0話「幕開け」
それは天災の如く、地上を灼熱の炎で包み込んだ。
全てを焼き尽くす業火の海は、あらゆるものを飲み込み広がり続けた。
辺りには硝煙の臭いが立ち込め、砲撃と爆撃の炸裂音が鼓膜を揺さぶる。
それはもはや――戦場。
圧倒的火力。圧倒的物量。
兵器として作られた物の力とはこれほどのものなのだと、隆二はそれを目の当たりにしていた。
どうあがいても勝てる相手ではない。
そう、幼子が大人を――いや、兵士を相手にするのと同じように、結果は歴然だった。
「……諦めます……か?」
隆二の隣で、少女が呟く。
切傷、銃創、熱傷。彼女の身体の至るところに、目を逸らしたくなるほど痛々しい負傷が見られる。
が、それでもなお美しいと思えるほどの美貌を持つ黒髪の少女は、血で真っ赤に染まった足を震わせながら立ち上がる。
言葉とは裏腹に、彼女の瞳から闘志は失われていない。
まるで海を思わせる蒼の眼は、真っ直ぐ敵へと向けられていた。
そう、彼女の言うとおりだ。
ここまで来て、こんなところで諦めるわけにはいかない。
だから――
「諦めるか……こんなところで。諦めて……たまるかっ!」
隆二は口元の血を手で拭いながら、少女と肩を並べた。
ほんの一瞬、少女がこちらを見て僅かに笑う。
呆れられたのか、無理をしているのがばれたのか。
彼女の方がよっぽど辛いだろう。だというのに、それは、隆二を気遣うような優しく柔らかな笑みだった。
そんな彼女は、隆二を守るように一歩前へ。
そして――
「ええ、そうです。あなたがいれば、きっと私達はどこまでも進めます。だから……私にお任せください」
炎の壁の向こうに佇むのは、町のひとつ程度はいとも容易く破壊できる兵器達。
彼女は再び、そこへと足を向けた。
また始まる。
目を背けたくなるほど凄惨な戦闘が。
だが、これこそが隆二の選んだ道。そして、彼女と歩んだ、軌跡の一幕。




