接触
翌日。
二人の関係修復の足がかりとなる情報を得るため、悠人はある男子生徒に協力を仰いだーー曰く。
「目の付け所は悪くない…が、実に惜しい。何故なら、彼女は我らサッカー部に咲く一輪の花だからだッ!」
この男ならと見込んで和也に声をかけてみたが(聞くだに腹の立つ顔の広さだ)、結果的に悠人の見る目は間違っていなかったらしい。
いざとなればストーカーまがいの事をするくらいの覚悟をしていたが、意外にあっさりと詩織の素性を知ることが出来た。
「古賀さんは滅多なことでは笑わないクールビューティー……しかし!俺たちサッカー部員は、そんな彼女の笑顔を一目みようと勝利に向けて邁進するのであるッ!古賀さんの笑顔は我らの希望。たとえ悠人であろうと彼女を渡す訳にはいかんよ!」
「ねぇ恥ずかしいからもうちょっとボリューム落として?」
大げさな身振り手振りまでつけて力説を始めた和也に視線が集中しており、先ほどからいたたまれない気持ちでいっぱいである。これからは、友達の選び方に気をつけるべきかもしれない。
「ところでだけど、綾乃とその古賀さんが中学で仲が良かったってのは知ってるか?」
「え、あの二人が?おな中ってのは聞いたことあったけど、それは初耳だな。てかそんなことより、お前いつから白石さんを下の名前で呼ぶような関係になったんだよ⁉︎」
「別にお前が期待してるような事はないから。ちょっとお悩み相談を受けただけだ」
「そして困難を乗り越えて二人はそのままゴールインってか!なにそれ羨ますぎりゅううう‼︎」
頭を抱えた和也が奇声を発し始めたのを無視して、悠人は意識を現実から遠ざける。
思いもよらぬ伝手が手に入った。
しかし、これからどうしたものだろうか。和也を通して再度話し合いを取り付けたとして、また同じ顛末をたどるのが関の山だ。
まだ、情報が足りなさすぎる。
…と、そこへ。
噂をすれば、影が差す。
「和也く……、ん?」
教室の前扉に手をかけて硬直する詩織、机をつけて喋っていた悠人と和也の視線が交錯する。
「え、何この感じーーもしかしてお二人顔見知り…?」
ただ狼狽えるしかない和也の前で、詩織は怒りに唇をわななかせ、悠人は顔に「しまった」と書いてあらんばかりの引きつった笑みを浮かべている。
そしてついに怒りが沸点を突破した詩織が口火を切った。
「なんであんたみたいなのが和也くんと一緒にいんのよ⁉︎身の程を弁えなさいこの顔面中の下‼︎」
「前者は分からんでもないが後者には激しく抗議させてもらおうか!」
予想に反して。
詩織との接触は、はるかに早いタイミングで果たされる事となったのであった。




