勉強会
「何?夏季課外の宿題が手付かず?」
週が明けて月曜日。
一限が終わってほどなくして、悠人は綾乃に相談を持ちかけた。
「そうなんだよ。これから毎日でも遊びたい気持ちは山々なんだけど、それだと宿題をする時間がなくってさ」
「ん〜…2日もあれば終わると思うんだけどな。悠人はやっぱ、厳しいか?」
「昨日やってみたら、1ページ目ではやくもつまづいた」
腕組みをして、綾乃は大きく息をついた。
「ったくよー。じゃあお盆までの二日間は悠人ん家で勉強会な」
「ありがとう!本当に助かるよ」
「っと。もう先生きたみたいだぜ」
二人はおしゃべりを切り上げて準備を始める。
三限目は英語。
今だに2点しか取ったことのない単語テストに備えて、悠人の悪戦苦闘が始まった。
「ふあ…」
英語教師の背中が扉の向こうに消えたのを確認して、悠人は欠伸をもらした。
帰っていく生徒の流れが止むのを待って、彼の隣で綾乃はゆっくりと鞄に教材をしまっている。
と。
そこに空気の読めない男が駆け寄ってきた。
「悠人、帰ろうぜ」
「あ、今日はちょっとね…」
「おいおいおい、先週一緒に服買いに行こうって約束したじゃん!」
「I forgot it!!」
やばい。綾乃に引っ張りだこで、和也との約束を完全に忘れていた。
ゆらり。悠人の背後を、怪しい影が横切る。
「わりーな、悠人はオレとの先約が有るんだわ。邪魔するってんなら…少し拳の話し合いになるぜ?」
和也の顔から一気に血の気が引いて行く。
「あ!おいコラ逃げんなァ‼︎」
「いやぁあああ‼︎なんで俺進学校でこんな荒事に巻き込まれてんのぉおおおおおお‼︎⁉︎」
しばらくして、半殺しにされた和也を引きずった綾乃が帰ってきた。
「まぁその、今回は俺のミスだからさ、和也も一緒に勉強みてやってくれないかな」
「…悠人がどうしてもってゆうなら、みてやらんこともない」
床に伸びた和也を片足で押さえつけながら、そう言う綾乃。
「頼むよ。和也は俺の大事な友達なんだ」
「俺たち両想いだもんなっ!」
「それはちょっと違う」
すかさず反論して、とりあえず悠人も和也を踏みつけておく。
「貸し一だ!ちゃんと覚えとくからな!」
「分かった。大っきくして返すよ」
綾乃には、今度牛丼でも奢ってやるとしよう。




