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能力値

 魔紙には妙に高低差の激しいステータスが表示されていた。


 生命力や攻撃力は数字で表されていて実際にどのくらいなのかよく分からないけど気になったのはレベルと魔力。


 レベルは本来攻撃力なんかと同じで数字で表されるのが一般的なのではないだろうか。しかし、レベルの覧には『不確定』と記載されている。何かのバグとしか思えない。


 それに魔力無尽蔵(オーバーフロー)って…。

 ありなんだろうか。あからさまなチート感があふれているけれど…。


 説明を求めてカレアの方を見ると同じように紙面を覗き込んでいたカレアはシリエほどではないにしろ、驚きとそれを上回る訝しげな表情をしていた。

 でも、ユキの視線に気づくと疑問を理解して解説してくれる。


 なんか、料理を作ってくれて、看病もしていてくれたみたいで、今もこうして分からない事を教わっているとカレアがお姉ちゃんの様に思えてきた。

 一人っ子だったからきょうだいができたみたいでうれしい。


 そんな事を思っている間にもカレアは丁寧に説明してくれる。



「まず、レベルについてご説明致しましょう。といっても私もこれは分かりかねます。普通数値で表されるはずですが『不確定』となっているのはおかしいとしか言いようがないです。誰しもレベルを持っていますがこんなのは見た事も御座いませんし、未知数ですね」



 やっぱり変だったらしい。


 まあ、そうだよね。『不確定』なんて強いのか弱いのか分からないし。


 でも、確定していない、って事なら強くもあり弱くもある状態とも取れるような…。



「次に生命力。これはおそらく、若様がお倒れになられた原因だと思われます」


「原因ってどういうこと?」



 問題でもあるのだろうか。



「若様の生命力は微々たるもの、という事です。例えば転んだり、うっかりどこかにぶつかったりなさったとして、少し強い衝撃を受けただけで命を落とす可能性があります。ちなみに生まれたばかりの赤ん坊でも生命力が30はあります」


「え…」



 新生児にも劣るの?俺の命の炎小さすぎない?


 でも、



「俺地下に落ちたり、シリエに叩かれたりしたけど生きてるし、食堂出ようとする時まで大丈夫だったよね?」


「はい。確かに生命力だけではすでに亡くなっていらしたかもしれませんが防御力が50はありますので先程あげたような衝撃程度ではダメージのうちに入りません。こちらも赤ん坊で30はありますからそれよりは高いですよ」



 新生児に勝っても嬉しくないんだけど。むしろ比較対象が新生児っていうのが悲しい…。


 ていうか、今怖い事言われたな。気づかないところで救われていたとか、防御力の存在に拝みたい気分だ。


 防御力があれば命が常に危うくても日常生活は送れるのか。それはよかった。いや、よくないんだけど普通に過ごせるっていうのは奇跡だと思う。



「それで何で時間差があったの?」


「人は生命力を著しく削られると意識を保てなくなります。食堂にいらした時点で昏倒寸前だったのではないかと。ですので一度転ばれた時の衝撃で限界値に達したのでしょう」



 まんまHPだな。

 向こうの世界では体中に傷を負っても出血多量か急所でも傷つけられない限り案外助かるんだけど、この話しぶりだと致命傷を負っていなくても生命力が0になったら終わりなのかもしれない。


 シビアだなと思うけど郷に入っては郷に従えというやつだ。


 俺はそのシビアを極めてるわけだしね。


 異世界に浮かれていると危険だと早めに分かったから対処のしようもある、はず。


 …とりあえず気をつけよう。



「転ぶ前、めまいがしたのも?」


「体力が減ると徐々に増す倦怠感がそれを知らせてくれるのですが若様の場合、生命力が低過ぎて倦怠感を一瞬で通り越したのだと思われます」



 倦怠感を感じる間もなく減る命。

 まさに死にかけていたのを知った今ではぞっとする。この世界では俺は簡単に命を失う、動物よりも下等な生物なんじゃないだろうか。


 そう不安を抱いたところでカレアが次の説明を始めた。



「それに対しまして、攻撃力は常人では比較にならないほど並はずれています。一般の方で大体レベル400~500、冒険者でも600~700が平均でして、普通の人間の限界はレベル1000、攻撃力等が10000ほど。一般の方の約2倍ですね。しかし、若様は45000。召喚されたばかりの初期能力値で、すでに超人を越えております。冒険者ランクで例えますと、現在、主一人だけに与えられているSSSランクに相当します。素晴らしいです」



 褒めてくれるのは嬉しいんだけど、今度は違う意味で怖くなった。


 超人越えてるの?こんな風前の灯火みたいな生命力で?

 今さっき魔力を魔紙に注ぐ事ができた段階の人間に何を求めてるの。人生終わらせろって言われてるのかな。


 だって賢者と同じランクだよ?


 明らかに魔法の練習とかして失敗でもしたら余波だけで即死なんじゃないかな。



「くわえて言いますと攻撃力には体力等も含まれますので一日中、山を全力疾走で上り下りしていても毛ほども疲れませんし、大の男が数百人がかりでも動かせないほど重い岩でも片手で軽く持ち上がります」



 命が危ういわりにスポーツ選手もびっくりな身体能力だね!

 ああ、でも防御力は赤子並みなんだから強靭な肉体ってわけではないのか。


 ややこしいな…。


 ふと思ったんだけど、シリエと同ランクならシリエも同じ事できるんだよね。

 見た目、か弱い20代くらいの妖艶な美女って感じなのに容姿とまったく比例してない。


 賢者なんだからすごい人なんだとは分かってたけど、これ魔王と正面から殴り合ってもいけそう。


 ………魔王討伐武勇伝、聞いてみたいな。ドキドキする。


 女性だと襲われる危険がないっていうのもいいのかな。家族が危険な目に合うなんて嫌だし。


 それで考えるとカレアも相当な美少女だ。

 買い物とか出た時絡まれそうなものだけど、どうしてるんだろう。


 そもそも彼女はどのくらいのレベルなのか気になったところで、フリーズしていたシリエがいきなり両肩を掴んできて、心臓が飛び出るかというほど驚いた。

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