Mystery in the High school
Episode.0「酒屋の息子」
これはオレ瀬川清春が高校2年生のときの話。
「瀬川さーん!」
「いらっしゃいませー。」
「あら、キヨちゃん。お母さんいる?」
「母ちゃんなら旅行行ってて明後日くらいまで帰ってこないけど?」
「そーなの…。」
うちの店に来たのは近所に住む川口さん。母ちゃんとは幼馴染らしくなにかあればすぐ母ちゃんに相談するんだとか。
「なんかあったんすか?一応伝えときますけど」
「それがねー。お婆ちゃんがいないのよ。」
川口さんとこのばば…お婆ちゃんはとても厳しく中学のときから髪を染めたりなにか悪さをすれば放任主義な母に代わりこっぴどくオレを叱ってくるなにかとおせっかいな婆さんなのだ。
「また老人会の集まりとかじゃ?」
「今日は老人会はないらしいのよ。」
「それじゃオレそこらへん探してこようか?」
「ありがとね。実はお婆ちゃん最近物忘れが激しくて会話も噛み合わないことがあるし…。もしかしたら…。
「大丈夫だよ。おばさん。とりあえず店番頼んでいいかな?」
いつもオレに口うるさく言ってくるばばあなんてどうでもいいはずなのになぜかオレは走り出してた。とにかく見つけなきゃって。そうどこかで思ってた。
まずはとりあえず家だ。川口のおばさんには許可もらっていたから勝手にお邪魔した。
ばあさんの部屋を見るに特に変わったところは…。あった。カレンダーに丸がついている。けど他のところにはこと細かく内容が書いてあるわりに今日のところには書いてない。
「おばさんにとりあえず電話で聞いてみるか…」
しかし、「今日?特になにもないはずだけど家族の記念日とかおじいちゃんの命日とか家族みんな知ってるし…。」
じゃあ、なんで?なにかないのか?
思い当たるところを見て回るものの全く見つからない。最悪の事態を予想するほかなかった。
オレはなにか寂しい気持ちに襲われた。なぜかばばあに叱られたことを思い出す。
「こらぁ!酒屋の息子!」
「うるせーばばあ!酒屋酒屋言うんじゃねぇよ!」
「お前はなんだ!そんなまっキンキンな髪の毛してそんなんじゃ彼女もできんだろう!
あたしが学生のときはじいさん…」
!!!
じいさん?あのばばあやたらじいさんのこと話すときは恥ずかしそうにしてやがったんだよ。じいさんに関係することなら恥ずかしくて内容まではカレンダーに書かないんじゃねぇか?でも、なんの日なんだよ?
「くっそ。わかんねぇ。」
あのばばあいちいち日付も細かく覚えてたはずなんだよ。よくのろけ話を…。
いや、待てよ。じいさんは死んでんだからいちいち記念日だろうとなんの日かとかは関係ないのか?わざわざ思い出の場所にいかなくても…。
「おい。ばばあ!」
「…しげさん?」
「誰だよ。それ。」
「おばさん。ばあちゃん居たぜ。」
「お婆ちゃん!キヨちゃん。どこいたの?」
「じいちゃんと話でもしてたんじゃないですかね?」
おばさんははじめきょとんとしていたがすぐにああ!という顔になった。
その後ばばあは認知症の可能性があるからと病院に通うようになった。
まあ、それも軽度のものだったらしく最近じゃ昔以上にいちいち小言を言ってくる。
「おい!酒屋の息子!」