・・ハー・・・スー・・ハー

え、えとね天掴くん、このね扉はね、カギを使うんですよ?」

そういって扉の横のカギ穴を指差すスズカ先生。

(ぬ、ぬぬぬぬかったわぁあああああああ!)


落胆し、崩れ落ちる朱天!

そう!この男!天掴朱天は!

都会のせきゅりてぃー(笑)に


敗北したのだ!!!!


「ちくしょう、ちくしょう・・・扉ヤロウがぁあああ!」

地面をドンドンッと叩く朱天、それは負け犬の姿そのものであった!

その姿を見てもう一人、地面をドンドン叩く者がいた!

「あ、天掴くぅんやめ、やめえ!ヒヒヒおなか、おなかいたいアハハ」

笑い転がるスズカ先生、笑い涙を流し地面を叩いていた。



夜風に吹かれて木々がさやさや揺れている

ひとしきり悔しがった朱天が冷静を取り戻す。



(この敗北!しかと胸に刻もうぞ!やはり、ワシはまだまだ修行が足りんな)

むくりと起き上がるとカギ穴を見て、考える

(そうか、カギか、カギ・・・ふむ、カギねぇ・・・)

出来るだけ、そのへんでケラケラ転がっているナニカを意識しないよう

ワシは荷物を探る。

・・・

・・

あった、あった。

213と書かれたタグが付いたカギを見つけた。

そしてカギ穴にぶっ刺す!

ピッと音がして扉が開く

後ろから何か聞こえる

「ひ、ひらけ ごま!アハハハハ」

わぁい!あいた!あいたあいた!アイタヨー!

ヤッタゼ!朱天!トビラアイタヨー!

何か聞こえた気がしたがトビラアイタカラ!

キニシナイヨー!あーおなかすいたなあ!


何事もなかったような顔をして朱天は寮の中を目当ての部屋へと歩む。

213!ミツケタヨ!ヤッタゼ!

朱天は狂気に駆られながらも自室であろう部屋を見つける。

扉の前にはダンボールが積まれている。

躊躇無く開けると、やはり自分の荷物が詰め込まれている。

服や・・食料・・・料理道具!が入っている。



そうこの男、天掴朱天!趣味はお料理という可愛らしい一面もあるのだ!



食べたい物は自分で作る、フッ・・昔からそうだったな。

さて服、料理道具・・こっちは本か。

自室の扉を先ほどのカギで開け、荷物を入れる。

そして中でダンボールをひっくり返し、荷物を確認する。

ん・・・見慣れない洒落た服や、読んだことの無い本がある。

このナイスなサプラーイズ!

きっと「じいちゃん」の仕業であろう

・・・・・

・・・・

朱天は「ばあちゃん」と「じいちゃん」の3人で暮らしていた。

人里離れた山奥でひっそりと。

山を駆けずり回り、川で泳いだりサカナをとったり・・・

「じいちゃん」はフラっと出かけると時々

そんなワシに、町のものをプレゼントしてくれた。

カッコイイ服や靴だったり、町の事が書かれた雑誌だったり。

まぁ、大体すぐボロボロにしてしまうんだが。

・・・・・

・・・

「変な物は・・・持ってないようですねぇ!」

「うぉぅ!?」

不意に横から声がして、驚き飛び上がってしまった!

そこにはニヤニヤ笑みを浮かべた子供・・・

いやスズカ先生がいた、なぜいるのだ!

「先生・・・なぜ!?」

「いやー!荷物を眺めて故郷を思い出し寂しがっている生徒を

見過ごすなんて!先生できませんよー!」

いや、だから寂しがってはいない・・・が!

故郷を思い出してはいたな、うん

あなどれんなこやつは!

「そうですか、お気遣いありがとうございます、大丈夫ですので

帰っていいですよ?」

ワシは冷静に感謝し、追い払おうとしたのだが

「やーやー!良い部屋ですねぇ!いやはや!他の部屋とつくりは

同じではあるんですけどね!いやーなんというか!

良い部屋だなー!うんうん!」

等と話題をそらしてキョロキョロと部屋を見回している。

・・・・・・

・・・・・

「先生・・もしかして寂しいんですか?」

「いやーこの押入れとか良い感じですねぇ!

それ!開けゴマ!くふふあはは」

・・・・・

・・・・

「先生・・もしかしてヒマなんですか?」

「ギックッー!」

ビクっと小さな体を飛び上がらせ押入れの中で頭をぶつける

子供



そう!この仕事が終わりヒマを持て余した幼女こそ

天掴朱天のクラスの副担任!

スズカ・ガブリエラである!!



「痛ひぃ・・・舌もかんだぁ・・・」

涙目になり頭を摩るスズカ先生。

「ぎっくー」

ワシはニヤリと邪悪な笑みを浮かべる

スズカ先生は顔を赤くしこちらを見上げている

「あは、あはは天掴くん、とってもうれしそうですね!

でも、今の笑顔は・・こ、怖いですよ?」

心なしかプルプル震えているようにも見える。

そんなスズカ先生を見ているとすこし罪悪感を覚える。

傍から見れば子供をいじめる極悪人であろう。

ワシはフッと冷静になると

「これでお相子・・ですね?」

と言い放つ。

つまり、今の「ぎっくー」と先ほどの「開けゴマ」騒動は

お互いの胸に仕舞っておこう、と

そういう提案である。

スズカ先生は察したのかコクコクと頷いて視線を合わせる。

「ああ、そうそうそれで!先生これを渡し忘れていたんですよ!」

そういうと先生は背負っていた荷物からスッと何かを取り出す。

おお!それは正しく我がメガネ!

「いやー白山先生から渡されていたの、つい忘れてしまっていました!

はい、どーぞ!」

「かたじけない」

ワシは受け取ると顔に装着する!

おおお!なじむ!なじむ!ふははは。

「でもそれ、伊達メガネですよねぇー?」

そう、このメガネには度が入っていない

いわばお洒落メガネなのだ。

「これを付けていると、頭が良く見える!メガネは知の現れよ!

・・・とじいちゃんが言っていた、だから付けている!」

「そ、そうなんですかぁ・・・た、確かに付けていると頭が良さそうに

見えますね!」

ふふふ、そうであろうそうであろう。

やはりじいちゃんはナイスだぜ!

そんなやり取りをしていると

グゥゥウウウウ!

ワシの腹が悲鳴を上げた、そういえば今日は何も食べていない。

それを聞いたからなのか、は分からぬが

くー

と、スズカ先生のお腹も鳴った。

ふむ、ふむふむ、ふむむむむむ!

何も食べていないのを思い出したら急激に餓えてきた!

早急に何か食わねば!いや、折角の新生活一日目の食事だ!

適当なものではなく、ウマい料理を作って食べよう!

こうしてはおれぬ!

ワシは料理道具と材料を台所に運び料理を開始する。

その様子をポカーンと見ていたスズカ先生が

「あ、天掴くん!先生も腹ペコです!せ、先生の分も!」

等と騒いでいる。

ふむ、まぁよい、どうせ作るのだから一人分も二人分も

同じようなものである。



朱天は華麗な包丁捌きで材料を斬る。キャベツ、ニンジン、もやし・・・

・・・・

ゴマ油をなじませた中華鍋をガンガンに熱し一気に炒める!

野菜・・そして麺・・!

味を調え皿に豪快に盛り付ける!!

肉が無いのがザンネンであるが・・・

あっつあつのヤキソバである!

ドカンとヤキソバの乗った大皿を持って行くと

スズカ先生がテーブルを用意して待ち構えていた!

ワシは大皿をテーブルの真ん中に置き席につくと

スズカ先生は小皿と箸を用意し、席につく

そして二人でこう唱えたのだ!

「いただきます!」

ワシと先生は一斉にヤキソバを小皿にかきいれると

ズルズルムシャムシャ!とむさぼりつく!

あああああ!うまいうまいうまいゾー!

味の決め手のオイスターソースが香り

野菜の甘味が口の中に広がる!

「おいしい!おいしいよ天掴くん!」

ガツガツガツガツ!

ムシャムシャムシャムシャ!

・・・・

・・・


気づけば大皿は侵略しつくされ、そして

テーブルを挟んでぐったりと倒れる二人

素晴らしい幸福感に包まれて夢見ごこちだ


くっちゃねしとると豚になるぞ!


昔、ばあちゃんが言っていたっけな。

・・・・・・・

・・・・


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