古賀詩織
盆明けの登校日、その放課後。
校舎は休み明け独特の浮き足立った空気に包まれていた。皆それぞれのやり方で羽を伸ばしてきたのだろう、その会話の多くからレジャー関連のワードが聞こえてくる。
長いようで短い盆休みを、悠人は何をするでもなくぼんやりと過ごした。
その間、綾乃に会うことは一度もなかった。
もちろん、あのようなことを言われたあとで顔を合わせづらいというのもあったし、彼女は彼女で忙しく過ごしていたらしい。
そんな綾乃は、今現在悠人の後方十メートルを落ち着かない様子でついて来ている。
彼女との約束を果たすため、悠人はまさに教室の前扉あたりで足を止めているところだった。
(綾乃は『オレみたいな感じの女子』とか言ってたが…それじゃ意味不明過ぎるだろ)
知り合いを探しているような素振りで、教室全体を見回してみる。
(あ)
教室後方、窓際の位置。
(…いた。おいおい、本当にそっくりじゃねえか)
綾乃がダークブラウンであるのに対して、こちらは隠しようもないほど鮮やかなライトブラウンの髪。
制服を大胆に着崩して、派手な一団とおしゃべりに夢中のようだ。
(別に顔立ちが似てるとかってわけじゃないが…放ってるオーラの色が同じだぜ)
この女子なら、似たものどうし馬があっていたとしても不思議ではない。
きっと、そんな二人の仲に溝をつくる何かがあったのだろう。
(さて。あいつで間違いはなさそうだが、一応確認はしておくべきだろうな)
丁度、教室から出てきた男子生徒をつかまえる。
「すまん。詩織って名前の女子を探してるんだが」
「詩織…?あ、古賀さんの事か。彼女ならあそこで友達と話してるみたいだけど」
「さんきゅ。助かった」
気の良さそうな男子生徒に礼を言いつつ、教室に足を踏みいれる。
(ここまで来たはいいものの…ハードル高すぎねえか?相手はやんちゃ系に加えて、グループ女子に囲まれてやがる)
正直、とっとと引き返して帰りたい。
廊下に目をやると、不安に揺れた瞳でこちらを伺う綾乃の姿があった。
(ったく…あんなんみたら知らんぷりなんて出来ねえじゃん)
「邪魔して悪い。ちょっと古賀さんと話がしたいんだけど」




