ヤンデレ
仲の良い者どうしの取り引きや視力の低い生徒の移動が終わり座席が固まると、生徒は少しずつ教室から出て行く。
だが。
悠人はその限りではなかった。
綾乃が指を立て、「来いこい」をしてくる。仕方なくそばによると、がっつり肩を組まれた。
(イヤぁあああああ‼︎あれじゃん、これ完全にヤンキーやないっすかぁアアア‼︎)
とはいえ、中身は女の子。ゼロ距離から、特有のいい香りが鼻腔をくすぐってくる。
「な、何でしょうか」
「お前ん家まで案内しろ」
「いえ、僕この後部活がですね」
「入ってねーのは知ってるよ」
「…友達と一緒に帰るんで」
「アイツならさっき一人で帰ってたぜ」
「あんにゃろォ‼︎友達売りやがってぇえええええ‼︎」
詰んだ。
これはもう財布ルートまっしぐらパターンだ。まずは悠人の物をかっさらっていき、そのうち家の財産にまで手をつけるのだろう…。
「そ、そういえば」
「あんだよ」
「昼休み、お連れの方々がいらしたじゃないですか。あの方達はよろしかったんで…?」
「あんなのにくれてやる時間なんてねえっつの。おい、さっさと支度しやがれ」
(怖えー!女子怖えー‼︎)
どうやら諦めるしかないようだ。
悠人は肩を落として彼女を我が家へ先導し始めた。
「おう、意外に片付いてんじゃねえか」
悠人の部屋のドアを開け放つなり、綾乃はベッドにダイブする。
(家族が居なくてマジでよかった…さらに言えばやましいもの出してなくてよかった)
「なんかこの布団臭くね?おなってんのか?」
「そ、そんなはずがないっ」
昨日の痕跡はちゃんと消したはずだ!
「はは、冗談だって!そんなマジになんなよ」
本棚から適当なマンガを抜き取ると、綾乃は仰向けに寝っ転がってそれに目を通しはじめた。
これからどうすべきか判断しかね、悠人は床に正座する。とりあえず、今日は少しお金を渡して帰ってもらおう。
「今日のところはこれで帰ってもらえませんか…?」
悠人が差し出した千円札をみて、綾乃が眉を顰める。
「んなもんいらねえよ」
彼女は上半身をおこすと、なんとも言えない表情で頭をかいた。
「行橋悠人。オレの望みはそういうもんじゃねえんだ」
「?」
わけが分からず、正座のままポカンとする悠人。
「これから暫くちっとばっかし放課後の暇つぶしに付き合ってくんねえか」
「…」
綾乃のセリフを悠人なりの翻訳にかけてみるに、
「それは、一緒に遊ぼうってことなのか?」
「う、うるせえ‼︎」
顔を紅潮させた綾乃の拳が飛んできた。
「い、痛い!どういう沸点だよ!」
「と、とにかくっ。これからお前の放課後の時間はオレのモンだ。いいな!」




